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(連載小説)秘密の女子化社員養成所③ ~研修所の本当の姿~

「あらあー、ここのお部屋の新人研修生もすっかりかわいいらしい女子社員になっちゃってるじゃない!。すてきねー。」

そう言いながら人事部長の鳥越瑞穂が部屋に入ってくるなり鏡の前で革製のベルトで椅子に固定されたままの悠太に近づいてくる。

「それにしてもこの制服とってもよく似合ってるわねー。どう?初めてうちの会社の女子社員の制服を着た感想は?。」

そう女子社員の制服を着ているのがさも当たり前のような口ぶりで瑞穂は悠太に質問してきた。

そんな感想だなんて聞かれても無理やり女子用の制服を着せられて、おまけにメイクまでされている今の状況は悠太にとっても本意ではないし、第一恥ずかしくてしようがなかったので答えようもなくうつむいて黙っていたのだが、まあいいかと云う感じで瑞穂は続けて話し始めた。

「もう聞いてると思うけどこの研修所は男子禁制なのでこれから半年間あなたは女子社員として研修を受けてもらいます。それとなぜあなたがこの長期研修に選ばれたかを人事部長の私からお話しするわね。」

確かに仕事であれこれあって会社で居心地が悪かった悠太に今までとは違った場所で他業務を体験し、リフレッシュする目的での研修だと云うのは聞かされてはいたものの、ただの長期研修のはずなのにどうしてこんな風に強制的に女装をさせられて「女子社員」として扱われる事になるのかは全く疑問だった。

それについて瑞穂が言うにはここ数年間、再教育が必要と思われる社員をピックアップしてこの小瀬戸島に新しくできた施設で長期研修を行う制度を策定したとの事だった。

再教育が必要と言ってもそこに至るまでは個々に様々な理由や事情があるだろうと思われるので、会社の上層部の命を受けた人事部として部・課内に設けた専門のチームで社員の営業成績、執務態度や人事考課と云った色んな情報や評判を調べて人選を行い、先ず何人かを候補としてピックアップした。

「再教育」なのでどちらかと云えば成績優秀や勤務態度が良好と云う社員よりかは何らかの理由で社内でくすぶっていたり、また問題行動をしでかしてしまった等の社員が選ばれ、悠太も例の仕事での失敗続きがあって候補にピックアップされてしまっていたのだった。

しかし一度は辞表まで出した悠太だったが、直属の課長にはその辞表は一旦預かると言われた事や何より元の担当していた取引先からも一度や二度のミスにめげずにまた戻ってきて欲しいと云う声が多く寄せられている現状を調べているうちに聞いたので人事部としてはもう少し詳しく悠太の身辺調査を密かに進めてみた。

「そこでね一つの事が分かったの。それは何かと言うと人柄もそうだし、外見もなんだけどあなたはとっても周りにかわいがられる存在だって云う事なの。」

そう言う瑞穂だったがつまり社内でも取引先でも悠太は確かに一見地味だけど性格は真面目で素直だし、仕事にも実直に取り組んでいたのでこのまま会社で埋もれさせたりましてや辞めてしまうなんて勿体ないと云う意見が大半だったのと元々が男子としてはそこまで背も高くなく、また華奢な体型で何より童顔で実年齢より若いと云うよりか幼く見られる事も多く、それもあって逆に「若いのによく頑張る」「見た目より全然よくやってくれる」と云う評判が多かったと教えてくれた。

「そうだったんだ・・・・・僕の事をそんな風に思ってくれている人もいたんだ・・・・・。」

と瑞穂が言うのをしみじみと聞いていた悠太だったが、ただそれはいいとしても何故女装をしてまで強制的に女子社員にさせられなくてはいけないのかと思っていると、その悠太の童顔で且つ背も高くなくて華奢な体型の外見に加え、何より入社した時の志望動機もまたこの研修に選ばれた一つの理由だと言われた。

そう言われ自分でも入社試験の時に面接で何を言ったか、またエントリーシートに何を書いたかと思い出そうとしたが何分随分前の事なので思い出せずにいると瑞穂が「あなたはね、エントリーシートに”この会社のジェンダーギャップを無くそうとしたりLGBTQをはじめとしたマイノリティに優しい社風に関心を持ったので志望いたしました”と書いてあったし、最終面接でもそう言っているの。」と教えてくれる。

そう言われると確かにそんな事を言った覚えが悠太の記憶の中に蘇ってきた。

悠太は学生時代はそのおとなしくて引っ込み思案なところの多い言ってみれば地味な性格で、特に目立つ存在でもないどこにでもいる「埋没系男子」だった。

その為いつもクラスやサークルの中でも気づいたらそこに居た的なおまけのような存在だったのでいつも「主流派」にはなる事がなく、また陽の目が当たるキャラでもなかった。

なので自分の引っ込み思案で押しに弱い性格もあって随分損もしてきた悠太だったがこのビューティービーナスの会社案内にあった「マイノリティに優しい会社」と云うのがもし本当ならこの会社ならば少しは自分にも活躍できる居場所があるのではないかと思って志望した事を思い出した。

マイノリティと云っても自分自身はLGBTQではなく、いわゆるハンディキャップもある訳ではなく、ただ単におとなしい性格で集団の中で前面に出る事が少ないので「主流派」にはなりづらいと云う意味だった。

でも就活を行う中で色々な会社の事を研究してみるとこのビューティービーナスは確かに社長は女性だし役員や管理職にも女性の割合が高く、元々の一般社員の男女比でも女性の比率が高い事を見てもその事はあながち嘘ではないだろうと云うのは感じていたし、実際に企業訪問をしてみてもそう思ったのでこのビューティービーナスを正式に志望したのだった。

そして内定をもらって入社し、勤め始めても確かにその「マイノリティに優しい社風」と云うのは本当だと肌で感じ、自分にとって心配事がひとつ減ったように思え、それもあって仕事に集中できていたし、貰ったチャンスを活かして結果を出せた。

「仕事上であなたにとって色んな事があったのは聞いてるわ。でもね、周りの評価もそうだし、何より当社の社風や求めているものを充分に理解できてそれを実行に移せているあなたを失敗続きだったからと云う理由で会社からほっぽり出したりまだ若いのに閑職に回すと云うのは勿体ないと思ったの。それに・・・・・。」

”それに・・・・・”って何だろう、まだ他に理由があるのだろうかと思っているとなんとここに居る悠太の指導役の遥香からの推薦もあったと言う。

そして「ねえ、あたしの事覚えてない?。」と言う遥香だったが、悠太はこの遥香と云う女子社員に会うのは今日が初めてのはずでそう言われてもピンと来ない。

すると遥香は「無理もないかな。前にお会いした時は”和泉遥斗(いずみ はると)って云う大宮支店で営業をやってた”男子社員”だったからね。」と言うではないか。

実は悠太は遥香に初めて挨拶された時からこの”いずみ はるか”と云う名前はどこかで聞いたような気がしていた。

ただそれがどこで聞いたのかすぐには思い出せなかったし、何より目の前のこの”女子社員”とは面識が無いように思えた事もあって勘違いか記憶違いだろうとさして気にも留めてなかったが、ただ確か”いずみ はると”と云う”男子社員”なら面識があった事を思い出した。

「あっ・・・・・もしかして・・・・・。」

「思い出した?。そう、あたし去年の初級セールス職社員研修であなたと一緒の班だったのよ。その節は色々とありがとね。うふふっ。」

悠太は入社して1~2年目の営業担当者を集めた社内研修会に昨年の秋に参加していて、その時に悠太は遥香、いえ遥人と同じ班になり、一緒にロールプレイングや講師の出す様々な課題に取り組みながら寝食を共にする中で二人はとても仲良くなったのだった。

「あの当時すでに頭角を現しはじめていたあなたと研修で一緒の班になって、さすがにあなたは評判になっているだけあって感心したり励みになったし、何より仕事ができなくて大した実績も残せてないあたしにも分け隔てなく研修もこれからの仕事も頑張ろうねって優しく接してくれたでしょ。あたしそれってとっても嬉しかったの。」

と言う遥香だったが研修後は自分なりに営業の仕事を頑張ってはみたものの結果が残せず、半年前の今年の春の異動でこの小瀬戸島への長期研修を命じられたのだった。

「そうだったわよね、あれからもう半年になるんだ。だけど遥香ちゃんはこの島に来てからよく頑張ってたからこんなにちゃんとした”女子社員”になれたんだし、すばらしいわ。」

と今度はもう一人の指導役の麗子が言うと「そんなあ、あたしがこうしてちゃんとした”女子社員”になれたのも麗子お姉様のご指導の賜物です。ありがとうございます。」と謙遜するように遥香は言った。

そして再度瑞穂がこの長期研修に悠太が選ばれたのは遥香から初級セールス職研修での悠太の温厚で思いやりのある性格と普段の振る舞いからしてこの小瀬戸島での長期研修を受ければきっと「女子社員」としてやり直せる人材だと聞かされたのも大きかったと言う。

そして色んな人から愛されて、可愛がられ、そして会社にとって必要な人材ですと言われているこの「いい人」を会社としても「よりいい人」、それも「よりいい女子」として再教育したいと云う事で今回の長期研修のメンバーに選ばれたと言われた。

そう言われた悠太は複雑な気持ちだった。確かに自分が思っていたより色んな人が悠太の事を評価や心配してくれていた事も分かったし、素直にありがたくそして嬉しい事だと感じていた。

ただその反面、自分に再起するチャンスときっかけを与えてもらったのも嬉しいしありがたい事だがなんで「女子社員」になる事を強要され、しかもこんな瀬戸内海の離島に「隔離」されて研修を受けないといけないのかと話を聞きながらずっと思っていた。

そして「そうそう、今は女装させられて恥ずかしいと思っているかも知れないけどすぐ慣れるわよ。それに今日あなたと一緒にこの島にやってきた他の4人の男子社員も今頃あなたと同じように女子社員になってるから心配しないで。どう?同じような仲間がいるから別に恥ずかしくないでしょ。じゃあそろそろ入所式前のオリエンテーションの時間だからベルトを外して連れてきなさいね。」と瑞穂は言い残し、部屋を出ていった。

ベルトを外され、拘束を解かれた悠太は黒のハイヒールを履かされ、改めて姿見の前に立たされた。

「まあ! この子ってほんとに初々しくてかわいい新人女子社員って感じ!。」

「ほんとですねー。なんだか実はもともと女の子だったって言われても信じちゃいますよねー。」

そう言う麗子と遥香の声を背に姿見の前に立たされた悠太は女子社員になった自分を見てみなさいと促され、恐る恐る鏡を見てみた。

するとそこにはまっさらなベストスーツとタイトスカートの制服を着て恥ずかしそうに立っているあどけなくてかわいらしい雰囲気の「女子社員」が映っている。

「は、恥ずかしい・・・・・でも・・・・・なんだか・・・・・か、かわいい・・・・・。」

悠太は不覚にも少しではあるがその自分で自分の女子社員になった姿を見て胸がどきっとした。

確かに女子社員の姿になった今の悠太は傍目にも普通に女子社員として見る事のできるパス度だったが、この無理やりさせられた女装姿が嫌な筈なのにほんの少しとは言え自分で自分に萌えてしまった事に複雑な感情を覚えた。

そしてオリエンテーションの会場に行く為に悠太たちは部屋を出た。ヒールの高さは初めてと云う事で3センチと高さはさほどでもなかったが、履き慣れない初めてのハイヒールと云う事でよろよろ歩きながら麗子と遥香に先導され、更に逃げ出さないようにと脇を女子レスリング部の社員に固められながら「多目的研修室」と書かれた札の掛かったやや大きめの部屋に入る。

するとそこには既に同じように真新しい制服を着た「女子社員」が二人ほど恥ずかしそうに座っていて、悠太と同じ少しブラウンにカラーされたセミロングの髪形でちゃんとメイクもしているその”女子社員”もやはり悠太と同じように逃げ出したり暴れたりしないように脇を体格のいい、他の女子社員に固められていた。

「ほら、見てごらんなさい。あの真新しい制服を着た”女子社員”はあなたと今日一緒にこの島に来た新人研修生よ。どちらもあなたに負けず劣らず女の子らしくてかわいくなってるでしょ。」

それを見て悠太は強制的に女装させられて女子社員扱いをされているのは自分だけではないと云う状況を見て少しだけホッとしたが、だからと云ってこの恥ずかしさが消えた訳でもなく、ただ仕方なく椅子に座っているしかなかった。

そしてもう一人続けてやはり悠太たちと同じようにメイクをされ、真新しい女子用の制服を着た同じカラーのセミロングの髪形の「女子社員」が他の3人と同様に脇を固められて恥ずかしそうにこの部屋に入ってきた。

「この人もやっぱり僕と同じく今日この島に来たさっきまで”男子社員”だった新研修生なんだ・・・・・。」

この新研修生もきっと強制的に女装させられて「女子社員」になっているに違いないだろうけど今彼は一体どんな気持ちなんだろう?みたいな事を思っていると部屋の外から何やら大きな声がしてくるではないか。

「いやだあー、やめてくれええー。」
「何さっきから言ってるの?!。あなたはもう女子になったのよ!。諦めておとなしくしなさい!。」

そのいやだと叫んでいる声には聞き覚えがあり、どうも今朝ほどからずっとチャラい口調で調子よく喋っていた森野純平の声のようだった。

そしてその大きな声と共に部屋のドアが開くと驚くべき姿の「女子社員」がそこには居た。

着ているものは悠太たちと同じ女子社員の制服で、髪形も同じ軽くブラウンにカラーされたストレートのセミロングでもちろん顔にはメイクもされている。

ただ首にはまるで犬がするような首輪をされ、そして手には手枷もされていてそれぞれにリードが繋がれ、やはり初めてなのか履きなれないハイヒールを履かされたまま脇を固められてリードに引っ張られるようによろよろと歩いている。

「ほら、そうやって抵抗するからここに来るまで余計な時間が掛かったじゃない!。”純子ちゃん”は皆さんをお待たせして悪い子ね!。」

そう言われながら椅子に座らされた「女子社員」は「純子」と云われているところからしてやはり純平のようだ。

そして指導役の先輩女子社員が「もううるさいわね!。静かにしないなら無理やり黙らせるわ!。」と言い、もう一人の指導役の女子社員に指示して手ぬぐいを持ってこさせ、なんとそれを純平の口の周りに巻いて猿轡をしたのだった。

「うぐ・・・・・うぐぐ・・・・・。」

猿轡をされた純平は恐らく「やめてくれ」と言っているのだろうが手ぬぐいで口を覆われてしまっているので声にならず、もごもご言うばかりに聞こえるだがこの異様な光景に悠太をはじめ他の新研修生たちがたじろいでいると入学式に着てくるようなセレモニースーツを身に纏った女性が現れ、この研修所で教育研修部の部長を任されている堂園真美(どうぞの まみ)と名乗った。

「ようこそ新研修生のみなさん。これから半年間の長期研修が始まりますが、既に皆さんは先程着替えたこのいでたち通り”女性”、そして”女子社員”としてこの半年間を過ごして頂きます。いいですね?。ではまずこの長期研修の大まかな流れと研修内容、そしてこの研修所での生活についてお話します。」と言い、説明を始めた。

まずこの研修所は悠太たちが事前に聞いていたように会社として新商品の開発や製品の原材料として使う植物の栽培や研究をしている部門があり、新研修生もここでの女性としての生活に慣れてきたら実際に研究室や実験農園での作業や実習を行って商品知識やどのようにして新商品の開発を行っているか等も学ぶらしい。

それとここには研修施設だけでなく会社の保養所も併設されていて、確かに悠太たちが今いる研修棟の隣に立派なリゾートホテルのような施設がある。

またこの会社のレスリングやテコンドーと云った格闘技系の実業団チームが合宿所と云う形で練習拠点をこの島に設けていて研修施設・保養所と同じ敷地内に建物があり、選手は泊まり込んで練習に励みながら研修施設の運営や研修の補助的業務を手伝っているとの事でどうやらそれで体格がよくて力の強い彼女たちがこうして「用心棒」や「お目付け役」のように悠太たちを監視・監督しながら脇を固めているのだった。

ただその後に堂園部長が話した研修内容はもちろん、それ以上に罰則規定は驚くべきものばかりで聞いていて身震いがするほどだった。

罰則規定とは一言で言えば研修所内でのルールを守らなかったり研修中の素行や態度に問題があった場合に「お仕置き」をすると云うもので、そこにはコンプライアンスやハラスメントと云う観点は全くないものだった。

身体的に苦痛を与える体罰的なものはもちろん精神的に屈辱を味わせるものもあり、この二つを同時にミックスさせるものも多かった。

ただ一番の「重罪」は施設内で暴れる等の著しい暴力行為、またはこの島からの「脱走」であり、もし暴れたり脱走して見つかった場合は島に連れ戻され、懲罰委員会に掛けられた上でなんと強制的に去勢させられると言う。

「ほら例えば競走馬でも気性が荒い牡馬は”タマタマ”を取って“騙馬(せんば)”にするとおとなしくなりますよね?。あれと一緒でそんな暴力を振るったり逃げ出したりするような研修生はタマタマでも取らないと改心しないという事でそうしています。”まさか、そんな事本当にする訳ない”とあなたたちは思ってるかも知れないけどこれは本当の事で実際に逃げ出して去勢された研修生が過去にいたのでこれ見てもらいましょうか。」

そう言ってビデオプロジェクターに映し出された動画は逃げ出した研修生が島に連れ戻され、懲罰委員会の結果を受けて強制的に去勢されている際の手術の映像を含めた一部始終をまとめたものだった。

実際に嫌がりながら強制的に去勢され、そして去勢後におとなしくなって反省しながら「あたしなんでこんな馬鹿な事したのかしら・・・・・。」とメイド服姿でカメラの前で脱走した研修生が言っているのを見て悠太はもちろん新人研修生全員がこの研修に対する会社としての本気度を感じ、さっきまで不服そうにしていた純平もこれを見るとさすがにおとなしくなっていた。

「でも大丈夫です。これはよっぽどの事で普通に言われた通りの事をやっていれば”竿”や”タマタマ”まではこの研修中には取ったりしませんから。」

と言われ少しは安心したがこの他にも生活全般に渡っての決まり事があれこれと申し渡され、この施設は所長を筆頭に厳格なヒエラルキー(階層・階級)制度の基に運営されいる完全な縦社会で上司、先輩社員の命令や指示には絶対服従が求められ、呼び方も管理職に対しては名前プラス役職名、そして先輩の一般社員に対してはたとえ自分より年齢が下でも全て「お姉様」と呼ぶようにと言われた。

そしてもちろん常に性自認は女であり、それプラス自分は女になったと云う自覚と認識を持つように言われ、言葉遣いは全て女言葉で話すのはもちろん振る舞いや仕草も女性らしくして、そして制服以外の服装も下着に至るまで全て女物を着用する事を義務付けると言われた。

ここまで聞かされるとどちらにしてもとても厳しい研修になるのは明らかで誰もがもう諦めるしかない、せめて竿やタマタマを取られずに無事にこの半年間の研修を終えたいと云う心境だった。

そして堂園部長から一人一人に辞令が交付された。「じゃあ名前を呼ばれた新研修生は立って私のところまで来て辞令を受け取りなさい。では最初に園田さん。」

そう言われ細面で整った和風美人と云った感じでどことなく上品な風情を漂わせている「女子社員」がすくっと立ち上がり、ハイヒールを履いているのに悠太とは違って慣れた感じですたすたと堂園部長の前まで歩いていった。

「園田大河改め”園田 穂波(そのだ ほなみ)、本日より3月31日まで”見習い女子”として小瀬戸島研修所での社員女子化長期研修を命じる。」

そう堂園部長が読み上げるとやや緊張の面持ちで「穂波」と呼ばれたその「女子社員」は辞令を受け取ると「かしこまりました。会社のご厚情でこの長期研修に参加させて頂き、心より嬉しく存じます。一日も早く女子化し、立派な女子社員になれますよう努力致しますので、今日から女子社員の園田穂波となりました私をよろしくお願い申し上げます。」とスムーズな「女言葉」で返すと、「よろしい。ではこれを付けなさい。」と堂園部長が言い、「園田 穂波」と女性名が書かれたネームプレートを胸の辺りに、そして穂波の首に純子がされているような首輪を横に居た指導役の社員がつけた。

そして他の新研修生も次々に名前を呼ばれ、悠太は「菊川悠子(きくかわ ゆうこ)」、他にも「森野純子(もりの じゅんこ)」「安藤涼子(あんどう りょうこ)」そして「槇原紗絵(まきはら さえ)」とそれぞれに女性名の付けられた辞令を交付され、同じように全員がネームプレートと首輪をつけられた。

「いいですか。皆さんは”従順で女らしい女子社員”となるべく再教育を行いますが同時に”従順なメス犬”にもなってもらいますのでこの首輪は”見習い女子”である目印も兼ねています。ではこれから入所式です。他の社員がお待ちかねですので参りましょう。」

そう言われた5人の新研修生は促されて立ち上がると指導役の社員に先導されながら監視役の格闘技系の社員に脇を固められ、入所式が行われる大ホールへと慣れないハイヒールを履いたままよろよろと歩き始めた。

(つづく)

















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