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"巨星"墜つ(中)

ー作曲家/すぎやまこういち

作曲家・すぎやまこういち。9月30日、敗血症性ショックのため死去。享年90歳。人気ゲームソフト『ドラゴンクエスト』シリーズの音楽を手がけたことで知られている。発売予定の『ドラゴンクエストⅫー選ばれし運命の炎』に楽曲を提供しているが、これが最後の作品となるようだ。ドラクエシリーズは幼い頃からやり込んでいて、2021年の東京五輪の開会式に、このシリーズの楽曲『序章:ロトのテーマ』が流れたときはシビれた。それを思い返すと、どこか寂しい。

関連リンク(連載「『"巨星"墜つ』シリーズ」):「"巨星"墜つ(上)ー漫画家/さいとう・たかを

傑物

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すぎやまこういちはドラクエシリーズのBGMなどを作曲する一方で、ゲイやレズビアンら性的少数者(LGBT)に対する差別的な発言で物議を醸したことで印象深い。今回、あらためて作曲家としての経歴を調べたところ、あまりの突出した実績に度肝を抜かれた。

グループサウンズ(GS)全盛の60ー70年代には、ヒット曲を次々と作曲した。『亜麻色の髪の乙女』(ヴィレッジ・シンガーズ)をはじめ、『僕のマリー』『花の首飾り』『君だけに愛を』(ザ・タイガース)、『恋のフーガ』(ザ・ピーナッツ)、『学生街の喫茶店』(GARO)など。

いずれもGS好きな義母が泣いて喜びそうな曲ばかりだ。ほかにも、特撮テレビ番組『帰ってきたウルトラマン』の主題歌も手がける。東京・中山両競馬場の発走のファンファーレも作曲した。ゲーム音楽以外にも、音楽の幅広い分野で長年に実績を重ね、才能豊かな傑物だったことが分かる。

新時代

NHKがニュースサイト「NHK NEWS WEB」に掲載した音楽評論家・富澤一誠の"すぎやま評"は次の通り:

「(すぎやまこういちは)60年代から70年代には数々の昭和歌謡曲を手がけて大ヒットとなり、そこで終わることなく70年代半ばからはアニメソング、そして80年代以降はゲーム音楽で支持を得るなど、幅広いジャンルで時代を越えてカメレオンのように活躍した超一流の作曲家だ」(談)

すぎやまこういちが作曲した新しいドラクエのテーマソングが、『ドラクエⅫ』の後はもう聴けないと思うと寂しい。ただ、これまで日の目に当たることがなかった才ある作曲家が脚光を浴びる良い機会にもなる。今後、新しい時代の新しいドラクエBGMに期待したい。

久しぶりにドラクエをプレイしたくなってきた。

(写真〈上から順に〉:『りすの独り言』トップ画像=フリー素材など基にりす作成、「世界最高齢でゲーム音楽を作曲した作曲家」としてギネス世界記録を受けたすぎやまこういち(写真左)とゲームソフト『ドラゴンクエストⅪー過ぎ去りし時を求めて』(同右)=グレイプ、アマゾン)

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