沈む船

「そんなことを言ったって聞いてもらえない」

「そんなことを言ったら波風が立つ」

「誰かに騙されているんだろう」


あなたは その

厳しい風が叩いていく波に押されながら

それでもなお

私にそう言っているのだ


「ただ、やめればいいんだよ」

「馬鹿にするな、と言ってやればいいんだよ」

私がそう言いながら伸ばす手を

あなたは水しぶきをあげながら

水面すれすれに最後の力をしぼって腕を振り

払いのけようとする


沈んでしまうよ

沈んでしまうんだよ


私は必死に叫ぶ

それでもあなたは半分笑いながら言う

「あなたは昔から変わり者だったもんね」と


同調圧力というものは

こんなにも激しい渦潮をつくるのか


考えさせない、という悪魔は

こんなにもパワーをもっているものなのか


おそらく

私は生き延びる

どんな砂漠でも

どんな川の淀みのなかでも

自分を信じた分だけ、生き延びる

自分で考えただけの日数はかせげる


あなたの手も取りたかった

あなたは分かってくれると思っていた


大地が割けて

波がいよいよ高くなるのに

あなたはまだ私を

昔の子供のままだと思っている


くるしいよ

助けたいよ

それなのに

波はせせら笑うように夜の闇をササササと抜けていく


むなしくて月を見上げる

月は哀しそうに私にうなずく

今しばらくの時を待てと

ただ銀色でうなずく








元保護犬であった愛犬がシニアとなりお空組となりました。まだまださびしい毎日ですが、これからも保護犬たちが幸せをつかめるように何らかの行動は続けたいと思います。愛ある作品も素人ながら作ってまいりたいと思っています。 お茶一杯分ほどでもサポートをいただけたら心から嬉しいです!