ある男の魂の彷徨(伊勢正三とともに)その5 「北国列車」

男はすべてを吹っ切るために旅に出た。思いきってアパートを引き払い、気が向いたところへ足を向けた。

お金が底をつくと旅先でアルバイトをして凌ぎ旅を続けた。どこへ行っても季節の風が追いかけてきた。春、夏、秋…。それぞれの季節の風は必ず彼女の思い出を運んできた。そして冬。男は彼女の思い出から逃げることをやめた。むしろ逆に思い出を辿ってみようと思った。

「北へ行こう」

男はちょうど1年ほど前に彼女と行った北国へ向かった。

北国列車

「北国列車」は風のセカンドアルバム「時は流れて…」のA面1曲めに収録されています。

2番の歌詞に「思い切り背伸びをした薄暗い空に君の星座がまだ光ってる」とあります。

このときの「思い切り背伸びをした~♪」ですが、ここでようやく男は彼女の事が吹っ切れたように私には感じられます。夜明け前の薄暗い駅のホームに降り立ち、座り続けた身体を開放するために背伸びをした瞬間、白い息と一緒に彼女の思い出も抜けていったという一種のカタルシスを正やんの歌声に感じます。

「君の生まれたあの星がこんなに綺麗に輝いて、君と暮らした東京では見たことなかったけれど…♪」

冬の星座ということで牡牛座でしょうか?

牡牛座であれば、彼女の誕生日は4月20日から5月20日までのいずれかでしょうね。ということは、東京駅で彼女を見送った「なごり雪」の時はもう1ヶ月もすれば彼女の誕生日を迎える事ができたことでしょう。歌詞の「今、春が来て君は綺麗になった。去年よりずっと綺麗になった」の意味がより一層深く感じられます。

この男にも新たな一歩を踏み出せそうな、そんな予感を感じさせられる曲です。



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