見出し画像

(連載小説)息子が”ムスメ”に、そしてパパが”ママ”になった日②

「小倉様のご主人様がスタジオに入られまーす!。」
「はーい!、どうぞー!。」
「お邪魔しますー、えっ・・・・・。」

写真館のスタッフに連れられ、控室から撮影スタジオに入った翔太の目の前には支度を済ませて先に撮影中の息子の陽翔(はると)とそれを見守る着物姿の妻のみどりの姿があった。

陽翔は青と黒を基調にした羽織袴を着せてもらっていて親のひいき目なのだろうがどこか若武者を連想するような凛々しい着物姿に見えた。

ただ翔太にとって陽翔の凛々しい着物姿もさることながら、それ以上に目を引いたのは訪問着に着替えたみどりの着物姿だった。

「みどりって着物似合っててとってもきれいだな・・・・・。」

今日のみどりは名前にかこつけたと思われる薄緑色・萌黄色の訪問着を着ているのだがとても上品で、そして着物を着ているせいかいつもとはまた別人のような「着物の似合うきれいな若奥様」と云った感じに見える。

そんな美しい着物姿のみどりに少し見とれているとお店のスタッフが見透かしたように「あらあー、ご主人ったら奥様のお美しい着物姿にもしかして見とれてませんかぁー?。」と半分冷やかすように言ってくる。

「え?・・・・・、いや、まあ、その・・・・・。」

そう見とれていたのを突っ込まれた翔太はそれが図星でもあった為か少ししどろもどろしてしまい、みどりはその姿を見ながら微笑んでいる。

「無理もありませんよねー。だって奥様って本当にお着物がお似合いでお綺麗ですものー。こんな素晴らしい着物美人を奥様にされた小倉様ってほんとうに幸せ者ですねー、うふふっ。」
「はあ、まあ・・・・・あ、ありがとうございます・・・・・。」

とスタッフはいわゆる「ヨイショ」も入れつつみどりの着物姿を褒め、そしてその着物姿に見とれている翔太に更にツッコミを入れてきたのだが、実は今日に限らず翔太は前からみどりは着物がよく似合うと感じていた。

二人は付き合い始めてから何度かお互いの幼少期から今までに撮った写真を見せ合う機会があったのだが、翔太はその中でもみどりの和服姿の写真に惹かれる事が多かった。

特に成人式には名前の「みどり」に由来したのだろうけど深緑色の振袖を着て出席したようで、その艶やかで色鮮やかな振袖姿は殊の外印象的だった。

そして結納の時に成人式の時にも着た深緑色の振袖をみどりは再び着てきたのだが、リアルで見たみどりの振袖姿は写真より何倍も美しいように思え、大げさではなく翔太の心は奪われたようになってしまった。

それ以外にも花火大会に行くとなると決まって浴衣を着てみどりはやってきて、振袖の時と同様に和装したみどりは翔太の目と心を惹き付けていた。

それもあって今日のこの七五三の撮影の際にみどりが着物を着ると聞いてからは翔太はみどりの事だからよく似合うだろうし、またあのきれいな着物姿が見れるのかと密かに期待していたのだがそれを裏切らない光景が実際に目の前に広がっていて、自然と翔太の頬は緩みっぱなしだった。

それに以前から翔太はみどりはもちろんそれ以外の女性の着物姿に惹かれるものがあった。

そのきっかけは自分の成人式の時に会場で再会した振袖姿の同級生の女子たちに接した事だった。

子供のころから可愛かった子はもちろん、その子以外のおてんばだったり逆におとなしくて地味だった女の子たちもこうして髪をアップに結ってきれいにメイクして艶やかな振袖に身を包み、誰もが皆全員きれいでおしとやかな年頃の女の子に「変身」していたを目の当たりにした。

それに比べてダークスーツにネクタイとまるで就職活動中か新卒で入社したての若手社員のようないでたちの自分たち男子ときたら自分も含めて地味なだった子は成人式を迎えても相変わらず地味で、少々ネクタイの色を明るめのものにしたところで所詮今日の振袖姿の女子には敵わないと思った。

就職して駅員をするようになってからは正月に初詣客で賑わう神社仏閣の最寄り駅に応援に行った時や普段の勤務駅でも成人式当日とか卒業式のシーズンには振袖や袴姿の女性を見かける事は結構あり、その都度心のどこかであの自分の成人式の時に見かけた同級生の振袖姿に心ときめいた事が呼び覚まされ、翔太は着物を着た女性を見るのは嫌いではなかった。

と物思いにふけっている間にも陽翔の撮影は子供慣れしているスタッフのおかげもあり、着慣れない羽織袴姿やこの写真館に来るのが初めてと云う事もあってさすがに動きにくかったり気分的にも緊張気味だった陽翔にしてはさしてぐずる事もなく、時折笑顔を見せつつ撮影に応じてくれている。

そして陽翔の1ショットの撮影が一通り済むと今度は翔太とみどりを交えて家族写真の撮影タイムとなった。

今日のみどりは訪問着姿と云う事や母親になったせいか同じ和服姿でも成人式の時とはまた違った大人の色香みたいなものを感じさせてくれており、翔太の視線はついチラチラとみどりに向いてしまう。

「やっぱり着物の種類は違ってもみどりは和服がよく似合うな・・・・・。それに今日のみどりはいつもよりきれいだし・・・・・。」

そう心の中で翔太はつぶやき、そしてみどりも着物姿と云う事に加え、陽翔の羽織袴姿が思いのほか似合っていた事や我が子の成長を感じてうれしくなっているのかテンションは高めだった。

ひと通りスタジオでの撮影が終わると何やら今日申し込んでいるプランに含まれているとの事で写真館の近くにある神社にお参りを兼ねてロケ撮影に行く事となった。

慣れない羽織袴に草履と云う事もあってヨタヨタ歩きの陽翔も含め親子3人に付き添いを兼ねて撮影スタッフが同行してくれ、徒歩ですぐ近くの神社に向かってお参りを済ませて写真館に戻ってくると早速先程スタジオで撮った写真の中からレタッチ等軽く修正してくれたよさげなものを見せてくれる準備ができており、しばしあれこれと画面越しに見せてもらう。

見せてもらっていると最新の機器やスタジオの設備の良さに撮影や修正の技術そのものがハイクオリティなのもあるのだろうがどれも上々の出来で、感心しつつ翔太が画面を覗き込んでいると再び店主の園山綾乃がやってきた。

「いかがですか、小倉様。お写真の出来にご満足いただけておりますでしょうか?。」
「ええ、本当に息子や妻の衣装やメイクもですし、写真の技術もすばらしくて大満足で感激してます。いやーおかげで今日はいい日になりました。」

翔太がそう言うと綾乃は少しニヤリとして「ありがとうございます。ところで本日小倉様はお着替え有りの”Bプラン”でお申し込みでしたね。この後のお衣装のお召し替えはどうなさいますか?。」と聞いてくる。

そう言われてみどりが折角なので撮影の時に着る衣装が1着ではなく、もう1着借りられるプランを申し込んだと言っていたのを翔太は思い出した。

みどりが折角なので衣装がチェンジできるプランにしたいと強く言っていたのと料金も衣装を追加するにしては僅かなプラスで済む事でもあり、翔太もみどりが言うように折角だからとこのBプランに申し込んだのだった。

七五三で男の子が着るのは今日の陽翔のような羽織袴が多いようだが、衣裳部屋にはタキシードのような洋風の衣装も何着か置いてあったから2着目はそれにしてみると感じも変わるだろうしいいだろうなと翔太が思っているとみどりが意外な事を言い始めた。

「あの、下見の時にここの写真館では男の子であっても女物のドレスや着物を着て写真を撮っていただけるって聞いたんですけど・・・・・。」

は?、一体何をみどりは言いはじめるんだ?。男の子が女物のドレスや着物を着て撮影だって?・・・・・そんな事出来る訳ないだろう・・・・・。

とわざわざ子供に女装をさせて写真を撮るなんて無理だろうと思って聞いていた翔太の横で綾乃は何事もなくこう答えた。

「ええ、全然問題ございません。うちの写真館では男のお子さんでも女物のお衣装をお召しになられて記念撮影をされる方は珍しくありませんので。」

え?!女装姿で七五三の写真を撮ったりするって??。それに「女装して記念撮影は珍しくない」って言ってるけど本当だろうか?・・・・・。

さすがにいきなりと云う事もあって翔太は驚いていたが、綾乃は引き続き何事も無かったかのように慣れた手つきで部屋に置いてあった見本用のアルバムの中からそのうちの1冊を手に取り、「よろしかったらご覧になりますか?。」と言いながら渡してきた。

表紙に「MTF」と書いたラベルが貼ってあるそのアルバムをめくるとどのページも女物の着物やドレスで美しく着飾った女の子の写真ばかりで、どれもこれもよく着物やドレスが似合っているし、また可愛らしく写っている。

更に見ていると七五三だけでなく「1/2成人式」や「十三参り」と云ったところなのか小学生ぐらいの女の子が着飾った着物姿で写っている写真がいくつかあり、その次に今度は成人式や卒業式で振袖や袴を着た年頃の女の子の写真が多数貼ってあってどれもきれいで可愛らしい。

着物姿の女性を見るのは嫌いでない翔太がしばし渡されたそのアルバムを見ていると綾乃が「この”女の子”のお客様のお写真をご覧になられていかがですか?。」と聞いてくるので「ええ、どの子もとっても着物やドレスが似合ってますし、上手に撮れてますね。」と答えると綾乃は笑みを浮かべてこう言った。

「お褒めいただきありがとうございます。ちなみにここに写っているお客様って実のところ全員”男”なんですよ。うふふふっ。」

「え?!、このアルバムに写ってる人がぜ、全員お、男?・・・・・・。」

そう綾乃に聞かされた翔太はひどく驚いていた。このアルバムには七五三の幼児から成人式を迎えた年頃のお嬢さんまで様々な年代の人が写っていて、皆どうみても「女の子」「女性」にしか見えなかったのに実は全員男だなんて・・・・・。

「あら、そんなにびっくりなさらなくても。うちの写真館では男の子が女物を着て撮影するなんて全然普通の事ですよ。ふふふふ。」

「全然普通」とさらっと綾乃は言うが、翔太にとっては全然普通ではなく、ほんとにそんなここに写っている結構な数の男子が女装をして記念撮影をしていると云う事がにわかに信じられなかった。

綾乃が言うのには「コスプレ感覚」で我が子が男子であってもメイクをして女物の衣装を着せたら面白いし似合うのではないかと思う親御さんは案外いるそうで、実行に移すだけでなく女装させた我が子の姿を「この子誰でしょう?。」とSNSに投稿する人までいると云う。

まだ当の本人も3歳や5歳位だと性別の概念がが曖昧な子もいるだろうし、それにぱっと見ただけでは男の子か女の子か見分けがつかない子もこの位の年代なら結構あり、陽翔も最近は大分減ってきたが3歳ぐらいまではよく女の子に間違われていた。

それに綾乃が言うのには親御さんの中には実は男の子でなく女の子が欲しかったのでせめて七五三くらいは写真や雰囲気だけでも娘の居る感じを味わってみたいと云うニーズが思いのほかあるとの事だ。

確かにひと昔前なら子供が男の子だけの場合でどうしても次は女の子が欲しいと思うと再度チャレンジする家庭はざらにあったが、今のご時世はただでさえ物価高なのに昔とは比べ物にならない位子供に掛かるお金は高くなる一方だし、その反面給料もそこまで上がらなかったり待機児童の問題をはじめ何かと子育てしづらい環境の中では次は女の子が欲しいと云う理由だけでは2人目、3人目を産むのは躊躇してしまう事も多いだろう。

とは言え大半の家庭では男でも女でもまずは健康で元気に育ってくれていればあとは願わくば学校の成績がよければいいとかスポーツやダンスとかの
何かに秀でた特技みたいなものがあれば尚いい位じゃないかと翔太は思うのだが、コスプレとは言えわざわざ女装をさせるだなんて信じられないと思っていると今度はみどりが耳を疑うような事を言い始めた。

「そうでしょうー、やっぱり実は女の子が欲しかったから七五三くらいは息子に女装をさせるって云う親御さんっているんだー。あたしもそうだからその気持ちとってもよく分かりますー!。」

へ?、一体みどりは何を言いはじめるのかと翔太は思った。大体今まで「実は女の子が欲しかった」だなんて一度も言った事はないし、またそれならそれで「次は女の子が欲しい」と言ってもおかしくないがそれも無かった。

もっとも翔太の勤める鉄道会社の給料はよくて全業種の平均程度で、それにまだ若手の部類に入る翔太の手取りはそこまで多くないし、みどりも仕事はしているがフリーランスという事もあって家計的に不安定な我が家で二人目を産んで育てると云うのは確かに少々難しい面もある。

でも「女の子が欲しかった」と云うのと「息子に女装させて“娘”の気分を味わいたい」と云うのはまた別だろうと思っていた翔太の横でみどりはがぜんテンションが上がりはじめていた。

「ねえねえパパぁー、折角もう1着衣装を着られるんだったらぁー、思い切って陽翔には今度は女物を着てもらおっ!。ねっ、いいでしょ?。」

「いや、そんなわざわざ女装までする事ないんじゃない?。陽翔は男の子なんだからもう1着着るんなら今度は洋装がいいと思うけどな・・・・・。」

「洋装ってドレスとか着せちゃうの?。あーそれもいいなー、きっとなんだかお姫様みたいになっちゃうんだろうなー。うふふっ!。」

「そうじゃなくて洋装ってタキシードとかの男物の事だけど・・・・・。」

とやりとりをする翔太とみどりだったが、陽翔の女装には懐疑的で乗り気でない翔太に対してみどりは逆に女装させる気まんまんになっている。

そして二人のやりとりを見ていた綾乃も「陽翔君は今の羽織袴姿も凛々しくてカッコいいイケメンですが、でもとっても色白で肌もきれいでまつ毛も長いし、それに割となで肩だからきっと女の子がする恰好もお似合いになると思いますよ。是非女物のお着物かドレスにお召し替えされたらいかがでしょう?。」と陽翔が女装するのを勧めてくる。

するとみどりは意を得たのと綾乃と云う「援軍」が現れた事でますます陽翔を女装させるのに乗り気になり「でしょー。園山さんもしょっちゅう男の子が女装して写真を撮るのをサポートしてらっしゃるからうちの陽翔が女の子の恰好をするのが似合うってお分かりになるみたい。だからやっぱり陽翔はぜひ女の子になってもらいましょ!。」と止まらなくなってきた。

そして綾乃も「旦那様、奥様もそうおっしゃってる事ですし是非陽翔君に女物をお召しいただいてはどうでしょう?。それに私も何人もの男の子が女装するのを見てきましたが、経験上陽翔君でしたら絶対に女の子の恰好が似合うと確信しておりますし、ここは一種の”コスプレ”と云う事でいかがですか?。」とみどりと一緒になって陽翔を女装させるのを勧めてくる。

その横でみどりはもう女装させるのが決まったかのようにあれこれと陽翔に
「ねえねえ陽翔。これからね、陽翔はお着替えするんだよ。今着てる着物もカッコいいけど今度はね、これから違う別のお衣装に着替えてとっても可愛らしくなるの、うふふふっ。」などとノリノリで言っている。

ただ言われた陽翔はよく意味が分かってないようで少しキョトンとしたままだったが、みどりが「あのね、この前おうちの前で陽翔と一緒の幼稚園に行ってる沙紀ちゃんに会ったでしょ。あの時の沙紀ちゃんって七五三で着物着てて可愛らしかったよねー。」と言うと陽翔も「うん、あのときの沙紀ちゃんかわいかったね・・・・・。」と言う。

陽翔がそう言うとみどりは少しニヤリとし「そうそう、着物着た沙紀ちゃんはとっても可愛かったしぃー、陽翔もなんだか興味深々で見てたよねー。それに陽翔って普段から沙紀ちゃんの事が気になってるんじゃないの?。」と冷やかし半分で言うと陽翔は恥ずかしいのかうつむいて黙ってしまった。

そんな恥ずかしそうにしている陽翔にみどりは「そんな恥ずかしがらなくていいわよー。あのねママは思うんだけど陽翔も沙紀ちゃんが着てたみたいなお着物着てみる?。着たらきっと陽翔も沙紀ちゃんみたいに可愛くなると思うの。」と遂に直接女装をする事を持ちかけた。

「え・・・・・沙紀ちゃんのきてたきものって、あのあかいきもの?・・・・・。」
「そうよ、沙紀ちゃんってあの赤いお着物がとってもよく似合ってて可愛かったわよねー。それに陽翔も着物着た沙紀ちゃんをうらやましそうに見てたでしょ?。ママ知ってるの。うふふ。」
「うらやましいっていうか・・・・・、ぼ、ぼく沙紀ちゃんかわいいなっておもったんだ・・・・・。」

陽翔が沙紀ちゃんの事を子供ながらに気にしているのは翔太も何回か見ていてそれとなく感じていたが、やはりそのようで図星なのか沙紀ちゃんの事を言われた陽翔は恥ずかしそうにしている。

ただ恥ずかしい気持ちの中でも陽翔も翔太同様に「着物女子」を見るのはどうやら嫌いでないようで「沙紀ちゃん」だけでなく「着物」と云うキーワードに微妙に反応しているのも見て取れる。

そこを見逃さなかったみどりはすかざす「そうでしょうー。赤い着物着た沙紀ちゃんってとっても可愛かったわよねー。だからぁー、陽翔もぉー、仲良しの沙紀ちゃんが着てたような赤いお着物着るとぉーきっと沙紀ちゃんみたいにかわいくなるんじゃないかなぁーって思うの。うふふ。」と陽翔の気持ちに「沙紀ちゃん」と「着物」を使って女装させようと訴えかけた。

「え?・・・・・ぼ、ぼくがあかいきものきたら・・・・・さ、沙紀ちゃんみたいにか、かわいくなる?・・・・・。」
「そうなの。ママもお店の方も陽翔が赤いお着物着たらきっと沙紀ちゃんみたいにかわいくなれるって思うの。どう?、お着物着てみない?。それにもし着てくれたら回転寿司で陽翔の好きなイクラだってたくさん食べてもいいし、デザートにアイスクリームやメロンも食べていいのよ。うふふっ。」

とみどりは陽翔を「沙紀ちゃん」「着物」に加え、回転寿司で「イクラ」「アイスクリーム」「メロン」と云う「エサ」で釣ろうとし、そして言われた陽翔も「うん・・・・・わかった・・・・・ぼくきものきる・・・・・。イクラとアイスとメロン、わすれないでね。」と恥ずかしそうではあるが「エサ」にも釣られ、遂に女装する事をOKした。

「おいおい、陽翔。おまえ何言ってるのか分かってるの?。」とまさか陽翔が自分から女装する事をOKすると思っていなかった事もあって翔太はかなりびっくりしていた。

しかし逆にみどりが「パパこそ何言ってるの?。せっかく陽翔が女の子の恰好する気になってるのに邪魔しないで。」と不機嫌そうに言い、綾乃も「まあまあそうおっしゃらずに先程も申しましたようにこれって”コスプレ”の一種ですし、陽翔君もその気になってる事ですからお着替えしていただきましょう。ねっ。」とみどりの肩を持ち、陽翔の女装を促す。

そしてみどりは陽翔の手を引いて綾乃と一緒に再び衣裳部屋に行き、翔太はひとりスタジオに残され、このままスタジオに居てもなんなのでまた控室に戻るしかなかった。

控室に戻ると「MTF」と書かれた例の女装した男子が写っている見本用のアルバムが置いてあったので翔太はひとしきりスマホをいじった後、する事がないので再度そのアルバムを開いた。

「それにしてもこの子たちみんなとっても着物が似合っててきれいでかわいいけどこれが全員男だなんて・・・・・。」

そう思いながら誰もみな少しの違和感なく「女の子」として着物姿で写っている写真を見ながら翔太は陽翔の支度ができるのを待っていた。

(つづく)





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?