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「もしあの頃に戻れるとしたらいつ?」
私が真っ先に思い浮かべるのは高2(17歳)の夏だ。将来の進路に悩むこともなく、日々の部活に明け暮れ、仲間たちと中国大会やインターハイを目指していた時期、南沙織さんの『17歳』の世界観で言えば、「私は今、生きている」感覚が強烈に強かった。

今の17歳たちは、長引くコロナ禍の影響で思い通りにならないことが多い上に、大学進学を考えても多様化が進み(学部の種類数は私たち世代に比べて5倍以上)、自分が何者であるのかを見定める機会も経験値も少ない。そして数ヶ月も経てば18歳。成年年齢の引き下げで、彼らはあっという間に大人になる。

今から40年前、同年齢の尾崎豊さんによって『十七歳の地図』という曲が生まれた。その翌年、高2の遠足のバスの中で私はこの曲を歌った。
「半分大人のセブンティーンズマップ」

クラシックギター界では24年前に木村大さんが17歳でCDデビューした。脚光を浴びる一方で、彼の荒々しい演奏に苦言を呈す人もいた。後日、彼にインタビューをしたときの返答が鮮烈だった。
「そのときにしか出せない音がありますからね」

カーナビもグーグルマップもなかった時代、私たちはいつも地図を頼りに目的地を目指した。あるいは地図を眺めながら現地を想像し、目的地を選んでいた。
でも今や地図は手の平に乗る画面に収められ、世界中の景色を眺めることができる。進路同様、選択肢は無数に広がり、どこを目指すかをいつも問われる仕組みになった。
外的情報が圧倒的に充実した一方で、逆に現在地や自分自身の内面に目を向ける機会が乏しくなっている気がする。

17歳にしか見えない地図、17歳にしか奏でられない音、そんな世界にも目を向けて、今を生きている感覚を大切にしてほしいなと思う。「どんな生き方になるにしても、自分を捨てやしないよ」と言えるぐらいに。

(2023年3月発行予定の某PTA新聞への寄稿文です。
 かつての、いまの、これからの、すべての17歳に向けてのエールです)

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