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乳がんの記録 ~6~

◆ 退院

かくして、乳がんもとい右胸全摘出手術を受けた私は、約1週間の入院を経て無事に白布に帰ってまいりました。

退院の目安は、摘出手術の傷の近くに通したドレーン(管)から出てくるリンパ液の量が一定量(1日あたり30ml)を下回ることでした。人によっては漏出が落ち着くまで10日以上かかる場合もあるそうですが、私は幸い術後の経過がよく、病院生活が長引くことはありませんでした。

退院後、ひとつだけ思いがけない誤算に見舞われました。それは、一時的ながら抵抗力&体力がガタ落ちしたこと…!

入院手術といってもほんの少し身体の一部を切り取るだけだし、内臓じゃないし、退院後2〜3日も休んでおけばすぐに職場復帰できるだろう。旅館もちょうど行楽シーズンで忙しいし、穴を開けないようさっさとシフトに自分の名前を入れておこう〜
…なんてめちゃくちゃ呑気に考えていた入院前の自分を思い切りどつき回したい(笑)

本当に何をするにも体がついていかず、しばらく現場に出ることができませんでした。というか、退院した次の日には風邪を引いていたという…

スタッフのみんなも顔を合わせるたびに
「動くな!」「休め!」「引っ込め!」
暑さと忙しさで本当に疲れていただろうに、みんな心配してくれました。
情けないやら申し訳ないやら…。

やはり身体にメスが入るというのはただ事ではありませんね。
かつて私は4歳の頃に虫垂炎の手術を受けており、手術は人生初体験ではありませんでしたが、身体がいかに絶妙なバランスの上に成り立っているものなのか、改めて痛感しました。
大きなケガや骨折もきっと同じようなダメージなのでしょう。
損ねてから気づく、健康と五体満足の有難さよ…。

なお、手術から1ヶ月半以上経った現在は、散々苛まれた身体の軋みや傷跡付近の疼くような違和感もほとんどなく、おそらくまだ全快とはいえないものの、かなり入院前のペースに近い日常生活を送れる程に回復してきております。強いて言えば時々脇の下や胸にツン、と痛む感じです。
幻肢痛?


湯守をしながら時々散歩をする、白布温泉三十三観音の遊歩道(冬)。

◆ 切除後もウェルビーイング

乳房切除手術を受けた患者には、病院から退院後の生活に欠かせない専用補正下着の説明やアドバイス、専門のメーカー等の案内を頂けます。
もちろん、タオルやガーゼのハンカチなど手持ちのアイテムでふんわりカバーしたり、中にはパッドを自作してしまう器用な方もいらっしゃいます。
選択肢は色々。
では私はどうしたかといいますと…
いくら体型が使用中ポケットティッ…(略)とはいえ、曲がりなりにも仕事を持ち人前に立つ身。何の対策もなしでは非常に不自然な見た目になってしまいます。傷口が落ち着くまでは肌触りの良いガーゼや絹地(お古のスカーフが大活躍)で凌ぎましたが、長い目でこれからのことを考え、結局専門の補正下着を購入することにしました。

専門のメーカーさんの品質は流石です。
様々な切除部位、その人の体型や用途、その他細かな要望に合わせたいろんなタイプのパッドや肌着があって、感心してしまいました。物によってはなかなか値段の貼るものもありますが、いずれも長く使えそうなものばかり。新しい自分の身体の一部と思えば、決して損にはならないはずです。
ありがたいことに、各自治体には「医療用ウィッグまたは乳房補正具の購入費用助成」制度があり、申請をすると金額の一部のキャッシュバックを得られます。

自治体によって購入物の対象範囲も異なるようですが、山形県では補正具(パッド)だけではなく肌着も助成対象になるということで、ありがたく制度を利用させてもらいました。申請時に応対して下さった職員さんによると、この制度を案外知らない人が多いのだそうです。私も補正具購入時にメーカーさんから教えてもらい、はじめてこの制度を知りました。もしもこれをお読みになって「まだ申請していなかった!」という方、ぜひお住いの市町村の窓口にお問合せを!

参考サイト(山形県ホームページより)
「医療用ウイッグ及び乳房補整具の購入費用を助成します」

他にも、たとえばminneなどのクラフトサイトで手作りの可愛いパッドを自作販売されている方や、値段もピンキリで国内様々なメーカーの商品が数多くネットに載っています。
自分の身体に合うものを選びたい方は、私も利用させて頂いたような実物を見ながら事前相談ができる病院紹介の国内メーカーがお薦めですが、予算やライフスタイルに合わせて自由に選んでよいと思います。きっとそれだけ罹患する人も多いという事なのでしょう。

万が一乳房手術を受けても、世の中にはたくさん仲間がいます。
決して困ることはありませんから、心配しなくても大丈夫です。

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