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そんな4月がやってこないことに、少しだけ感動した

仕事をしている途中、ちょっと気分と集中力がマンネリ化してきたタイミングで最寄り駅のカフェに行った。

集中力を飼い慣らしたくば、場所を変えよ。

(いま、私が適当に作ったことわざ。いつか、友達に披露しようかな。)

私がカフェに向かったのは午後の真ん中の時間、夕方の2メートル手前ぐらいの時間だった。向かう途中、同じ制服を着た中学生か高校生か、と何人もすれ違った。1人で黙々と帰る子、同じ方向なのか2~5人で帰る子たち、クラスからそのまま塊魂のように帰るグループ。すれ違うどの子の制服も、皺やシミが1つもないパリッとした風合いだったから、きっと4月に入った新入生なのだろう。恐らく部活動は仮入部と言われる時期で、まだ放課後は自由な時間があるのかもしれない。ただ、入学する前から部活動を決めていた子もいたりして、そういう子たちは一足先に先輩後輩の関係を作ったりしていて。

ああ、そうそう。4月ってそういう時期だった。全部が新しくて、眩しくて、新書の匂いがしていて、教室も上履きもロッカーも下駄箱も、すべてが新入生のために用意されたおあつらえ向きで。ここに自分の匂いとか、こだわりを詰めないといけなくて。教室でも、部活動でも、スタートダッシュをうまく切る人が、眩しく見える。

そう思うと、1人で帰る子を抱きしめたくなった。もしかしたら積極的孤独かもしれないし、消極的孤独かもしれないけど、なんでもいいから抱きしめたくなった。

かつての4月の私が、そこにいた。かつての4月の私もそうだった。

なんでもかんでも斜に構えちゃって、「けっ!」みたいな態度を心の中でとっていて、「平気だし!」みたいな顔をしていた。全然平気じゃなかったし、友達になりたかったし、話しかけたかったし、仲良くしたかったのに。

スタートダッシュ、いつも失敗してたな。

だから社会人になって、そんな4月がやってこないことに少しだけ感動したんだ。もういいやって思える自分がいて、積極的孤独を謳歌している自分がいることに安堵した。

”終わりよければすべてよし” になれましたか?もし、そうだったら嬉しいなあ。あなたの1日を彩れたサポートは、私の1日を鮮やかにできるよう、大好きな本に使わせていただければと思います。