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文化庁著作権課「AIと著作権に関する考え方について(素案)」の意見募集について。



文化庁著作権課「AIと著作権に関する考え方について(素案)」の意見募集が行われました。

そこで私はパブリックコメント提出のために2回に分けで文化庁の素案を理解するための記事を作成しました。

その後私はパブリックコメントを書き上げ、柿沼太一弁護士との相談し訂正を加えて提出しました。

せっかくここまでパブリックコメントに注目したことなので提出したパブリックコメントの内容をここで公開します。

実際に提出した内容は2000字に合わせるために多少増減させましたが、中身に変わりがありません。

まず始めに、貴重なお時間を割いていただき、深く感謝申し上げます。私は、生成AIの学習モデルの開発を個人で行っているAI開発者であり、同時にAI生成物を用いたアートの公開も手掛けるクリエイターとして活動を行っています。また、現行の著作権法に関する知識の普及にも努めております。このような多岐にわたる経験を通じて、「AIと著作権に関する考え方(素案)」における疑問点や問題点について、自らの意見を表明したいと思います。

僭越ながらこれから「AIと著作権に関する考え方について(素案)」についての私なりの
意見を述べます。その中で特に主張したいのは「データベースの販売に伴う措置、又は販売の準備行為」の解釈の撤回・削除の要求です。

【 「非享受目的」に該当する場合について】
(イ)非享受目的と享受目的が併存する場合について、「近時は、特定のクリエイターの作品である著作物のみを学習データとして追加的な学習を行うことで~」以下について
当該作品群に共通する創作的表現(表現上の本質的特徴)とは何のことを指しますか、具体的な例をあげて明確化してほしいです。自分の解釈では例えばキャラクターなどが該当すると思います。作品群にはキャラクターの図柄という共通の創作的表現を有する場合を指すことを想定しています。同一の作者の作品群にはこのような主要なキャラクターの図柄など共通した創作的表現が存在しますので、この部分が機械学習で生成物に表現上の本質的特徴を直接感得できる形で現れることが考えられます。また、作品群の創作的表現の部分が一般人にとっては判別しにくいのでここの不安を解決してほしいです。
 
【著作権者の利益を不当に害することとなる場合について】
(エ)本ただし書に該当し得る上記(ウ)の具体例について(学習のための複製等を防止する技術的な措置が施されている場合等の考え方)
データベースは情報の選択や体系的な構成に創作性を有するものが著作物として保護されると定義されていますが(著作権法12条の2)、データベースの一部を複製する場合にも両データベースの創作的表現の共通点を検討する必要があります。それを踏まえても資料に例に出された論文データや記事データのデータベースに著作物性を有するかは疑問です。ただデータを積み上げただけの論文や記事のデータベースに情報の選択や体系的な構成とった創作性が認められる可能性は低いと思います。解析用データベースとして提供されているものでもなく、データベースの著作物かどうか疑問なデータを含むウェブサイトを” robots.txt”入れれば但し書きに該当し権利制限の対象外になるといった解釈は間違っていると思います。
また、「データベースの販売に伴う措置、又は販売の準備行為」としての措置についてはこの解釈の撤回を求めます。明確性にかけた但し書きの解釈はAI開発者に対して委縮効果を生み出し、日本の大規模言語モデル(LLM)を始めとする生成AI産業の国際競争力を落とす結果に繋がります。これはひどい場合将来的なデータベースの販売に技術的な措置に” robots.txt”を入れただけで権利制限の対象外になるという解釈にもつながりかねません。そうするとEUのデジタル単一市場における著作権指令(DSM)と比較しても(学術研究目的または機械判読可能な手段での権利留保)よりも日本の著作権法の方が厳しくなると解釈もできますので、日本国内での生成AI開発が著しく不利になり、産業の発展を著阻害する結果を招きかねません。「データベースの販売に伴う措置、又は販売の準備行為」の撤回を強く申し上げます。
 
【その他の論点について】
ク 法 30 条の4以外の権利制限規定の適用について
AI開発に私的使用のための複製が適用されるケースについてもっと詳しく掘り下げてほしいです。例えば、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において AI 学習のために学習データの複製などの過程を経て開発された学習済みモデルやその生成物は私的使用の範囲を超えて公開や販売をすることが可能かどうか教えてほしいです。

最後に、日本が諸外国と比較して生成AI開発において圧倒的に有利な点として、「柔軟な権利制限」を設定したことが挙げられます。具体的には、AI開発のための機械学習に関する著作権法の立ち位置をあらかじめ明確に定めたことが顕著です。このような時代を見据えた先見の明を持って法整備を行った政府をはじめとする関係者の方々に、深い敬意を表します。さらに、資料において「また、生成 AI の利用を中心に据え、創作活動を行うクリエイターも出てきた。」と、私たちをクリエイターとして評価していただいたことに心から感謝を申し上げます。
現行の著作権法や文化庁の取り組みに対して否定的な意見を持つ人達もいらっしゃるかと思いますが、私はこれからも文化庁の方々等よる著作権制度の周知啓発活動の継続を切に望んでいます。

「AIと著作権に関する考え方について(素案)」に関する意見募集の実施について

 私の主張は4点です

  1. 当該作品群に共通する創作的表現とは何か?一般人が創作的表現を判別できるのか?

  2. 論文や記事のデータベースに著作物性はあると言えるのか?

  3. EUのDSMと比較して日本がAI開発に不利になること、「データベースの販売に伴う措置、又は販売の準備行為」の撤回。

  4. AI開発が他の権利制限対象になる場合、特に私的複製の掘り下げ。

 最も主張したかったデータベースの著作物性やEUのDSMとの比較は後から追加された議事内容見たら上野達弘委員がおっしゃっていたことと一致していました。
文化審議会著作権分科会法制度小委員会(第6回)
 やはり私ごときが考えることは専門家からしたら分かり切ったことであるということですね。

 このように私の考えた内容はあの資料を見たらだれでも感じるようなありきたりな意見でしたが、自分なりに意見の提示をしてみました。
 それでも柿沼弁護士との相談の結果、それなりにまとめて形にすることができましたね。
 パブリックコメント募集後に素案の内容が完成されたものが今後の文化審議会で提示されると思いますので、その時また資料の続きを作りたいと思います。


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