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第3回 被災地域の中でも格差は起きてしまう(後編)

連載企画「震災から10年~現在地と着地点~」。第3回目は、「被災地域の中でも格差は起きてしまう」の後編をお送りする。前編では、南三陸町で活動していた時に町内でも支援の格差が起きている現実について述べてきた。後編では、支援の格差の現実を知ったことで、私たちができることを含めて改善すべき点を中心に述べていく。

積極的な情報発信がカギ

こうした被災地域内での支援格差は、残念ながらこれからも起きてしまうのが現実。マスメディアだって、限られた尺の中で被災地のすべてを紹介するのは、到底不可能。仮に12時間の特番を組んだとしても、被災地域の細部まで伝えるには明らかに足りない。

2018年7月に発生した西日本豪雨を例に話す。私は当時、広島県の東広島市でまちづくりに関連するお仕事していた。私の住んでいた地区は、土砂崩れが多数発生したり、のり面が崩壊しJRの線路が宙づりになったりと甚大な被害が出た。

自宅から徒歩15分ほどのところに避難所があり、私も訪れてみた。幸い、地域の方々の協力もあり、避難者に対しての物資量は十分に確保できていた。地域によっては、住民同士の協力で乗りきれることもあるが、被害規模によっては、長期戦になることも予想される。その点を考慮すると、余るほどの支援物資が届いているのが望ましいだろう。

話を戻すが、この問題を野放しにしたら、支援の届かない地域が減らないだけではなく、生活再建が困難になってしまう人が続出してしまう。

私自身、東日本大震災・西日本豪雨を経験して思ったことは、被災格差を減らすためには、我々から積極的に情報発信する必要があることだ。近年では、ネット環境はもちろん、SNSの技術発達によって、一般市民が気軽に情報発信ができる時代へとなった。この方法を活用することが、一番の近道だという結論に至った。

具体的な発信方法

飛躍的な解決方法までには至らないものの、その方法を1つ紹介したいと思う。それは、「報道機関のスクープ投稿の活用」である。

NHKや民放各局のサイトを見てみると、ニュースページのところに、スクープ映像の投稿はこちら(※注:局により表示名は異なる)といったボタンがある。そこから、自身で撮影した被災状況の写真や映像を投稿することだ。

実際に報道機関で働く方から聞いた話によると、「なるべく多くの被災状況を撮りたいが、人手が足りず多くを回るのが難しいのが現状。」と話していた。そうなると、格差が生まれてしまうのは当然だ。

実際のところ、スクープ投稿に送ることで、受け取った局の報道記者がチェックするようだ。私も西日本豪雨の際、JRの線路が宙吊りになった現場を撮影し投稿した。そうすると、送った局の記者から電話がかかってきて、現場周辺の詳細や映像の使用許可について聞かれた。それ以降、記者が現場に入って、町の被災状況をリポートしてくれた。

映像を送ったからとはいえ、実際の放送でどこまで使われるかは分からない。ただ、実際には送られた映像はすべて目を通しているようなので、送って損することはないはず。試す価値はあると思うので、ぜひご参考までに。

投稿がもたらした影響

映像を報道機関に投稿し、わずかな時間ではあるがテレビや新聞に被災状況が載ったことで、いい影響を受けたものが1つある。それが、ボランティアの参加者だ。

実際に私から、ボランティアに参加された方に、お話を伺った。参加された方の多くは、テレビのニュースを見て参加を決めたといった声が多数だった。中には、「JRの線路が宙吊りになった映像を見て、大変な状況にある地域を応援したいために来た」と話す方もいた。

影響を受けたのはわずかなかもしれない。しかし、1人でも多くの人が支援してくださることは、被災地域にとってはすごく助かることだ。誰でも情報発信ができるを武器に、被災地域の格差が解消できるよう願いたい。一人でも多くの命が救われるために。

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