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成功の裏にある嫉妬。様々な感情が入り乱れる内容と、ミスリードの数々そしてまさかのラスト。真梨幸子さんのあの女を読み終えて。

貴志祐介さんの作品に引き続き今作もホラー。
というか沢山ホラー小説を購入していて、少しずつ崩していっているわけですがw今年に入ってからほぼホラー続きで少し気持ち的に上向かなそうですw
胃腸炎で辛い時の暇つぶしで読んだ悪の教典は流石に強烈でしたが…。少しは気持ちが楽になれるものも用意しておくべきでしたね。

さて今回は題名からしていかにもといった雰囲気が漂い
これは大分怖そうだと読む前からワクワクしておりました!実際に読み終えて見ると幽霊的な恐怖ではなく、人間の深い闇を描いており、生きている人間なんていかに恐ろしい生き物なのか垣間見る事ができましたね。
ただのホラー作品ではない。かなり作り込まれたミステリー作品でもあり、読み進めていく内に大体の予想がついて来る、物語終盤に差し掛かるとその予想が大幅に外れ
まさか!?という展開に夢中になりましたね!
ただ幽霊が出てきて。わ〜っと怖いホラーなんて今ままで味わって来たホラー作品のせいで子供だましに見えてしまいますが、こちらの「あの女」はとても楽しめました!
ただ少し、僕の読解力のなさのせいか、話の内容が分かりづらい部分があったり桜子の妄想なのか現実なのかわからなくなることもしばしば。これは単に僕自身の経験のなさなのかもしれませんね。


あらすじです。


不動産屋の語りから始まり、売れっ子小説家の珠美のシーンに切り替わる。担当編集西岡との関係性、OL作家の桜子は泣かず飛ばすの作家であるが、珠美に燃やす嫉妬心が彼女の原動力となる。そして売春宿で働く阿部定と呼ばれる佳代をテーマに小説を書こうとする珠美だが不幸な事故により制作が中断される。そしてその続きを桜子の書かせようと目論見る西岡。気が進まないものの何とか形になり、自身を殺人者だと偽り自身の名を売ろうとする。植物人間となった人物、不動産屋の語り手、その人物との関係性。様々な感情が入り乱れ、徐々に擦れ始めていく真実。
そしてどんでん返しの様な衝撃のラスト。一瞬たりとも目が離せないストーリー展開に手に汗握る。


人間の闇をこれでもかと詰め込んで恐怖を煽る作品は
貴志祐介さんの作品で大分鍛えられたつもりでいましたが、やはり怖いものは怖いです。嫉妬や妬みの憎悪は勿論ですが、側近にいる人物こそが真の恐怖。まさかの人物が実は…なんて状況はとてもじゃないですが耐えられそうにないですねwまぁ人間など一つや二つ闇の部分を持っているものですが。


作品中で語られた担当編集者の西岡の言葉。
人は常に闇の部分を持ち、その闇の部分は生きていく為の糧となり闇を取り除いてしまえば、いよいよ人はなんのために生きていくのかという目標を失う。
性善説が謳われる現代で性悪性と言うものが隠されて、その側面をちらつかせながらどうにかして性善説を作り上げようとするという内容。

確かにそういった傾向はありますね。
物事というのは常に何かが犠牲となり世の中は成り立っている。ただそれは隠されて、あらゆる物が美化されて、無かったものとされている。ただ真実を知ろうとすればするほど月の美しくない部分が目立ってくる。
新人作家であった珠美は性善説を嫌い、ありとあらゆる闇をエッセイにし、世の中に暴露し続ける。そしてその行為が批判される事に快感を覚える。そうする事で自分自身の存在価値を存分に感じられる。なんというか現代のネット社会や暴露系Youtuberの様ですね。
そして読み手はそれらを欲する。よく言うじゃないですか?「人の不幸は蜜の味」と。


敢えてそういった闇を描く
なんの小細工もなしに、どストレートにドロドロとした憎悪が書き殴られている。それが「あの女」という作品なのだなと感じました。

とても他人事では読むことができない。
誰にでもある感情だからこそ、胸を痛くしながら読むリアルホラー小説だと僕は思いました。

まぁかなり後味が悪いですがwリアルな人間の闇を謳った小説が読みたいのなら間違いなくオススメの作品だと僕は思いました!とても楽しめた作品でした。
他にもこの作家さんの作品を読んでみたいなと思いましたね!


それではまた…


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