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田布施の名木・センダンは5−6mで切られることに。センダンの会 解散のお知らせ

 山口県田布施町にある麻里府のセンダン巨木は、麻里府公民館の移設により、高さ5〜6mで切ることに決まりました。これに伴い、このセンダンを守るために有志で活動してきた住民グループ「センダンの会」は、解散することにしました。センダンは、いつ切られてもおかしくない状況です。最後の勇姿を見たい方は、ぜひ現地に訪れて下さい。

 この活動は、私たちの力不足もあり、不本意な形になりましたが、当初の完全伐採から5-6mでも残せることになった点は評価できますし、対応して下さった関係者の方々には感謝もしています。そして、多くの住民がセンダンの話題を知り、語り合い、センダンを見に町外の人も多く訪れました。これも、木の魅力、地域の魅力があることの証でしょう。

 しかし、地元の代表者や行政担当者には、この木が危険、邪魔、管理が大変、と思われる方々も多く、残念ながらその溝を埋めることができませんでした。身近な自然をもっと知ること、丁寧に語らうことで、人と自然が調和した未来が開けると思います。私たちは、地域を見守ってくれたセンダンに感謝し、この学びを活かし、これからもセンダンから学び続けたいと思います。

 以下に、麻里府地域全戸や関係者の方々に配布したパンフレットと同様の内容を掲載します。

ありがとう、センダン。
私たちが学んだこと。

 2024年3月28日、田布施町が開催した麻里府公民館移転計画の説明会で、センダンは高さ5〜6mで切って残すことが決まりました。切断作業は予告なく行われ、今後の管理も町が行うことが明言されています。センダンの会は活動を終了し、今後は見守ることにしました。

 私たちセンダンの会では、麻里府のセンダン巨木を最大限の大きさで残して守るために、2023年6月より呼びかけてきました。
 11月には、高さ15mで残すことや根回りの配慮を求めた要望書(過去の記事参照)を町長に提出。今年2月には、同要望書を教育長に提出し、文化財審議会での検討を要望。3月には、同様の陳情書を田布施町議会に提出しましたが、いずれも多くの部分は受け入れていただけませんでした。
 最後の3月28日の説明会も、当会や一般住民が参加できない場(当日になり傍聴のみ許された)で行われたことは残念ですが、麻里府地域の代表者からは完全伐採を求める声が今も多くあがり、私たちは、町が提案する高さ5〜6mでの切断が現実的な着地点と思いました。

 当会では、センダンが枯死するリスクを低減するため、幹の切断位置以外にも、根回りの転圧や盛土、舗装を極力避ける配慮などを、樹木医の指導下で行うよう昨夏から要望してきましたが、十分には採用されていないと思われます。そのため、現状では枯れる恐れも高いと危惧しています。
 町は当初、センダンの管理を住民側に求めたため、当会は管理に協力する「センダンサポーターズ」を募り、約40人を集めました。しかし、町は11月の説明会で、センダンの管理は町が行うと方針転換しました。現在も、当会やサポーターズに管理の協力を依頼する意向は全くないことを確認しています。

 一方で、センダンの伐採を求める一部の方々から、当会は強い批判を受けており、誹謗中傷や心身の危険を感じる案件も発生しています。
 この状況下では、会の活動を継続することは困難で、会を存続させる目的も失ったため、センダンの会とセンダンサポーターズは解散します。今後は、各個人の意思でセンダンや地域に関わっていけたらと考えております。

 ご協力や応援いただいた方々、私たちの要望に可能な範囲で応えて下さった行政の方々には、心よりお礼申し上げます。本意ではありませんが、意見の相違によりご迷惑をおかけした方々には、この場を借りて謹んでお詫び申し上げます。

2024年4月16日  センダンの会
代表/中田勝則 副代表/林 将之

センダンの木に関する田布施町の方針 【田布施町長より】

(1)麻里府公民館は、公民館機能と防災拠点施設及び指定避難所等を兼ね備えた安心・安全な公共施設として整備。
(2)その上で、幹の高さ5〜6m程度で切り、今後、萌芽する枝についても安全に管理できる範囲で剪定していく。
(3)剪定にあたっては、樹木医の技術的な助言について検討していく。
(4)根腐れを防ぐための排水や透水性舗装などに十分配慮することとし、予算の範囲内で対応。
(5)剪定後の管理については、町で対応。

2024年4月1日付 要望書・陳情書に対する東浩二町長の回答書より転載

要望書及び陳情への回答  【教育長より】

 当該センダンを「文化財的価値のある巨木」として、文化財に指定して残すことにつきましては、田布施町文化財審議会においても協議されたところであります。指定するに当たっては、①その地域で古くから祭祀的な関わりが文献上はっきりしていること、②植物として希少性があること、などの要件を満たす必要があります。しかしながら、当該センダンにつきましては、こうした要件には該当しないものと判断したところであり、残念ながら貴会のご要望に沿うことはできません。

2024年4月1日付 田布施町教育委員会 鳥枝浩二教育長からの回答書より転載

陳情の審議結果  【田布施町議会より】

「麻里府のセンダン巨木の樹冠保護と景観保持に関する陳情」に対する委員会報告の意見
・町からの説明を受け、麻里府地区と町とが協議を重ねており、その経緯の中で解決していく問題であり、まずは地元としっかり協議をされて、地元の理解の上で結論を出すということが一番重要ではないか。
・判断の方向性を議会で結論を出すというのは、地元を無視したようになるのではないか。

2024年3月26日付 田布施町議会 南一成議長からの審議結果通知書より転載


麻里府のセンダンに関するこれまでの経緯

  • 【2022年夏】
    田布施町は、麻里府の各種代表者や自治会長らを集めて「地域に密着した公民館を考える会」をつくり、センダンを完全伐採して公民館を建設する計画を提示

  • 【10月】
    「麻里府地域夢プラン検討会」で新公民館について話し合われ、公園や店、いこいの場、ツリーハウスなどの要望が出る。センダンを切る切らないの説明はなかった。

  • 【2023年5月】
    麻里府にUターンした樹木図鑑作家の林将之が、考える会や夢プランのメンバーにセンダンを残せないか話して回った後、町長に面会して要望するも拒否される。

  • 【6月】
    中国新聞が、林将之、田布施町長、センダンを「田布施の名木」に選定した文化財審議会委員の南敦氏を取材。南氏は、相談なく伐採計画が進んだことを「とても残念」などと発言したことで、町長は一転して南氏に謝罪。6月1日付中国新聞に「センダン巨樹 一部保存」の記事が掲載された。朝日新聞も6月16日付で関連記事を掲載。町は南氏と、センダンの幹を高さ2〜5mで切ることを検討。

  • 【6月8日】
    有志で「センダンの会」を結成し、8日に町長と教育長に要望書で以下を要望。1. 幹や枝をできる限り残す、2. 公民館建物をセンダンから離し、幹周囲の盛土や舗装を控え、枝張サイズの裸地を残す、3. 樹木医の指導を仰ぐ、4. センダン周囲は公園化し暑さ対策やイベント開催に配慮する、5. 麻里府のセンダンや麻郷のクロガネモチを文化財に指定する。

  • 【6月18日】
    麻里府公民館からセンダン周辺で「生活の役に立つ植物観察会」を開催。約30人が参加。

  • 【6月22日】
    樹木医を招き、剪定や管理についての説明会をセンダン現地で当会が開催。町職員や住民約10人が参加。指摘内容をまとめ建設課や総務課に提出。

  • 【7月27日】
    町が1回目の説明会を開催。対象は考える会、夢プラン、麻里府地域連合自治会のメンバー約30人。当会2名は飛び入りで参加。町はセンダンと公民館の共存を目指す方針を説明。参加者からは、実の毒性や、台風のリスク、管理や責任の問題を不安視する意見が相次ぐ。

  • 【8月】
    町は南氏らと高さ2mで幹を切る計画を立て、切断予定位置にひもを巻いた。センダンの会では、センダンの価値を伝えるチラシを作成し、麻里府地区に全戸配布。

  • 【10月】
    センダンの管理に協力する住民を募る「センダンサポーターズ」をつくり、当会や地元住民で呼びかけ始める。

  • 【10月】
    見田団地自治会がセンダンの木を残すか残さないかの住民アンケートを実施。66%の世帯が「残す」と回答。

  • 【11月17日】
    町が2回目の説明会を開催。1回目と同じ3団体と、センダンの会が参加。町はセンダンを高さ2mで切る案を撤回し、6mで切る案を初めて提示。参加者からは、完全伐採を求める意見もあった一方で、当会は高さ15mのまま残す方法を提案した。副町長は、要望があれば3団体ごとに要望書を出すように述べて終了。

  • 【11月23日】
    麻里府公民館からセンダンの周辺で、植物観察会と勉強会を開催。地元住民を中心に約20人が参加。

  • 【11月30日】
    当会は、センダンを高さ15mで残し、根回りに十分配慮を求める要望書を町に提出(回答は上記)。※11月17日の説明会を受けて要望書を出した団体は当会のみでしたが、要望の大半は受け入れてもらえませんでした。3月時点の平面図では、幹周辺の未舗装地は半径3〜4m程度、建物とセンダンの距離は約6mと近いままで、根・幹・枝の大半が切られるため、衰弱や枯死が心配されます。

  • 【12月19日】
    町長は町議会で、センダンはシンボルツリーとして保存し、高さ5〜6mで切ることを発表。中国新聞が報道。

  • 【2024年2月28日】
    当会は、同じ要望書を教育長宛に提出し、文化財審議会でセンダンの保護や文化財指定を要望(回答は上記)。

  • 【3月】
    当会は、田布施町議会にセンダンの樹冠保護や緑地設置を求める陳情を提出。「地元で協議すること」との理由で、22日に全会一致で不採択となる(結果は上記)

  • 【3月28日】
    町が3回目の説明会を開催。対象は3団体。センダンの会は傍聴のみ許される。高さ5〜6mで切ることが決定

  • 【4月13日】
    第1回たぶせ巨木ツアーを開催。センダンを含む町内の3本の巨木を観察。約30人が参加。

たぶせ巨木ツアーで麻里府のセンダンを案内。他には麻郷のクロガネモチ、下田布施のモミを見て回りました(2024.4.13)
たぶせ巨木ツアーはKRY山口放送も取材に来てくれました(2024.4.13)


田布施町内の主な樹木のサイズ

※枝張(=枝葉を広げた樹冠の直径)が大きな順に掲載。センダンの会が2023-2024年に測定した実測値を掲載。測定方法は環境省「巨樹・巨木林データベース」参照

  • 麻里府のセンダン 枝張28m 樹高15m 幹周305cm
    田布施の名木43 枝張は町内最大、県内でも有数の大きさ

  • 麻郷 米出のセンダン 枝張24m 樹高14m 幹周300cm
    麻里府のセンダンに近い大きさ

  • 麻郷のクロガネモチ 枝張21m 樹高19m 幹周327cm
    田布施の名木37 総合的には日本最大級とも思われるクロガネモチ

  • 小行司 多賀社のヤマザクラ 枝張18m 樹高16m 幹周311cm
    田布施の名木35 町指定の天然記念物。ヤマザクラとして有数の大木

  • 馬島 要害山山頂のスダジイ 枝張17m 樹高12m 幹周200cm
    周囲の木が伐採され、麻里府側からよく見える木

  • 田布施川のソメイヨシノ 枝張15m 樹高8m 幹周134cm
    田布施の名木23 桜並木の中で最大級の木を測定

  • 宿井のハゼノキ 枝張14m 樹高10m 幹周401cm
    田布施の名木 4 県指定の天然記念物。樹齢240年以上

  • 下田布施 田川家のモミ 枝張13m 樹高19m 幹周258cm
    田布施の名木15 推定樹齢150年の背が高い針葉樹

  • 田布施町役場のクロガネモチ 枝張11m 樹高11m 幹周164cm
    田布施の名木22 町の木としてシンボルツリーになっている

  • 別府 尾津東のエノキ 枝張5m 樹高5m 幹周209cm
    田布施の名木44 幹や枝を強く切られて痛々しい姿になっている

  • 下松市 花岡八幡宮のセンダン 枝張24m 樹高11m 幹周385cm
    (下松市保存樹木) 樹齢200〜300年。幹周は県内3位のセンダン
    (※比較用に掲載)

麻里府のセンダンの樹齢は50年? 120年以上?

 通常の木は幹が1本ですが、麻里府のセンダンは幹が2本あります。それは、過去に伐採されている可能性が高いためで、切り株から芽が出て複数の幹になったと考えられます。『田布施の名木』(田布施町教育委員会発行/南敦著/2005年)には、「百年以上経っていると考えられる」と書かれており、南氏に直接尋ねると「根株が古く見える」と述べられました。しかし、約50年前に撮影された空中写真には、この木がよく写っていません。一方で、約70年前にもこの木はあったという証言もあります。よって、50年前頃に一度伐採されて再生した可能性が高く、地上部は樹齢50年前後、根株は樹齢120年以上経っているのかもしれません。元の持ち主さんに尋ねても、いつからこの木があるのか詳細は分からず、正確な樹齢は不明です。

出典:南敦著『田布施の名木』(田布施町教育委員会 2005年発行)P.51と表紙

センダンの会
山口県田布施町にある、麻里府のセンダン巨木の伐採計画を機に、類いまれな美しさで文化財的価値のあるこのセンダンを守ろうと、有志が集まって2023年6月にできた住民グループです。メンバーは、麻里府地域をはじめ、町内、県外まで約40名。センダンを守るための勉強会や情報発信、行政や地域への提案や要望、センダンやその周囲での観察会や清掃、田布施町周辺の樹木の測定などを行ってきました。2024年4月16日解散。

【パンフレットの画像(A4×4ページ)

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