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初恋 第19話

「いい? 同じタイミングで飛ぶの。スリーツーワーン!」
 ラメラが縄を高速で回し始めると、僕は縄の回転のリズムに集中した。彼女が跳ねるタイミングで飛んだ。しかし、縄が引っかからないためには、できるだけ彼女に身体を近づけなければならない。いきおい、二人は向かい合ったまま密着するような形になる。

ラメラの赤い唇や燃えるピンクの頬がすぐ目の前で上下した。僕の顔は、のぼせたように真っ赤になっていた。それが、縄飛びのせいか、心の動揺のせいかは不明だ。彼女の息や視線が僕の顔にかかると僕はますます狼狽えた。

初めは、すぐに足が引っ掛かった。僕はできるだけ早く縄跳びがうまくいくことを願った。緊張状態から逃れようとした。飛んでいる間彼女は息ひとつ乱さず、僕をじっと観察していた。意地悪な表情で。彼女にとって飛ぶことは歩くことと同じレベルだった。タイミングを掴んだ僕は一人でも飛べるようになった。できるようになった時、二人はハイタッチした。

その時、僕は感じたのだ。ラメラは以前のラメラではないと。彼女は目標を持って生きている。それは彼女の瞳にも現れた。以前のような、どこか頼りなげな優しそうな感じはすっかり消え、明確で、強靭な、でも快活な雰囲気を作っていた。それに、元来、社交的だったから、僕以外にも多くの友達がいた。バスケットボール好きなクラスメートはもちろん、先生ともよく話していた。彼女には軽さと強さと速さの武器があった。

僕が導いたお蔭で、彼女はかつての自分を振り返り、再び僕という存在を見直したのかもしれなかった。縄跳び以来、ラメラは、以前のように、僕の手を握ろうと口実––––それは問題を教わるという真っ当なものよりもっと直接的なやり方——「手に泥がついているよ」とか、「生命線見せて」––––を作って近づいて来た。彼女はやたらに握力が強かったから、僕は時々指が痛くなった。

僕の記憶はすぐさま、アメリの車中での仕草に戻り、ミンナのクリストフに対する気まぐれな感情を思い起こさせた。物語では、女性は外側も内側も複雑で一筋書きにはできないと定義されていた。僕は動悸が激しくなった。僕はまだ恋は未経験だが、知らないが故の大胆さがある。彼女に借りを返したくなった。彼女にお礼を言った後、続けて尋ねた。

「最近、勉強の調子はどうだい?」
「大丈夫よ。みんなが教えてくれるから。私、バスケットの選手になりたいの。だから算数は頑張らなくてもいいの」
彼女は僕の思惑を先回りしていた。
さらに、
「ジェッド。私とバスケットの勝負しない?」
「いいよ。今からかい?」
「一週間後ね。学校の体育館。そして負けたら相手のいうことを何でも聞く」
と言って別れていった。

次の日から、僕は、練習相手を探した。ラストがそうした方がいいと言ったからだ。
残念ながら僕の友達でバスケが得意なやつはいなかった。僕はラストに練習相手を頼もうとしたが、彼は頭の後ろで組んだ前足でお手上げのポーズをした。仕方がないので僕は一人で練習した。ラストはリングの上に乗って僕を眺めていた。

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