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女子ゴルフアニメ躍進の理由・ツアーへの提言

女子スポーツに関するアニメ・ゲームといった作品を愛して25年になる"HSP勢オタク"による「オタ語り」。

今回は、近年増加中の「女子ゴルフ」に関する作品が増えている理由について考察するとともに、実際の女子ゴルフツアーについての提言なども行ってみたいと思います。


「わいは猿や!」

かつては「ゴルフ」を扱った作品といえば、《藤子不二雄Ⓐ》先生による『プロゴルファー猿』があまりにも有名すぎて、年配の方にとっては「ゴルフアニメ」の代名詞的存在でもあったように思います。

2000年代になるとサンデーで《坂田信弘》先生が原作を務めた『DAN DOH!!』がアニメ化されたり、ジャンプで『ライジングインパクト』(こちらもNetflixで今年アニメ化予定!)が連載されたり。

「ワイルドなイメージ」だったゴルフも、少年誌の掲載で少し「爽やかさ」を帯びてきた頃合いではなかったでしょうか。

ちなみに、冒頭の見出しの「わいは猿や!」は『プロゴルファー猿』作中のOPでのセリフなのですが、文字面だと関西弁なのにイントネーションが標準語なのが引っ掛かる私は大阪府出身だからでしょうか(汗

令和のプロゴルファー猿?

さて、先述の『DAN DOH!!』がアニメ化されて以来、長らくゴルフを題材にしたTVアニメシリーズというのは影を潜めてきたわけですが。

2022年、なんと『女子ゴルフ』をテーマにした作品が立て続けにお目見えすることに。

その一つ目が、『BIRDIE WING』。
「旗つつみ」などの必殺技で一世を風靡した『プロゴルファー猿』を彷彿させるかのような、ド派手なショット『レインボー・バレット』を武器に、様々な美少女キャラクターが熱いゴルフ勝負を展開する、まさに『令和版プロゴルファー猿』(とSNSで話題になった)のような作風に、私も度肝を抜かれました。

また、Yostar Picturesによるオリジナル作品『空色ユーティリティ』。
こちらも上記の『BIRDIE WING』にほんの少し先駆けて、1話限りの作品としてTVアニメで放映後、Youtubeで無料公開。(現在も閲覧可能です!)

「活況!」女子ゴルフ作品!

さて、この4月からは新たに女子ゴルフ漫画『オーイ!とんぼ』がアニメ化され、さらに先ほど紹介した『空色ユーティリティ』もTVアニメシリーズとしての制作が発表になりました。

また、コミックスでは惜しくも昨年連載終了したものの、クラファンでの完結応援プロジェクトで見事にゴールを達成しアニメーションPVまで作られた《佐倉おりこ》先生の『すいんぐ!!』。

女子ゴルフ作品の従来のイメージを覆す、ゆるふわな雰囲気のイラストが斬新でした。

また、現在少年チャンピオンで連載中の女子ゴルフ漫画『フェアウェイの声をきかせて』。

高校女子ゴルフ界を舞台にした、ゴルフ好きの《椎葉裕巳》先生による青春・成長物語。
ライバル校のキャラクターも個性的で熱い展開に思わず手に汗握ります。

クラブセッティングはすべて実在ブランドというこだわり!

1998年頃から女子スポーツ作品を追い続けてきた私ですが、20年ほどの空白期間を経て、ここ数年で一気にブレイクした感のある状況に若干戸惑っております。

考察①「ゴルフ」は映像化と親和性が高い?

さて、ここからは私の仮説ですが、ここ最近、女子ゴルフ作品が増えてきた理由をいろいろと考察してみたいと思います。

まず一つ目は、アニメや漫画において「動き」という要素が非常に重要ですが、ゴルフはその「動き」が描きやすい。
つまり、製作者側の理由があると思うのです。

動画にする前段階の絵コンテから、ざっくりとした指定でもゴルフのスイングの場合、制作陣に伝えやすいというのは大きなメリットです。

野球やサッカーの場合、様々な動作を描かないといけませんが、ゴルフの場合は基本的に「スイング」と「パッティング」。
この2つの動きさえあれば成立します。

また、スイングにしても、もちろん個性的なゴルファーはいるでしょうが、通常の動きを逸脱したような極端なスタンスを取るゴルファーは少ないので、基本のスイングさえ書ければ、あとはちょっとしたアレンジで書き分けができるのではないでしょうか(私は絵心がないので、あくまで憶測です)。

考察②時代はジェンダーフリー。

ジェンダーギャップ指数が先進国でも相変わらず低い日本。
管理職や国会議員の女性の比率の低さは際立っていますが、そうした中でも女性活躍を応援したいという企業は増えています。

これは女子ゴルフに限らずなのですが、近年『ウマ娘』をはじめ、スポーツ作品そのものに対する女子アスリートの登場する割合が増えています。

女子スポーツ作品専門のブログを執筆している私の、「女子スポーツアニメ年鑑」を参照していただきたいのですが。

1998年~2013年までの15年間で、女子スポーツアニメのタイトルはわずかに「8」と2桁にも届きません。
しかし、2016~2023年までの7年で、なんと「28」と、半分の年数で4倍にも増えています

アニメの作品数自体が増えていることを加味しても、これはかなりの大フィーバーと言えるでしょう。

現実の女子スポーツにおいても、オリンピックでの女性の活躍が目立ちますし、かつてに比べると、女性がスポーツをすることに対する偏見が少なくなっていることも影響している気がします。

オリンピックにおける日本人選手のメダル獲得数を見ると,最近の夏季4大会では,いずれも男子選手のメダル獲得数が女子選手のメダル獲得数を上回るが,金メダルの獲得数は女子選手が男子選手を上回っている

男女共同参画局のサイトより引用

女子アスリートに対して大手スポンサー企業がたくさんつくのと同様に、アニメ・ゲームといった作品に対しても、自治体や行政、大企業などの社会的な支援が多方面から寄せられていることは間違いないと思います。

考察③そもそも、女子ゴルフツアーの観客数は男子ツアーより多い。

私は現実の女子ゴルフツアーもDAZNなどで観戦しており、特に「黄金世代」といわれる1998年生まれの女子プロゴルファーがツアーを席巻していた頃に、ツアーの観客数が非常に多くなっていたことを肌で感じておりました。

コースのホールまでの総距離が長くなるなど、より若手に有利になる昨今のゴルフツアーは、新しいヒロインが続々と誕生し、また華やかな見た目の選手などの話題性も手伝って、ツアーでの観客数は男子の2倍近い数字を叩き出す盛況ぶりです

2023シーズンの《櫻井心那》選手のような、10代でツアーを4勝するような生きのいい若手が次々出てくる現状は、まさに群雄割拠という様相で、今後も新たなヒロインが続々登場しては、いずれ海外に挑戦していくという、「ニューヒロイン製造工場」とでもいうべき現場に女子ゴルフツアーがなっていると言えるでしょう。

さらに、女子と男子の実力差が拮抗している。

観客数にも関わる部分ですが、ゴルフという競技は野球やサッカーに比べると、プレイ結果において男女の差がつきにくいスポーツです。

実際、「Hitachi 3Tours Championship」などの男女がチーム戦で競う大会などでは、過去にも女子が男子を何度も破っており、もはや「女子の方が強い」というレベルまで来ていると言えます。

競馬やボートレースなど、男女が同じ舞台で戦う競技も存在しますが、まだまだ女性選手は少ない状況。
それを考えると、女子ゴルフは「プレイ人口が多い」うえに「実力のある選手が揃い」、さらに「観客数も増える」という、国内スポーツでも女性が活躍できる素地がたくさんあることがいえると思います。

考察④若年層ゴルファーの増加

アニメやゲームといったサブカル作品は、やはり若い人たちに人気があります。

そして、コロナ禍で三密を避けられるという理由で、一時的に若年層ゴルファーが増加しました。

これは『ウマ娘』で若い競馬ファンが増えたこととも関連しますが、「女性」がプレイするようになった、そして「カジュアル」なイメージが広がったということが大きいと思います。

・若者世代におけるゴルフ人口の増加
ゴルフ女子の急増
ゴルフという競技のファッション性

https://www.stepgolf.co.jp/articles/1126

かつては競馬もゴルフも麻雀も「おじさん」がやるというイメージでした。

ところが近年、こうした「おじさん」のイメージがあったコンテンツのイメージを覆すための様々な試みが功を奏したのか、若手、とくに「女性」が積極的にそこに入っていくようになりました。

Mリーグで女子選手が活躍し、競馬番組で女性MCが予想をし、そしてインスタで「#ゴルフ女子」のハッシュタグを見かけることも日常茶飯事という昨今。

SNSにおける伝播力や、口コミにおける女性たちの影響力はすさまじく、そうしたポジティブな声が若年層にダイレクトに伝わった結果、ゴルフブームが到来し、さらにゴルフをプレイする際のウェアなどもカジュアルで魅力的なコーデができるアイテムが増え、コロナ禍が一段落した現在も、ゴルフ女子のブームが収束する気配はありません。

考察⑤ゴルフはオタクの味方

自分自身、女子スポーツ作品を追いかける身ではありますが、HSP勢&引きこもりを経験した、典型的な「動けない人」であります。

要するに、「スポーツは苦手」な私にとって、観戦するのは好きでも、実際にプレイするのはちょっと…と思ってしまうのです。

「オタクは運動が苦手」というのは過去の偏見にすぎないかもしれません。
しかし、やはりインドア派のオタクというのはやはり多いと思います。
家でゲームやアニメ鑑賞をする時間が増えれば、当然運動不足になります。

しかし、ゴルフは「運動神経がなくてもできる」スポーツといっても過言ではないと思います。

実際、2023シーズンの賞金ランキング4位だった《小祝さくら》選手だってインタビューでこう語っています。

小祝さくらは、自分ではかなりの運動音痴だと思っている。「体育は嫌いでした。美術と技術が好きだったんです。彫刻とか、いろいろ作ることが好きで。でもゴルフって運動神経、いらないと思います

https://www.golfdigest-minna.jp/_ct/17664566

「運動神経、いらないと思います」と言い切っている潔さ!
そう、スポーツが得意だからといってゴルフが上手いとは限らないのが、このスポーツの奥深さ。

いわゆる「リア充」型の人間より、むしろ「判断力・思考力」が問われる「オタク型」人間の方がゴルフには向いていると言えます。

短期的に考えて、すぐに結果を出すことが得意な「外向型」よりも、むしろじっくりと考えて、計画的に物事を進められる私のような「内向型」人間の特性が、18ホールという長時間プレイするゴルフには有利になるからです。

現代では、効率や素早く物事を処理することばかりがもてはやされがちですが、ゴルフでは「忍耐力」「長時間思考する力」「自然を読む力」という、現代人が疎かにしがちな要素をフル活用して臨む必要があるのです。

まぁ、私も打ちっ放しにちょっと行った程度で、実際にコースでプレイしたことは数えるほどしかないんですが…
でも、後ろで待っていたパーティーの見知らぬ方からスイングを褒めていただいたことが嬉しくて、私がスポーツで称賛を受けた数少ない経験ができたので、間違いなくゴルフはオタクに優しいスポーツだと思います!

女子ゴルフへの提言:機会は公正であってほしい

ここからは、女子ゴルフツアーに対する要望というか、提言なのですが。

まず、女子ゴルフにおける「推薦制度」について、年間の推薦回数というのは8回までと決まっているのですが、「人気選手」や「有力なスポンサー企業に所属している選手」は上限いっぱいまで推薦されるのに、そうでない選手は1回も推薦出場できないなんてことがあるので、ここは改善していただきたいです。

スポーツというのは、公平性があってこそです。
実力があるなしで線引きされるならまだしも、そうした「実力以外の」要素で推薦回数が決まってしまうのはちょっと問題だと思います。

私は、なるべく多くの選手をツアーで見てみたいので、もし関係者の方が見ていらっしゃったら、ぜひ改善をお願いしたいです。

そして、プロテストに関しても、現状「1年に1回の一発勝負」で決まってしまっています。
ツアーでは何試合もあるのに、プロテストだけ1試合の実力で決めてしまうのは些か乱暴ではないでしょうか。

先日の明治安田レディースでローアマを獲得した《都玲華》選手のように、コンスタントに成績を出すことができる実力がありながら、一回のテストだけでふるいにかけてしまうのは、結局はJLPGAにとっても長い目で見たときに利益をもたらさないように思います。

例えば年に4回、春夏秋冬に分散してツアー形式のテストを行って、4回中3回の成績の平均値上位をピックアップする、なんてやり方もアリだと思います。

いずれにしても、プロになるのに「テスト」がいるスポーツというのは、実は少数派です。
野球だってサッカーだってテニスだって、別にプロ選手になるのにテストを受けてきたわけではないので、現在のツアー会員の在り方についても、議論していただきたいと思っています。

パマちんがお礼を言いたいようです

※【メジロパーマー】の競走馬名はアメリカゴルフの英雄《アーノルド・パーマー》から取られた。


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