見出し画像

ジョグについて(技術編)

先日のチーム練習後に、とある方から
「次はジョグの技術的な部分について記してほしい」との要望を頂いた。
合間を縫って密かに書き綴っている簡素なnoteにも関わらず反響を頂けるのは大変ありがたいと感じている。
前編後編と併せて、今回の内容も私なりの経験と考察によるものだが一読いただければと思う。


ジョグ(ランニング)の技術

ランニングにおける技術とは何だろうか。
例えばテニスや野球など、ラケットやバットを操る球技系のスポーツはテクニカルな要素が占める割合が多く具体的な技術を想像しやすいが、ランニングに関していうと基本的に身体1つで走り続けるシンプルなスポーツだ。
それ故に、他の競技よりも技術観点が比較的軽視されがちだと感じる。
私自身も学生時代の10年間は球技系スポーツをやっていたので、経験則からも猶更そう思うのかもしれない。

しかし、ランニング動作にもテクニカルな要素は確実に存在する。
とりわけ長距離を「速く・安定して」走る上では、極力少ない力で身体を前方に運び続けるための物体移動スキルが求められ、日々の練習でそれを磨いていく必要がある。

技術的な要素

「腕の振り方」「接地の方法」等のいわゆる走り方を聞くと、それは人それぞれで正解は無いという答えが返ってくることが多い。
確かに骨格や筋力・体格・脚や腕の長さなどは十人十色なので、見た目のフォームそのものに関していえば正解は無いとは思う。
実際、国内外トップレベルのランナーの走行フォームも様々だ。

但し、端から見たフォームとは別の主観的技術に関しては多くのランナーにとっての共通解があると考えている。
以下は一例に過ぎないが、私が日々念頭に置いておりスロージョグやレースペースどちらでも共通する内容なので参考になればと思う。

①腕振りと脚回転の同調

基本的に腕の動きと脚の動きは確実に連動する。
腕を回せば脚も回る、腕を前後に振れば脚も前後に動く、腕の振りが大きくなれば脚の動きも大きくなる、腕振りが力めば脚も力む、といった具合だ。
これを前提に、腕の動きの方向と大きさ、振り方を調整して理想の脚運びに繋げていく。
逆に、腕の動きを無視して最初に脚の動きから入るのは最も良くない。
例えば股関節をしっかり使い腿を少し上げて走る場合でも脚から入るのではなく、まず腕の動きから修正して自然に脚が正しく出るようにする。
腕振りを起点として上半身を正しく使えていれば、脚は勝手に正しく回ってくれる。

腕を振る位置(高さと前後の位置)は、その人が最も力を抜いてラクに振れるポイントで良いとは思う。
経験上、リラックスできる範囲内でなるべく高い位置で腕を振るほうが腰高をキープしやすいが、この辺りの感覚は個人差が大きいかもしれない。

②お腹の位置を高くする

腕振りの位置とも連動してくるが、お腹の位置を高くすることで自然と上半身を中心とした走りになる。
特に体幹の力が抜けやすい人や猫背になりやすい人、腰が落ちて脚で踏ん張ってしまいがちな人は、お腹を高い位置にキープするだけでも走りの感覚がかなり良くなると思う。
お腹を高い位置で長時間キープして走り続けるにはそれなりの体幹力が必要だが、日々のジョグで意識することで徐々にではあるが体幹も自然と鍛えられていく。

③一定のリズムで走る

日々のジョグであってもレースでハイペースを維持する場合であっても、力で身体を運ぶのではなく一定のリズムで走り続けることが大事だと考えている。
また、上述の腕振りは安定したリズムを生み出すためのものでもある。
良い姿勢で一定のリズムを維持する技術も、日々のジョグで磨き上げることが十分可能だと思う。

④足裏のリラックス

接地の入口である足裏が力んでしまっていると接地衝撃を脚全体で受け止めてしまい、地面を掴んでしまう。
恐らくこの時に脚の回転も一瞬止まり、せっかく得た地面からの反力が消されることになる。

例えるなら、上から落としたスーパーボールが地面で一瞬止まってしまうイメージだ。
こうなってしまうと自分の力でキックしないと推進力を得られないわけだが、その繰り返しにより必要以上に相当なエネルギーを使ってしまい、長く速く走り続けることが困難となる。
足裏をリラックスさせることは非常に大事な要素だと言える。

⑤目線

意外と見落とされがちなのが、目線の方向。
基本的に人間の身体は目線を向けた方に自然と進んでいく。
スキーやスノーボードをイメージすると分かりやすいと思うが、直進する時は前方を見て、カーブする時には曲がる先の方向に目線を向ける。
この時に転ばないようにと足元に視線を向けると、逆に全身のバランスが崩れて転んでしまう。

恐らくランニングに関しても同じことが言える。
特に人の後ろに着くと自然に走りが安定するのも、この時に目線が上下左右にブレずに安定しているからだと思う。
その結果、推進力のベクトルが安定して良い走りに繋がる。
日々のジョグにおいても目線を安定させることは大事である。

質の高いジョグ/低いジョグ

「質の高いジョグ」という言葉をよく耳にするが、色々な人と会話する中でなんとなく要約すると「速いジョグ」とほぼ同じようなニュアンスで使われていることが多い。

但し、「ペースの速い/遅い」と「質の良い/悪い」をそのまま結び付けてしまうのは少々乱暴だと感じる。
いくらペースが速くても動きが悪かったり、それこそ力みでペースを生み出すようなジョグはお世辞にも質が高いとは言えないし、逆を言うとかなり遅いペースでも走りの感覚を磨き上げるための動きが出来ていればそのジョグは十分に質が高いと言える。
キロ何分何秒という表面上の数字に惑わされず、最も良い感覚でのジョグを積み重ね続けることが大事だと考える。

ジャンクマイレージ

ジャンクマイレージという考え方があるのをご存じだろうか?
要約すると以下のようなものである。

ジャンクマイレージとは、ペースが遅すぎてトレーニング効果がないにもかかわらず、接地の衝撃を増やし、時間を無駄にしてしまうトレーニングのことです。

出典:​ウェルビーイング株式会社公式ウェブサイト

ランニングのみならずロードバイクの練習でも浸透しているとのこと。
個人的な見解としては、そのマイレージがジャンクになるかどうかはペースそのものというよりも、上記で述べたような走りを磨くための技術的な要素が欠落していないかどうか、だと感じる。
(ウォーキングに近いような余程の遅いペースであれば話は変わるかもしれないが。)
基本的にどのような速度帯であってもポイントを押さえて走っていれば決して無駄にはならないと考えている。

最後に

今回、走りの感覚を磨くためのジョグという内容で幾つかのポイントにフォーカスしたが、最も大切なのは「日々試行錯誤しながら最も良い感覚を探ること」、そして最終的に「良い感覚の動きを無意識のうちに出来るようになること」だと感じる。

日々意識する動きが無意識のうちに自然と出来るようになった時に、更にワンランク上の走りがレースでも出来ると考えている。
もちろん私自身もまだまだ走りの感覚を磨き上げていく必要があるので、引き続き日頃から質の高いジョグに励んで行きたい。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?