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幻獣戦争 2章 隠岐の島攻略作戦①

2023.04.06『幻獣戦争』より発売

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序章 2章 隠岐の島攻略作戦①

 西原村での幻獣迎撃作戦から帰投後、待ち構えていた勇司に捕まり、俺は新しい自分の執務室に拉致され事後処理に追われていた。流石に勇司も音を上げたらしく、西原村での迎撃作戦を含む幻獣災害の事後処理を全部俺に丸投げ。それから数日は執務室と現地視察の往復の連続。まず、県からの要請をねじ伏せ大規模な浄化作業を開始。

 合志近郊での戦いと加えて西原村と大矢野演習場、これらの地域を浄化してしまうのが復旧作業を早める近道になる。俺は待機中の封魔部隊を総動員して短期間で済ませられるよう手配。そこからは毎日部隊に随伴して一緒の祈る日々だった。浄化作業が完全に終了したら、次に施設課へ連絡して通常より多くの人員を復旧作業の応援に回した。

 浄化作業と復旧作業に目途が立ってから数日後、県知事に呼ばれグチグチ嫌味を言われたが、相手にするのが馬鹿らしかったので俺は会話を録音して田代さんに放り投げた。田代さんは嬉々として県知事をイビリにいった……近いうち選挙が行われることになるかもしれないな。

 事後処理が終わった後、新たな書類が俺を待っていた。神代博士から提出された正式な装備の概略が書かれた発注書だ。過日試験した10式ミカヅチの調達と装備に対する予算が記載されており、装甲と弾薬に使われている新型封魔鉄は精霊鋼という新たな名称が与えられていた。書類は俺のサインだけで良いらしく、サインをしてそのまま田代さんに上申。他にも復旧作業にかかる経費の承認。浄化作業の報告書の確認。急に忙しくなり正直復隊するのを止めようか真剣に悩んだ。そんな地獄のような書類仕事がようやく終わりを迎え、俺はミーティングのため中央作戦司令室に呼び出されていた。

 一人食堂で朝食を終え、俺は執務室によらず中央作戦司令室にそのまま直行。午前中に集合と聞いていたが時間は指定されていない。妙にアバウトだが気にしても仕方ないか。

 中央作戦司令室に入室すると、懐かしい顔ぶれに加えて既に田代作戦本部長と勇司、俺以外のメンバー全員が揃っていた。まさか嵌められたのか?
「あれ? 集合時間間違えましたか?」
 俺は司令室ミーティング席の一番前に座る本部長に声をかけ、空いているその隣の席に座る。

「君を迎えるために早く集まっただけだよ。気にしないでくれたまえ」
 本部長は軽く答え俺の向かい側の席に座る勇司を見る。
「揃ったな。では、始めよう」
 勇司は座ったまま宣言する。
「その前に、懐かしい方々の紹介が必要では?」
「今更必要あるか?」
 俺の隣に座る一樹が言うと勇司は問いながら俺を見た。

「――いらないか」
「相変わらずですね。陸将」
 俺は茶化すように肩をすくめると、勇司の隣に座っている桜井朱雀二佐が苦笑する。
「本当、少しくらい労っても良いんじゃないんですか」
「そうですよぉ。かなり無茶して駆けつけたんですから」
 朱雀の隣に座る星野真那二佐が不満を漏らすと、真那の隣に座る井上霞二佐がさらに不満げに顔を膨らませた。

「やっぱり、この前の90式は君達が乗っていたんだな」
 そんな3人の反応を見て俺は薄く笑みを浮かべ述べる。昔と何一つ変わらない姿に懐かしさがこみ上げてくる。
「はい。遅れて申し訳ありませんでした」
「謝るところじゃないさ。ありがとう。君達のおかげで早期の幻獣を片付けることが出来た」
 代表して答える朱雀に俺は改めて礼を述べる。そう、一人ではどうしようもなかった。

「改めて伝えよう。桜井、星野、井上の3名はこれから我々第一戦闘師団に加わる。部隊配置はどうする?」
 勇司は笑みを浮かべ俺に質問する。 

ここまでお読み頂きありがとうございます! 

次回に続く


2023.04.06『幻獣戦争』より発売

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