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本紹介『小さな声、光る棚』

こんにちは、ぷりごろたです。
今日はまたエッセイを紹介したいと思います。

紹介する本はこちら📚
著者:辻山良雄
タイトル:小さな声、光る棚
出版社:幻冬舎

あらすじ☟

まともに思えることだけやればよい。
荻窪の書店店主が考えた、よく働き、よく生きること。
効率、拡大、利便性…いまだ“高速回転"する世界に響く抵抗宣言エッセイ。

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この本は読書会で知り合った方から紹介されたもので、素敵なタイトルに惹かれ、読みたい本リストに長く入っていました。
なかなか現物を見つけられずにいましたが、先日東京に足を運ぶ機会があり、本書の舞台でもある書店 Title さんで対面することができたのです。

著者の辻山さんはかつて大手書店チェーンで勤務され、44歳のときに自身のお店 Title を開業されました。
本書では、辻山さんの見る景色、本・書店の魅力、コロナ禍で考えられたこと、等々が約60編描かれています。

今回は印象に残った2編をご紹介します。

<貧しさ>について
ここでは辻山さんが書店を営む中で感じる、世のなかを覆いはじめた<貧しさ>について書かれています。
この貧しさはお金の話ではなく、本屋において知らない本に触ろうとしない人が増えたこと、など些細な出来事を指しています。

経済や効率が優先されすぎる社会で、多くの物事が切り捨てられた結果、人々の思考が単純化されているのではないか、と辻山さんは言います。
簡単に得た知識は忘れ去られるのも早く、人の内実を押し広げることはない、とも。

おそらく自分含め多くの人々が暗に感じている不安が、書店での行動の変化として表れてきていることには、ある種の驚きと実感がありました。

視覚的に分かりよい文章・図表や、インパクトの強い動画は、たしかに近々の問題を解決してくれますが、根底にある不安や悩みは燻っているように感じるのです。

そんな<貧しさ>に対し、辻山さんは興味を惹かれた本があれば手で触れてみることを提案されています。
触っているうちに紙の束は<本>として認識され、そうした未知の<本>がその人自身を豊かにする、と。

僕自身、子供の頃は手に触れてみたことから始まる出会いがとても多かったように思います。
もちろん自分が年を取ったこともあるでしょうが、便利になりすぎた時代だからこそ、自分の身体に立ち返らねばなと感じました。

伝えきれなかったこと
ここでは、本棚の前で思い悩む若者に対し、辻山さんがその場で掛けられなかった言葉が述べられています。

この若者は自分より優れた人がたくさんいることに不安を感じ、無為に時を過ごしてよいものか悩んでいます。
もちろん自分にも思い当たる節がありますが、これはどんな世代の方々も持ったことのある悩みではないでしょうか。

それに対し、辻山さんはこう述べています。

世の中にはすごい人、あるいはすごく見える人はたくさんいて、それと比べると自分なんて中途半端なものでしかない。

ただ、人間、続けてきたことしか身につかないのだし、
若いころの無駄に思えた時間が、今に活きる場合だってある。
(もちろん、生きてみないと分からない)

だから、声が大きな人をそんなに気にする必要はない。
ちょっとくらいぼんやりしているほうが、しぶとい感じで長持ちする。

これには、なんだか晴れ間が差してきたような希望を感じました。
自分に確固たる自信を持てる人というのは極めて珍しい人で、そうでない人は自分の不足を受け入れながら生きていく勇気が必要だろうと僕は思っています。
辻山さんの言葉は、そんな勇気を後押ししてくれるものだと感じました。

自分が10年以上続けてきたのは、小説と天体観測くらいです。
今の時代に照らすと、どちらもあまり役に立たないものなのでしょう。
それでもいつか活きるのかもしれないし、なにより楽しいので、なんとなく続けていこうかと思います。

それでは、また👋

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