赤い車と救急車

パソコンに向かっていたら、サイレンの音がどんどん近づいてくる。「近いわ」と目を上げると、ベランダ越しに見渡せる路地に、東京消防庁と車体に書かれたつやつや真っ赤な車が2台、スーッと止まった。救急車ではないが消防車でもない。交番のおまわりさんもかけつけてきて、乗っていた白い自転車をお向かいの家の脇に止めた。赤い車から出てきた数人の、青い服の多分消防士さんが私からは見えないほうに走り込んでいく。程なく耳慣れた救急車のサイレンが聞こえ、空のストレッチャーを押して走る人が見えた。
赤い車が止まった家の庭の奥から、旦那さんがゆっくり歩いて出てきたから、当事者はここではないようだ。とにかく火事ではなかったようでひと安心。「どのお宅かしら」気になるけれど、わざわざ外に出て野次馬になるのも嫌だ。知らんぷりを決めてキーボードを打ってみるが、気もそぞろ・・・。お隣りも、そのお隣りもお向かいも留守のようで静かなもんだ。カーテンに身を隠し、のぞいてみるのは私だけなのかもしれない。
しばらくして気付いたら、赤い車はいなくなっていた。おまわりさんはまだ角に立っている。ずいぶん経ってから、救急車がわりと離れた路地から出ていった。この辺りは小さな子も多いし、ましてや高齢者ばかりだから、数か月に一度は救急車が止まる。できるだけお世話にならないように、気をつけよう。

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