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「そう」とだけ返す相槌に込められた配慮

そうですね、最近の楽しみといえばTVerで3月31日までの期間限定でアーカイブ配信が始まった「大豆田とわ子と三人の元夫」を見ることです。もう、暇さえあれば「大豆田とわ子と三人の元夫」。移動の電車のなか、スマホを横にするのはゲームしてるとか、動画を見てるとかが明らかな感じがしてちょっと抵抗感があったのだけど、そんなことも気にせず「大豆田とわ子と三人の元夫」。リモートワーク中のお昼、いつもならヒルナンデス!を楽しく見ていたのだけど、ここ最近は「大豆田とわ子と三人の元夫」。片手間開いたら「大豆田とわ子と三人の元夫」。レンチンまでの2分30秒であっても「大豆田とわ子と三人の元夫」。こんな感じですよ、最近の私はといえば。

見れば見るほど、ほんとうに素晴らしいドラマだなと思う。だけど2回、3回と見ていると、坂元裕二さんお得意の会話劇のほうよりも、相槌のほうに目がいくようになる。主人公の大豆田とわ子をはじめ、登場人物たちは相槌が極端に短い。嫌なことを言われていたり、気になることを言っていたりするのに、相槌が簡素なのだ。

例えば、大豆田とわ子の親友である、かごめが「自分の人生に恋愛はいらない」という話をしている場面。かごめは言う。

恋愛が邪魔。女と男の関係が面倒くさいの。あたしの人生にはいらないの。そういう考えがね、寂しいことは知ってるよ。実際、たまに寂しい。でもやっぱり、ただただそれがあたしなんだよ。

大豆田とわ子と三人の元夫(第4話)

大切な親友から、恋愛観を吐露される。そんな場面があったとしたら、きっと私ならいろいろ言ってしまう。特にかごめは、とわ子から見ると、わざと一人になりたがっているようで、直前に誘われた男性との食事を連絡もなしにほっぽってしまっていた。そんなかごめとの会話、とわ子はかごめの話にこう言う。

そう。

大豆田とわ子と三人の元夫(第4話)

ただ、それだけ。「なんで」とか、「そんなこと言わずに」とか、「でも」とか、じゃない。「そう」と、たったそれだけ。否定もしないし、肯定もしないし、深堀もしない。

たった2文字だ。だけど、大事な場面においてその相槌を出すことの難しさを感じる。

他にも、私が言われていたら思わず「なんで」とか、「でも」とか、「いや、ちょっと待って」とか言ってしまいそうな場面で、「なるほどなるほど」「うん」「そっか」と簡素な相槌で返す。話を聞いていないわけじゃないし、何も感じていないわけじゃない。なのにそれだけの相槌、自分が何も言わない配慮をじわじわと感じて、また繰り返し見てしまうのだ。

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