焦燥の波


声が聞こえない。

声が聞き取りにくい。

声についていけない。


昨日、久しぶりに研究室に行ったが、

聞き取り能力、言葉の処理能力の衰えに、ふと今朝気付く。


確かに、1か月くらい、家族以外の人とほとんど話していない。

だけど、母国語なのにな、と少し落ち込んでいる。


特に、物理現象としての"音"の聞き取り(音としての認識)はできるが、

それを、相手の意図を踏まえた意味のある言葉へ変換できない。

相手が、「こうしたい!」「こうしたらどう?」

という言葉の中にある、相手の意図がすぐに処理できない。


これまでに、こういうことが無かったわけでないが、

昨日は、なんだか、半分パニック状態だった。


聞きたいのに聞こえない。

理解したいのに理解できない。


どんどん恐怖心が募っていくばかりだった。


一方で、自分の中で、イライラしていることを、

「あ~イライラするな」

となぜかそのまま声に出してしまった自分に気付く。

今、思えば、すごく恥ずかしくて、反省しかない。


何かが、私の言語処理能力を阻害している。

普段は、そこが正常にフル稼働して、

むしろ人よりも、優れた機能を発揮しているとさえ言わてれいた。


何が邪魔しているのか、自分自身に回帰すると、

音が聞こえた。


あらゆる外部音に、干渉して、

時に、強め合い

時に、弱め合い

時に、打ち消す音。


頭の中で、ずっと鳴ったまま、消えない。

もっとその音に耳を澄ますと、

"焦燥"の音が聞こえた。


私は、焦っている。

急かされている。

追われて、迫られている。


落ち着きを無くしている。

心のゆとりがなくなっている。



元々、せっかちな私は、締切ギリギリを嫌う。

なぜなら、明日は何があるか分からないから。

もっと言うと、1分先さえ分からないから。


だから、できる限り、早く仕事や書類を片づけて、提出して、

心の安寧を得るようなタイプだ。


その性格ゆえに、人よりも、

焦燥の音は、

早く聞こえてくる上に、

その強さも時間を追うごとに急速に大きくなる。

消しても消しても、消えない。

焦燥の音を鳴らすモノが増える速度の方が

減らす速度よりも圧倒的である。


最近は、本当に、消えない。

書類しか書いてない。

それによる焦燥の音がずっと消えない。

さらには、実験も進んでないという焦燥の音。

厄介なことに、焦燥の音は、

個々に鳴っている場所は違っていても、

その音は、波は、勝手に強め合い、

頭の中を支配する。

そして、いつの日か、

外部の波まで消してしまう。


焦燥、憤怒、嫉妬、悲哀などで、

心にゆとりや余裕を持てない時は、誰しもある。

だけど、心のゆとりのなさ、

ひいては、寛容性の欠如は、

何も良いことを導かない。


と頭で分かっていても、

そう思えない、強さという弱さもある。



それらを、自制・自省することが、

心の海の平穏を保つ1つの方法かもしれないと思う。




珠玉の時間を無為に過ごさないようにと、注意を受けたことがあるだろう。そうなのだが、無為に過ごすからこそ珠玉の時間となるときもある。
(ジェームス・マシュー・バリー)

この記事が参加している募集

スキしてみて

サポート以上に、フォローして頂けると、大変、嬉しいです!