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“幸せのカテゴリー”勝手に決めんな。映画『PERFECT DAYS』鑑賞

ミスチルの歌詞のようなことほざいてすみません。Mr.Childrenの『幸せのカテゴリー』は上手くいかない恋愛の曲でしたが、ふと“幸せ”ってなんだろうと考えたことありませんか?


「いっつも代わり映えのせん毎日だなぁこりゃ」と半ば自分の人生に諦めモードの私にとって一見味気なく思える日々でも、自分の心の持ち方を変えれば再び二度と来ない”かけがえのないもの”になるんだ、と実感した映画『PERFECT DAYS』。


主演は十代の頃、今でいうイケオジ好きな友人とテレビで『三匹が斬る!』にハマりまして。好きな男性のタイプはあまり合わないのに二人して「ちょーカッコいいよね!?ね!?」と大騒ぎしていた役所広司さん。歳を重ねてもカッコいいです。
なんですけども、映画の前半は口ひげのある役所さんが稲川淳二氏にしか見えずいつ幽霊が現れないかとビクビク、、笑
時折儚げな木々の木洩れ日と日常の一コマが重なりあう映像と音が、何とも言えない不安を掻き立てられたせいかもしれません。
役所さん演じる「平山」は公園のトイレ清掃を生業としております。


言っておきますとこの映画、観終わって「面白かったー!」と感じる映画では決してございません。面白い、面白くない、そんなカテゴリー()で分けられる映画ではないのです。


毎朝ご近所をあるおばあさんが藁箒で掃除する音で目覚める平山さん。

青で統一された寝具をパタンパタンと規則正しく畳み、夕べ読みかけた文庫本を棚に置く平山さん。

玄関前に揃えた鍵や小銭等をつかんだ後ドアを開き、アパート前の自販機からいつもの缶コーヒーを取り出し車に乗り込み仕事に向かう平山さん。


この場面が何度か繰り返されます。

、、面白いですか?


しか~し!!
平山さんが車の中でカセットテープ(まだ使ってる人いるんやろか?)をチョイスする楽曲はいつも同じ、ではな~い!

平山さん、かな~り音楽通であるとみた!ヴェルベット・アンダーグラウンドからのルー・リード、ヴァン・モリスンetc.とにかくシブい。シブすぎる。パティ・スミスなんぞ聴く男がモテないわけない。トキオ(役名ではない)が狙ってるイカした彼女もそりゃ惚れちゃいますわよ。まだまだだな~トキオ()

平山さんの、ちょっぴり退廃的でアンニュイな日常に相応しい楽曲たち。ほぼ洋楽の中には唯一の邦楽、金延幸子さんの『青い魚』。いい!

平凡な毎日とはいえ、時には事件?らしきこともなくはないわけで。中野有紗ちゃん演じる揺れ動く思春期バリバリの姪っ子ちゃんに平山さんちを初めての家出場所にされてしまったり。姪っ子ちゃんの大胆さにオロオロしがちな平山さん。

平山さんが口にした言葉を姪っ子ちゃんが「今度は今度♪今は今♪」と即興で節をつけ歌いながら自転車を走らせるシーン。ほっこり。
豊かな感性は伯父さんに似ているのかも。
本人に内緒でこっそり母親である妹に電話する平山さん。
平山さんのオンボロアパートに運転手付き高級車で駆けつける平山さんの妹役・麻生祐未さま。
ホントにトイレ掃除してるのね、ってことを口にしますが 、、
そういう言い方やめて~!
お兄さんは誇りを持って(いるかはさておき)一生懸命働いてるんじゃ~!!

幸せのカテゴリー、勝手に決めんなよ。

妹のようすからして平山さんもそこそこ育ちのよい家柄だったのかもしれません。
お父さんに会ってあげて。昔とはだいぶ違ってしまったけど、というのだから平山さんはお父様に勘当されたのか、しばらく会っていないのでしょう。
お父様はボケてしまわれたのか、寝たきりになってしまわれたのか。
説明はないのでこちらが想像するしかないのです。
もちろん説明はいらないけれども。


姪っ子ちゃんも諦めて車に乗っちゃうけど伯父さんである平山さんを心底信頼しているのは間違いない。次のまた家出する先も伯父さんちだろうな、、でもお母さんまた迎えにきちゃうだろうな、、。居場所わかっちゃったし。

行きつけの小料理屋のママ役・石川さゆりちゃん登場。(あがたさんギターで浅川マキバージョンの『太陽のあたる家』披露・泣けた)いつも平山さんには特別扱いのママがトモカズ(役名は友山←)と密かに抱き合っているのを見てしまう平山さん。
慌てて自転車に飛び乗り逃げる平山さん。
傷心の平山さんが川べりでやけ酒喰らいひとりしょんぼりしているところになぜかふいに現れる友山さん。
実はガンを煩い余命幾ばくもない、後悔だらけの友山さん。
平山さんがやりましょうよ、と言い出した影踏みを通してなぜか仲良くなる平山さんと友山さん。

「平山と友山」(漫才のコンビ名みたい笑)が影踏みに興じる姿。
童心に還る男同士の影踏み。
哀愁が漂うも微笑ましい光景。泣ける。

そうです。
平山さんはとっても、とーってもナイスガイなのです。

余計なことは一切言わず万人に優しい。
自然をこよなく愛し、大木の下ですみっコぐらししてる植物を持ち帰りしては水を与え。
古い文庫本が大好きで、仕事の休憩時はいつも公園にいるホームレスの踊りを見てほっこりし、平山さんと同じようにサンドイッチを頬張る会社員女性の、自分に対し不審そうに向けられる視線にも戸惑いつつ会釈。
そんなささやかな幸せ。
そんな平山さんだって時に侘しさも感じたり。
だって人間だもの。(byみつを)


公園の木々の木洩れ日にカメラのシャッターを押す平山さん。
同じような毎日でも”今”という瞬間は全く同じではない。


平凡な毎日のようでもほんのささやかな、自分のお気に入りの時間やものを大切にし、周りの人たちの様子を眺めてはクスッと微笑んで人生をしみじみと味わう平山さん。


「あ~つまんねぇ!なんかいいことないかいな」と愚痴ばっかり言ってたら、、ダメですわ。
暇なときは人のあら探しして悪口ばっかり言ってたら、、ダメですわ。
日頃の自分自身に猛反省。
そしてトイレ掃除はグッと力を入れてもっと念入りにすべき!


、、平山さんを見習います。



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