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病気に共通した「仕組み」をイメージできるようになろう③

病気のパターン②血流障害

これまでの「ざっくり医学を学ぶシリーズ」で、最初に学んだのが「循環器系」でした。そう、全身の細胞に酸素や栄養素を運ぶのが循環器系でした。

酸素がリアルタイムに運ばれ続けないと、細胞はエネルギーが作れなくなり、役目を果たせなくなります。そして、やがて死んでしまうのです。ざっくり覚えておくべき病態は3種類あります。

「ショック」
「虚血」
「うっ血」

です。ここはとても大事なので、ちょっと突っ込んだ内容にはなりますが、できればついてきて欲しいところです!

ショック(物流システム全体の機能不全)

この「物流システム」たる循環器系が機能不全になると、直ちに命に関わります。理由はともあれ物流システムがうまくいっていない状態を、ざっくり医学的に「ショック」と呼びます。直ちに原因をなんとかしないと死に至る危険な状態です。


虚血

一方、「交通網」である血管が局所で詰まる病気もあります。有名な例では「心筋梗塞」や「脳梗塞」です。これらは、心臓や脳などの臓器に張り巡らされた栄養血管が何かしらの原因により「閉塞」してしまうことで、その血管が担当している領域の細胞が壊死に陥ることを言います(「梗塞」は血流障害による細胞死のことです)。

もちろん、どんな臓器でも「○○梗塞」というのは起こります(腎梗塞など)。心筋「梗塞」や脳「梗塞」が有名なのは、これらが重大な病気であることに加え、「血流障害に弱い」という特徴も関係しています。

タイトルの「虚血」というのはどういう意味でしょうか?

「本来血流があるべきところに血流がいかない状態」をざっくり「虚血」と呼びます。血流が途絶えることによる病気は「虚血性〜〜〜」という風に呼びます。

具体的には「虚血性心疾患」「虚血性脳卒中」「一過性脳虚血発作」「虚血性腸炎」みたいに名付けられます。これらの病名に入っている「虚血」というコトバから、血流障害による酸欠なんだというざっくりとしたイメージが浮かべば、あなたの病気に対する理解は一気に上がります!

いずれも、血流障害による「虚血」が心筋に生じている点では同じ。虚血が強すぎると、心筋は壊死に陥る。この現象を一般的に「梗塞」と呼ぶ。

「うっ血」

この「物流系」の障害には「うっ血」という現象も起こります。これは「物流システムの渋滞」です。

道路はどこかで事故があると渋滞しますよね。血流も、どこかで血流が滞ると、渋滞を起こしてしまいます。その血流渋滞を「うっ血」といいます。

血管は伸び縮みするため、ある程度の渋滞には耐えられますが、ひどい渋滞を起こした場合は、血管内がパンパンになってしまいます。血管には、酸素と栄養をやり取りできるよう、小さな穴がたくさん空いています。そのため、圧が高まりすぎると、小さな物質や液体は血管の外に逃げ出てしまうのです。うっ血により血管の外の部分(間質と呼びます)に液体が溜まってしまった状態を「浮腫」と呼びます。

全身の血流が悪い例が「心不全」という状態です。心不全の患者さんでは両足がむくんでいることが多いですが、これは典型的な「浮腫」の例です。慢性的な血流渋滞が起こっている証拠なんですね(心不全は、どこかで血管が詰まっているわけではありません。心臓のポンプ機能が何かしらの原因でうまくいっていないため、血流が滞っている状態をイメージしてください。)。

高速道路のように、どこかのルートで事故渋滞があっても、別のルートで迂回することもあります。これを側副血行路と呼びます。とはいえ、それらの「ルート」にもキャパシティがありますから、それを上回る渋滞が起これば、「うっ血」が起こります。「渋滞の原因じゃないところ」の血管がパンパンに張ってしまうこともあります。この部分は「へぇ」くらいに知っておいていただければ嬉しいです。

参考記事


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