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【英語本】『英語達人列伝』(中公新書)と斎藤兆史先生 in Okayama【ブックレビュー】

新渡戸稲造、岡倉天心、斎藤秀三郎、鈴木大拙、白洲次郎といった明治〜昭和に活躍した英語達人のスケールの大きなおもしろエピソードと英語学習法を紹介してくれる2000年刊行の新書本。各人物紹介のはじめに斎藤兆史先生手ずから描かれたビゴー風(?)の肖像画がお茶目。昨年、続編の『英語達人列伝II』が出されたことでも記憶に新しい。

国連英検特A級を目指す教育者の末席も末席に連なる私としては、国際連盟事務次長まで務められた偉大なる先達、ミスター五千円札、新渡戸稲造大先生の章はとりわけ身に沁みる。

「彼は英学を修めて西洋かぶれになることなく、またその反動として偏狭な国粋主義に陥ることなく、西洋から見た日本、日本から見た西洋を公平に描き、お互いになにを学び合えばよいかを示唆したといえよう。」

また新渡戸稲造の章の冒頭に、18歳の若き彼が感銘を受けたカーライル『衣服哲学』の冒頭部分が「教養課程の英語教材として読ませようものなら、学生はもとより同僚の冷たい視線を覚悟しなければならない」難易度として紹介されているが、これは薬袋善郎先生の『基本文法から学ぶ英語リーディング教本』における総仕上げ的な巻末部に引用・解説されているものでもあり、とても興味深かった。

本書で挙げられる達人たちの勉強法に共通するものを言えば、良質な英文の大量インプットと時宜を得たやはり大量のアウトプット、というなんとも身も蓋もない話になるけども、現在よりもはるかに厳しい学習環境において圧倒的な熱意と努力でネイティヴに伍する語学力を身につけた彼らの気宇壮大なるエピソードの数々は、現代の私たちのやる気をも鼓舞する力を持っていると感じた。

そんな斎藤兆史先生が昨年(2023年)の夏頃、我が大都会岡山随一の某進学校のために講演に来られたことがあった。なんと有難い。私が拝聴したいくらいです。

ところがその講演に出席していた私の教え子によると、まー、なんというか、ろくすっぽ話も聴かず、あられもなく寝さらしている奴らばっかだったらしい。あげくの果てに御講演の後の質疑応答一発目の質問が、先生は何の食べ物が好きなんですか?だったとかなんとか。もったいない。その席を私に譲れと。まあ、引率していた英語科の教師も大股開いて眠りこけていたらしいから状況は推して知るべしだけれども。。

ただ本書でも斎藤先生は大学の授業で「相当な根気と英語力」を必要とする荘重な文体で書かれた騎士道小説『アイヴァンホー』を講読して出席者を激減させたエピソードなどを披露されているから、この講演の中身もひょっとしてアレな感じだったりしたのかも、などど思ってしまったりも。。

あ、もちろん本書自体は、退屈なところなど少しもない、読みどころ満載のとっても刺激をもらえる新書となっております!

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