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チャリングクロス街84番地。

チャリングクロス街84番地という作品を見ました。
1970年に出版された小説が原作の映画です。

大学生のときに、ゼミOBの先輩が教えてくれて、巡り巡って今にとても強く繋がっている作品なので、私にとっては少し特別な作品です。

ニューヨークに住む物書きの女性と、ロンドンの古書店員の文通の記録のお話です。

物書きのヘレンと古書店員フランクの関係性は、どう形容したら良いのかわかりません。
きっとこれは、人によって解釈が違うんだろうなと思います。
私は、純粋な愛情だなと思っています。
男と女の恋愛ではなく、人と人という愛情。
友情とも違くて、ただその人がいることの喜びというのかしら。

きっと映画も小説も、退屈と言う人もいるだろうなと思います。
だって、特別大きな事件も起きず、顔を合わせることもなく、延々と20年にわたり続く古書と手紙のやり取りですから。
二人の関係性は、言うなら客と店員のままです。
ヘレンは本を注文し、フランクは本を送る。
でも、書簡や包みを受け取った時の喜びや、日常のふとした時に思い出して「また手紙が来るだろうか」と思ったりするもどかしさ、ヘレンのために選書する楽しさ、フランクのために感想を書く楽しさ、ちょっとした冗談、顔も知らない相手を想う時間、そういう小さな小さな喜びが詰まっていて、とても優しい気持ちになる作品です。

似たような作品で、コーヒー&シガレッツという作品があります。
これもとても好きです。
全11編の短い話で構成されたモノクロの映画なのですが、内容はとってもシンプル。
タイトル通り、テーブルを挟んで人々がコーヒーとたばこを嗜みながら雑談をするだけです。
本当になんともない会話、歯医者嫌いとか、最近仕事どう?とか。
オチもありません。
だけど、ただなんともない生活を覗いていて、その言葉の端々から想像される小さなことがとても楽しく感じられます。

私は映画にこだわりはないのですが、こういう特段大きなことは起きなくて、延々と日常の小さな幸せだったり、逆にちょっとした歯車の噛み合わなさが続くような作品が好きな傾向にあるなと思います。

万人におすすめするかと言ったら、それは難しいかもしれないけれど、こういう楽しみや喜びが私はなんとも愛おしく感じます。


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