見出し画像

阪神淡路大震災 ~これから生きる世代こそ向き合うべき災害~

2020年(令和2)1月17日、阪神淡路大震災発生から25年。私も含めて「もうそんなに経つのか」と実感する方も多いのでは。私は発生当時3歳半だったため、当時の記憶はまったくなく、数年後にこの震災があったことを初めて知った世代。ある意味、震災後に生まれた世代と同じと思っている。

国内戦後では、東日本大震災に次ぐ死者数と被害規模となっているこの震災。25年という年月は決して短くなく、経験した世代の高齢化が進み次世代を生きる方への継承が課題だと前々から言われている。もちろん当時関西圏に住んでいない方に伝えるのも大切だが、一番伝えるべき相手は、これからの社会を担う10代~20代ではないだろうか。相次いで災害に見舞われやすいこの日本。この大震災は、決してスルーしてはいけない、知らないでは済まないくらい重要な出来事だ。


阪神淡路大震災を子どもでも簡単に学び知るなら

画像1

昨年11月、神戸市にある「人と防災未来センター」を初めて訪れた。ここは、阪神淡路大震災の当時の様子を写真・映像・展示物を通して後世に伝えながら、国内で起きる自然災害による被害を軽減させていく目的で2002年(平成14)に開館した。

建物は東棟と西棟に分かれていて、おもに西館に資料や展示物が集中している構造となっている。私ははじめに1Fで「震災学習プログラム」と題した、語り部による震災時の体験談を30分ほど聴講した。語り部から語られる言葉は決して作られた話ではなく、一言一句に重みがあり経験した人にしか語ることができない神戸の惨状・復興の様子が私の胸にガツンときた。

その内容の一部でもお伝えしたいところだが、やはり現地に行って聞くことで記憶に残りやすく初めて自分事と捉えることができると思うので、気になる方はぜひ足を運んでいただきたい。

4Fに上がると「震災体験フロア」となっており、映像や模型を使って当時の様子が再現されている展示内容となっていた。

私にとってはここが一番強烈なインパクトを受けたところでもあった。最初に「1・17シアター」と呼ばれる、地震発生時の5時46分の様子を再現した映像が7分間上映されるブースに入った。みるみる崩れていく家屋や高速道路の映像も強烈だったが、それ以上に強烈だったのが、

地鳴りや揺れているときの音、崩れていく建物の音が、例えることのできないただただ恐怖を感じる音だった。実際に自分の住んでいるところに直下型地震が起きてこの音を聞いたら、高い確率でパニック状態になるであろうと実感した。

その後も4Fには、神戸の変わり果てた町をジオラマ模型で忠実に再現していたり、神戸が復興に至るまでの様子を、これからの課題とともに15分程度のドラマで紹介する映像ブースがあったりと、どれも目白押しだった。

ほかにも2F~3F にかけては、当時の遺品が展示されていたり、発災直後の復興過程の生活や神戸の町の姿がパネル展示されているので、震災を知らない世代にとっては、とても勉強になるものばかりだ。1F~4Fすべてまわり合計で2時間ほど見学したが、すごくあっという間に時間が経ってしまったと感じた。


風化していい災害なんてない

25年と聞くと、だいぶ年月が経ったなと感じる人も多いと思う。でも歴史上での25年は、つい昨日のことと大して変わらないとこの頃感じる。なぜなら、当時の記憶を鮮明に覚えている人がたくさんいるからだ。

今回の阪神淡路大震災にも当てはまる。当時被災された方・親族を亡くした方のコメントを聞いても、25年経ってもここまで具体的かつ詳細に覚えていて話せることはある意味すごいことだなと。それは裏を返せば、経験者が鮮明に記憶している時に、当時の想いやつらかったこと、協力しあって乗り越えたエピソードなどを、言語化して音声や文字として記録していく必要があることでもある。

人間である以上、過去の記憶は年々薄れていくものだ。自然災害という負の出来事はある程度、長い間覚えている可能性が高いかもしれないが、早いうちに記録として残すのに越したことはない。経験した方の声を多くの方から拾い集め続け、これから生きる世代特に震災を知らない世代に向けて伝えることが、神戸市のこれからの課題だと思う。

私は今回初めて「人と防災未来センター」を訪れたが、阪神淡路大震災という災害があったことは知ってても、あの時の神戸の町がいかに過酷な状況だったのか、経験した方にしか分からない苦しみや葛藤を深く知ることがなかったので、いい勉強になった。これは学校の授業やテレビ番組では得られない情報が満載だったからでもある。

そういった意味では、この「人と防災未来センター」は、短時間でインパクトのある展示物に見て触れながら震災の本当の姿を知ることができる、とても意義のある建物であると感じた。個人的には、この震災を知らない世代を中心に、防災教育の一環としてここを訪れて知るべきだと思う。全体的に重たい内容であることは否めないが、南海トラフ巨大地震や、首都直下型地震が起こるかもしれない状況の中で、災害を自分事のように捉え、自ら守っていくためには、この阪神淡路大震災を知っていかなければならない。

過去にどういった災害が起きて被害を受けたか。その災害によって生活環境がどう変わっていったかを知ることで、これから起きるすべての災害に立ち向かうことができると実感する。知らない世代でも犠牲者を寄り添うことはできるので、一歩踏み出して知ることから始めていただければと思う。

知らない・無知・無関心の人を減らすためにも。


※人と防災未来センター公式サイト:http://www.dri.ne.jp/






サポートされた資金は、すべて取材費用に充て、質の高く共有されやすい記事を皆さまにお届けしたいと考えています。