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Mehterhane - Ceddin Deden / ジェッディン・デデン「阿修羅のごとく」

先日、たまたま某動画で日本の雅楽のことを、世界最古の音楽でオーケストラ…と紹介しているのを発見したとですよ。

ヲイ、ちょとマテ! 

日本アゲと言うか、自画自賛も過ぎませんか?
謙虚すぎるのも自虐的な自国サゲも、とっても好ましくありませんけども… 
世界で長く続いている演奏スタイルなのは事実だけど、世界最古の音楽というのだけはちゃうやろー

雅楽というと「不良少女とよばれて」を
思い出しますねん

今の雅楽で使われている主流たる楽器は、唐の時代に唐から奈良時代に入ってきた音楽と楽器がメインで、唐が滅びてからは日本に原型が生き残ることになりましたけど、そもそもその唐に楽器と音楽(集団演奏スタイル)をもたらしたのは、シルクロードの果て、アナトリア地方であり中近東地方の戦場と娯楽文化でんがな。

オスマントルコ以前のササーン朝ペルシャ、はるか昔からアナトリア地方と呼ばれた地域に発祥した文明、文化の産物でござんしてからに…

まあ、全体の歴史、音楽ジャンルのカタチ・形態としては、一番途切れず長続きしているのは事実で、確かに西洋のオーケストラ、クラシックよりは全然歴史がありますよ。

そればかりではなく、唐の時代、国に存在していた音楽、オリジナルの雅楽は既に国破れて廃れ、原型をとどめてないのに対し、日本ではほぼそのままに継承されてますから。
(中国は滅ぼした国の伝統文化を継承するというよりは、破壊する傾向がある<漢民族と満州族、そしてモンゴル系なんかのあれやこれや。んで、文化大革命で失ったものもあるし)

笙‥‥‥天から降る光
龍笛‥‥空を舞う龍のいななき
篳篥‥‥地上の人の声

これらによって天地を繋ぎ、宇宙の森羅万象を表わす
※琵琶と鼓、琴の役割分担はわかりませーん

友人のお師匠さんが所属してマス↑

中東で生まれた楽器、本場の音楽は、東はアジアの果て日本まで、西は西洋諸国、中東ではそれぞれ…というように分岐し、枝分かれして、文明や国の滅亡と共に融合を繰り返し廃れたりなんだかんだで。確かにきちんと成立されたとされるのはオスマントルコの時代で、途中無くなったりもしてしまったから、全体を通しての年月は短いかもだけども…

唐の時代に日本に楽器と共に雅楽の演奏スタイルが伝わる以前に、オーケストラやブラバンスタイルの演奏はいちおう中東に存在していたわけですよ。

リュート
ダルシマー

そんなんで、引っ張り出してみた。


この曲を始めて聞いたのは、
「阿修羅のごとく」という向田邦子さん原作のNHKドラマ。

向田邦子ドラマ、好きです

その主題歌がこれ、
メフテルの「ジェッディン・デデン」だったんですね。

もうね、インパクトありすぎ。

ドラマもものすごく引きこまれたんですが、そのドラマの印象と相まって刷り込まれました、この独特のリズム。

西洋音楽ではない、エスニックと言えばそうなんですが…
シルクロードのオリエンタルな旋律とはまた異なる、力強いリズム。
ターキッシュな軍歌というのかな・・・

ちなみにタイトルの意味は「祖父も、父も…」だそうで。

祖先も 祖父も 同世代も 父も
常に勇猛なるトルコよ!
汝の軍隊は幾度となく
世界にその名を轟かせたのだ!
汝の軍隊は幾度となく
世界にその名を轟かせたのだ!

トルコをイメージする音楽と言うと、モーツァルトのトルコ行進曲位しか知らなかった日本人にとっては、とてもダイレクトに響いたのでした。

うん、お上品な曲ですからね。

ピアノ演奏曲だからってのもありますけど、でも…
このトルコ行進曲もメフテルを参照として生まれたもの。

「Ceddin Deden」

メフテルというのは、オスマン帝国とトルコ共和国での伝統的な軍楽(ジャンル)のことで、オスマン軍楽またはトルコ軍楽とも言われ、メフテルを演奏する軍楽隊のことをメフテルハーネといいます。

オスマン語のメフテルは、ペルシア語のマフタルから派生した言葉で、軍楽隊の隊員を表わす言葉だとのこと。

古代から続く西アジアの伝統音楽と、中央アジアのテュルク族の軍楽を受け継ぎ、オスマン帝国の軍楽隊によって、独自の発展を遂げた音楽の体系がメフテルだったりします。

軍楽は戦地で演奏され、時に宮廷などの儀式や儀礼でも演奏されました。

【5分で分かるトルコ/オスマン帝国の歴史】

んでもって…
西洋のブラスバンドもこのメフテルを真似して、その影響を受けて生まれたものなので、西洋音楽より古い歴史を持つ中東音楽のバンドスタイルが、現代のブラスバンドのルーツだったりするのです。

吹奏楽の歴史

京都橘高校吹奏楽部 in ローズパレード

とはいうものの、19世紀にはいったんメフテルハーネは廃止され、西洋式の軍楽にとって変わられたりするのですが…
20世紀以降、再評価されて音楽遺産として、再興することになりました。

表参道メフテルバンドパレード

ちなみに日本でも人気のこの曲、スタンダードナンバーなもので、イベントの時には必ずと言っていいほど演奏されます。

たぶんドラマのお陰でしょうね、日本での人気は。

下記色んなバージョン

Topkapı Sarayı Mehteran Geliyor
- Mehter in Topkapi Palace


こちらはトプカプ宮殿での演奏。

Mehter Marşları「Ordumuz Etti Yemin / オルドゥムズ・エッティン・イェミン」(陸軍行進曲)

Mehter Dünyanın En Eski Askeri Bandosu 「Tekbir ve Cenk Marşı / テクビル・ヴェ・ジェンク・マルシュ」(テクビル・戦闘行進曲)

Mehter Dünyanın En Eski Askeri Bandosu「Genç Osman / ゲンチ・オスマン」(若きオスマン)

Mehter Marşları「Sivastopol Marşı / シヴァストポル・マルシュ」(セヴァストポリ行進曲)

Mehter Dünyanın En Eski Askeri Bandosu
「Estergon Kal'ası /
 エステルゴン・カレスィ」(エステルゴン城)

Mehter Marşları「Malazgirt Marşı / メフテル・マルシュ」(軍隊行進曲)

こうやって聞いてみると、インド映画の音楽にもやはり似てますね。

ちなみに、インドや中東の音楽や楽器は、唐の時代に中国に伝えられて、当時の唐の音楽にものすごい影響を与えました。シルクロードの道を通じて、様々なものがミックスされることになったというのかな…

そして、その唐の音楽や楽器が、日本に伝えられて雅楽となり伝えられ、日本でオリジナルの進化を遂げて和のものとなっていった。

シルクロードを通じて東と西の国の文化が、そんな昔から出合っていたのですね。

でもって、日本とトルコの絆と友好というと…
この悲劇のことを思い起こさずにはいられませんのでした。

日本トルコ 時を越える絆
~エルトゥールル号が繋ぐ友好の物語~

「海難1890」2015

この映画はイマイチだった。

日本トルコ友好130周年事業 エルトゥールル号追悼式典


F2blogに書いてあるものを、訂正・加筆・リンク修正の上、こちらに再度マガジンとしてまとめてUPしています。

「My Favorites〜音楽のある風景」
 2021/04/17 掲載記事より転載


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