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当事者からみるLGBTQの話 ② ひとくくりでいいのか?

ゲイであることで差別されたことがありますか?

考えてみると「差別された」と思うことはない。
思春期の記憶と同性婚については別の記事に書くつもりなのでここでは省くが、世間のいろいろな制度・サービスで「男女のカップルや夫婦を想定しており同性カップルは想定外」というものは多い。でも、それって”差別”だろうか? ”不便”に感じることはあっても"差別"と感じたことは一度もない。「いいじゃん、カップルで同じ男湯に入れるんだから」くらいにしか考えていなかった。(楽観的すぎ)
少なくとも俺自身は、ゲイだから差別を受けた、差別されているとは思わない。

LGBTQというくくり

LGBTQのうち「LGB」に属する人たちは、以前と比べて"不便"が減ってきていることを感じていると思う。
しかし、「T(トランスジェンダー)Q(クィア/クエスチョニング)」の人たちが抱えている問題は複雑だ。

俺の場合、性自認も性的指向も「男」であり、一点の曇りもなく単純で明快だ。
けれど、TQの人たちは自認できるまでにすごく労力を要するように感じる。生物学的に男性なのに性自認は女性、もしくはその逆、もしくはどれでもない、わからない。これはつらい。

世間の理解を得づらく生きづらさを感じているのは、実はTQの方々ではないかと思う。ぶつかる壁の高さがゲイの比ではないだろう。
「体は男だけど心は女性。よし、女性として生きていこう!」と自己肯定ができたとしても、体はそのままで女性になるのか、性転換手術を受けるのか..という葛藤が生まれる。手術を受けようと決心しても経済的な問題が立ちはだかることも多いのではないか。

昨日、トランスジェンダー男性(女性→男性)が「手術なしでの性別変更」の申し立てをしていた件について、家裁が「認める」と判断したことが報じられた。
その記事についているコメントは予想していた通り否定的なものが多かった。
しかし、「記事をきちんと読んでいない」「誤解したまま吸収している」「表面しか見ていない」コメントがどれほど多いことか。

中でもMtF(男性→女性)への意見は辛辣だ。
「MtFを受け入れること=性犯罪を容認すること」くらいに考えている人もいる。
FtM(女性→男性)への意見はまだ好意的なものもあり、このままではMtF差別が起きかねない。いや、現にそういった差別的な思想は存在しているだろう。

こんなことを考えていると「LGBTQはそれぞれひとくくりでいいのか?」という疑問がわく。
以前、「ゲイは性癖、トランスジェンダーは障害であり法で保護すべき」と言った人がいた。ゲイの部分に誤解があるにせよ、この人でさえ性的マイノリティーを同じ枠でひとくくりにすることに異を唱えている。
同じ枠の中にいながら、厳密には「G」と「TQ」は当事者同士ではない。

議論

いろいろな問題の解決への糸口を探すには議論が必要だ。
当然、当事者からの意見は大事だが、活動団体にせよ個人にせよどこか感情的になってしまう部分があると思う。
強要めいたことを言われれば、聞く側もヒステリックになってしまう。

前の記事で自分のことを「ほっといてほしいゲイ」と書いたが、その心理をうまく表現してくれている記事があった。

クローゼットでいることを望む人にとっては、セクマイ差別問題が炎上すること自体が迷惑だと感じるのかもしれません。
しかし、僕は一連の差別発言を黙って見過ごすという考えには違和感を覚えてしまいました。

ちょうどそのタイミングでお会いしたFtMのウェブ媒体編集者の方々と、この話題になり、彼らの言葉から自分が抱いた違和感の理由がみえてきたのです。
彼らは差別発言が連発した問題に関しては憤るよりも
「多くの当事者以外の人たちが差別発言に対して怒っているのを見て、逆にいい方向に進んでいると感じて安心した」
と語ってくれたのです。

頻発する性的マイノリティ差別発言を見逃してはならない理由 | Letibee Life

そう、他力本願にもみえるが、当事者以外の議論ってとても大事。
トランスジェンダーの問題で一番先に言われるのが「公のトイレ」「公衆浴場」。
この点だけについても「当事者」「当事者以外の賛成派」「当事者以外の反対派」の討論の場があれば、「当事者」対「政治家」よりも建設的に話ができるんじゃなかろうか。
そして、いつまでも「LGBTQ」という大きな枠ではなく、トランスジェンダーは別枠で語られるべきだと思う。できればFtMとMtFも別枠で。

我々ゲイも「当事者」として、また「当事者外」としてもこの問題に向き合わないといけないな。

って、頭ではわかってるんだけどね。
自分には何ができるんだろう。

前回の記事はこちら。


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