夏の夜の野原

ベッドの下をクイックルワイパーで掃除する。

ごそごそと奥まで挿し入れて、すいっとこちらに引いた瞬間に、ころんと何かが転がり出てきた。
よく見ようと近づいて、ひっ、と思わず飛び退く。呼吸が荒くなり、思わず両手で押さえた心臓がドキドキと波打つ。

これはたぶんねずみの内臓だ。

しかもふたつ、大きいのと小さいの。
よくみると小さい方はもう乾燥してドライ内臓になっており、大きい方はかなり新しく生っぽい。
色や形をみると、ふたつとも同じ部位であることがわかった。
机の上にテッシュペーペーを二枚重ねにして置き、その上にふたつを乗せると、新しい方には透明なシミができた。

動悸が治まってきたので、観察する。
まだ原形を保っている大きい方を見てみるとまるで、頭が小さく胴体が丸々としているミジンコのような形。これで一個の生き物のようにも見える。頭の部分と胴体の部分、これはふたつの臓器が連なっているのだろうか。頭にはちょうど帽子をかぶせたような格好で、茶色い小豆大の部分がある。

全体は薄い透明な袋状で、中には緑色の細かいお茶がら状のものが詰まっている。
手であおいで匂いを嗅ぐと、発酵した青草のような匂いがする。
ねずみは草も食べるのか?検索してみると、「雑食性なのでなんでも食べる」とのこと。
以前飼っていたハムスターは、動物性たんぱく質を異様に欲してわたしの指を食べようとしたのでうなずける。

グロテスクな見かけの割に、夏の夜の野原に寝そべったときのような匂いがする。そんなことはしたことがないけれど。

この匂いが癖になって、何度も椅子から体を起こして嗅いでしまう。

窓の外では、夜のカエルが鳴き始めている。


2016-05-02

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