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幻獣戦争 2章 2-4 英雄の役割①

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幻獣戦争 英雄の役割①

 西ノ島からの陽動作戦が成功し作戦は第二段階へ移行。隠岐の島正面に展開中の艦隊は、津波の影響を受けながらも隠岐の島旧美保神社沿岸部へ面制圧を実施。敵幻獣指揮官タイプの識別が完了したおかげで的確な砲撃が敢行され、旧美保神社沿岸部に集中していた幻獣を殲滅。上陸部隊は無傷で旧美保神社沿岸部に橋頭保を築く。さらに幸運というべきか西ノ島に集中していた幻獣の一部は、旧美保神社から矛先を変え大部分は島の裏側へと移動。戦力の大半が隠岐の島裏側へと集中し始めていた。

 俺は西ノ島防御陣地仮設指揮所のテント内で、更新される戦域情報を映しているモニターを凝視していた。仮設指揮所はテント内の配置されているテーブルの上に通信機材とモニターが配置されており、常駐している通信士官が数名連絡要員として待機している簡素な造りとなっている。

 西ノ島からの攻撃が多少緩んだとはいえ、タケミナカタを含む特科中隊は以前主力部隊への支援砲撃を継続。こちらに侵攻してきてもおかしくはない。にも拘らず幻獣はこちらへの侵攻を完全に停止している――どういうことだ? 嫌な予感がする。

 このまま何もなければ良いが……島の裏側に集結している幻獣は何をする気だ? 幻獣に撤退という概念はないはず……単なる後退にしてもおかしい。

「……嫌な予感がするわ」
 隣の救護テントで寝ていた黄泉がこちらにやってきて俺にそう伝えてきた。
「もう大丈夫なのか?」
「大丈夫よ」
 俺は覚束無い足取りの黄泉が心配になり声をかけるが、黄泉は気丈に笑って見せる。しかし、表情には明らかな疲労が見えている……無理をしているな。

「隠岐の島艦隊司令部より通信です」
 俺が黄泉を気遣おうとしたら常駐している通信士官が報告してきた。
 通信は直ぐに繋がれ、モニターに主力部隊司令の東師団長が映し出される。
「おお、丁度良かった。比良坂、貴官らの上陸について話がしたかったところだ」
 東師団長はそう言って満面の笑みを浮かべる。戦局が有利に動いているから嬉しいのだろう。

「補給と整備が完了次第上陸する予定ですが、どうされました?」
「敵の攻勢が思っていたより弱くてな。貴官らが無理して上陸する必要がなさそうだが、どうする?」
 俺の回答に東師団長は俺達だけで充分だと、言いたげに訊き返す。いや、まだ楽観視できない……島の裏側に集中している幻獣が気になる。

「嫌な予感がします。答えを出すにはまだ性急でしょう」
「杞憂じゃないのか? 敵はわざわざ後退して倒されやすい戦況を作ってくれているんだぞ?」
 俺の言葉に東師団長は笑みを浮かべたまま問う。確かにそういう見方もできなくはないが、これは今までにない行動パターンだ。

「だと良いのですが――幻獣の動向に注意しておいてください」
「わかった。貴官の予感が外れることを期待しよう」
 念を押す俺に東師団長はそう答え通信を終えた。
「黄泉、まだ寝ておいた方が良いだろう」
 通信を終えた俺は黄泉に振り向き言って近づく。
「……でも、作戦が――って、ちょっと!」
 口ごたえする黄泉を俺は抱きかかえ仮設指揮所を後にした。 

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く


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