見出し画像

タスマニアでワイン作り〜ここに来た理由〜

こんにちは。現在、私はタスマニアでワイン作りをしています。今回は、なぜここに来るに至ったかを記します。

オーストラリアワインとの出会い

ワインに興味を持ったのは、オーストラリアのパースに住んでいたときに、ワイナリー巡りをし始めたのがきっかけです。オーストラリアでは、食事と一緒に楽しむのはワインが一般的で、レストランでも家でも、毎日のようにオーストラリアワインを飲むようになりました。日本では、殆どオーストラリアワインを飲んだことがなかったので、美味しさに衝撃を受け、どんどんワインが好きになっていきました。

パースには、車で市内から20分ほどの場所にスワンバレー、2〜3時間南に行くとマーガレットリバーというオーストラリアでも屈指のワイン名産地があります。そのため、週末やホリデーにはワインテイスティングやランチを食べにワイナリー巡りを楽しみました。

初めにワイナリーを訪れた時は、ヴィンヤード(ブドウ畑)の美しさに圧倒されました。オーストラリアのワイナリーでは、ヴィンヤードのすぐ側にセラードアがあり、ワインをテイスティングして購入することができます。また、レストランが併設されていることも多く、ワインとのペアリングランチを頂けます。整然と並んだ美しいブドウの木たちを見下ろしながら、ワインやチーズプラッター、食事を愉しむ時間はまさに至福の時。

sandalford wines セラードア
sandalford wines
セラードア併設レストラン
セラードアで試したワインをランチと共にいただきます
Pike&Joyce @アデレードヒルズ
ワイナリーのレストラン
5コースに、ワインをペアリングします


ワインの国際資格WSETの勉強

ワイナリーでは、ワインのスタイルの違いや作り方などを説明してもらうのですが、基礎的な知識がなかったので、あまり理解することができないのを歯痒く感じていました。
もっと内容を理解したいと思い、体系的にワインを勉強できる方法がないか調べているうちに出会ったのがワインの国際資格WSET。イギリスに拠点を置く教育機関で、ワインの認定試験を実施しています。世界中にスクールや認定教育者がおり、授業を受け、試験に合格すると認定証とバッヂをもらうことができます。

Level3になると、マークシート式の選択問題の他、記述問題、ティスティングの試験全てに合格をする必要があります。私はなぜか1ヶ月の集中コースにしてしまい、毎日半泣きで6~8時間くらい勉強することになります。笑
Level2のバッヂ

Level 2、次いでLevel 3の取得しました。Level 3 の難易度は、日本の資格で言うとソムリエやワインエキスパートと同じくらい、と言われています。Level 3の後は2年間のDiploma(学位)、その次は最高位のMaster of Wineはまだ世界でも400人しかいません。
私の先生はMaster of Wineの候補生で、世界中の産地を飛び回ってワインの勉強をしているのと、パブを経営していたので、幅広いワインをテイスティングすることができました。WSETの勉強を通じて、品種や産地による特徴、栽培から醸造の方法、ワインの評価の仕方まで一通り理解し、ワインライフが益々楽しくなりました。

セラードアでの体験から、生産者への尊敬と憧れ

パースにいる間、WSETを勉強しつつ、色々なオーストラリアのワイナリーに訪問する機会がありました。特にバロッサバレー、マクラーレンベール、アデレートヒルズ、ハンターバレーなどの産地では、セラードアでのティスティング体験が印象的で、これが生産者への尊敬と興味に繋がっていきます。

パース近郊のワイナリーのセラードアでは、立席で、気になるワインを数種類試して買って帰る、というスタイルで、購買体験は非常にあっさりしています。対して上記の産地では、テーブルに着席し、6〜10種類のワインを一杯一杯説明を受けながらティスティングします。

どんな人がオーナーで、どんな思いを持って作っているのか。各ヴィンテージの天候はどうだったか。畑はどこで、どんな土壌か。ブドウの樹齢はどれくらいか。品種による違い。時にブドウを房を直接見せながら、情熱とユーモアを持って説明してくれます。セラードアの人たちは底抜けにフレンドリーで、ティスティングが終わる頃には、すっかり仲良くなっています。(そして、気づくと1ケース購入している。笑)

Shaw+Smith @アデレードヒルズ
Samuel’s Gorge @マクラーレンベール
品種のちがいをブドウで説明してもらっています

この時から、私にとっては、セラードアでの体験が、ワイン選びにおいてとても重要になっていきます。家に戻ってワインを飲むたびに、セラードアに訪れた時の景色や、彼らが話してくれたストーリーが思い出されるのです。この時から、目の前のワインの品質だけでなく、さらにその先の作り手に対する興味が高まっていきました。

ワイナリーで働くという選択肢

思えば、素晴らしいワインに出会った時、「なぜこのワインはこんな味わいなのだろうか」という疑問を持ったことからこのワインの旅がスタートしたと思います。

WSETの勉強をすると、例えば、シャルドネの白ワインからバニラや、トーストや、煙っぽい香りがしたら、これは樽熟成をしているからだ、という回答を導き出すことができるようになります。

ただ、いくら教科書や書籍で勉強をしても、「なぜ樽熟成させたのか?」という疑問は、答えることができないのです。真意は、作り手にしかわからないからです。酸度を抑えてまろやかにしたかったからかもしれないし、テクスチャーのしっかりしたワインを作りたかったからかもしれない。シャルドネでも全く樽を使わず、ステンレス製のタンクで保管し、ニュートラルな味わいのワインを作る人もいます。結局のところ、味わいは作り手の考え方次第なのです。

感動するようなワイン出会うたび、なぜ?が増えていき、この素晴らしい味わいのワインを作り出している生産者のことをもっと知りたい。そしてワイン作りの現場で何が起こっているかをこの目で見て理解したい、と思うようになりました。

美食とワインの島、タスマニア

どうせ行くならば、自分が好きな品種で、高品質なワイン生産しているところ。タスマニアといえば、オーストラリアの中でも美食と高品質のワインで有名です。品種としても私の一番好きなピノノワールが多く生産されている。また自然環境の美しさにも惹かれ、タスマニアにターゲットを絞りました。

実は、昨年末のニューイヤーホリデーにタスマニア一周の旅行を計画していましたが、事情があってキャンセルになりました。
その時にリストアップしていたワイナリーに「食べ物と寝るところを提供してくれれば無給で構わないので、ヴィンテージの間だけ、働かせてもらえないか。」と片っ端からコンタクトしたところ、受け入れてくれるワイナリーがあったので、こちらに来たという背景です。

今思うと、無謀でクレイジーな試みです。ただ、自分の年齢や家族の事情などを鑑みると、今、このヴィンテージがラストチャンスかもしれず、挑戦しなかったら後悔する!と思いました。やる後悔よりやらない後悔!

このワイナリーとは、InstagramのDMでのやり取りと、1-2回ほど電話をしたくらいで、前情報があまりなく、具体的な仕事内容や、生活の様子なども分からなかったので、不安でした。

実際に来ると、ワイナリーの家族の一員として受け入れてもらい、素敵な人たちに恵まれ、色々な畑仕事やワイン作りの工程に関わることができ、楽しい毎日を過ごしています。何より、タスマニアのワイナリーで生計を立てている人たちと共に暮らし、食事を共にし、いろいろなことを一緒に経験することで、彼らの価値観やライフスタイルに触れることができ、すごく面白いです。

今後も、残り少ないヴィンテージ期間になりますが、色々と記事をアップロードしていけたらと思います。Instagramのリールにもワイン作りについて上げていますので、そちらもチェックいただけたらと思います!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?