見出し画像

【詩】点描法

雨の日に
そっと訪れる
美術館
 
色が満ち
私を染めようとする
香りがする
その静謐な空間の入り口で
 
淀んだ黒い雫をぽたりと
落とし
畳んだ心の傘を
預けて
 
展覧会の代表作を刷ったチケットを手に取り
回廊を進む
 
ポール・シニャックの
絵の
前に立ち

一歩退く

すると
 
見えてくるのは
絵の上に映し出された
もう一人の
わたしの肖像
 
あなたも
わたしに倣って欲しいの
 
でないと 焦点を
合わせられない
 
わたしの伝統と
わたしの今と
 
わたしの心臓の
鼓動に
 
それはもう
点じゃない
 
色彩も
タッチも
 
それを見た記憶も
 
もし わたしを
あなたの絵の中で
二重像にするのなら
歓迎するわ

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?