最近の記事

自然教室

自然教室の朝、7時に集まって朝礼を行った。体育館の三分の一ほどのホール。すぐそばの森の遠く深くから、かすかに聞こえる鳥の鳴き声。暖かくも眩しい木漏れ日が、ホールの床に反射してきらきらと発光する。正面に向かって両側、一面に広がる窓は全て開け放たれ、新鮮で軽い空気になんとか意識を起こされながら、生徒たちがのそのそと自分の席に着く。いつも同じ制服のみんなの、見慣れない私服姿。先生たちもいつもとは違って、そんなことにも心がふわふわと心地良く踊る。人数分きっちり並べられたパイプ椅子に名

    • パーカー

      ―パーカーを着るタイミングはいつなんだろう。 洒落た英語のロゴが入ったTシャツ。ローファーの踵がない、つっかけみたいなサンダルに、芸能人のような黒いサングラス。スターバックスが似合いすぎる長身の青年が、スマホを操作しながらノールックで、少し進んだ列に合わせて一歩進む。彼の背中の、少しマンホールのようなロゴを見つめながら、家に眠るパーカーを思った。数か月前、スタイリッシュなフォルムに目を輝かせ、自分用に購入してまだ一度も着ていないパーカー。ジップパーカーと呼ばれるらしい、被るの

      • 敗因

        「ICカードを、挿入してください、ICカードを、」 ピーっと機械的に吸い込まれていったICカードを、数秒の間を使って機械が読み込む。タッチパネルの端に指先を引っ掛けて安定させ、2000円を親指と人差し指で挟み、さらにあと一秒もしないうちに表示される「2000」の位置に、空いた中指をスタンバイする。自分ではそこまでせっかちではないと思うが、これだけは慣れのせいかいつもやってしまう。 財布と定期入れを三本指で挟んだまま、袖を振って腕時計を確認する。7:12の新快速にはまだ5分ある

      自然教室