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そこにとどまり、最後までやりきるということ

家を片づけるには、自分で決めたひとつの場所にとどまり、
そこの片づけを最後まで(キリがいいところまで)やりきる力が必要だ。

例えば、家全体を片づけたいときでも、
まず一か所、キッチンならキッチンをやると決め、
そこがきっちり片づくまで、
他の部屋のことが気になってもぐっとこらえて、
キッチンにとどまり続けられるようにするということ。
テレビなどの企画で、何人もの手をかけられるなら、
数時間で家全体を一気に、という片づけかたもできるだろうが、
普通はそうもいかないので、一ヶ所ずつ取り掛かることになりがち。
そのとき、やり始めた一か所を着実に終わらせることが、
最短で片づけを終えるポイントと言える。

でも、「一か所にとどまる」が苦手な人がたまにいる。
キッチンをやっているとリビングが気になり、
リビングをやっていたら物置が気になって…と、
部屋をジプシーしてしまうタイプだ。
これだと各部屋で収納にしまっていたものを
引っ張りだした状態のままにして、
中途半端に次に行ってしまうから、
かえって散らかってしまうことになる。

観察していると、
自責の念が強かったり、葛藤を抱えるのが苦手なタイプの方は、
こういうパターンに陥りやすいようだ。

片づけって、意識的にせよ、無意識的にせよ、
自分の生きかたや考えかたを突き付けられる行為だ。

散らかった状態を見て。
使わないまま放置され結局使えなくなったモノを見て。
好きでもないモノで埋め尽くされた部屋を見て。

片づけをサボった自分を、
お金を無駄にした自分を、
自分を粗末にしてきた自分を突き付けられる。

そこで、自責の念や罪悪感、無価値感など、
自分の心の平安を脅かす感情が湧いてきそうなサインを感じると、
そこから逃れるという行動をとりたくなる。
それが、「ひとつの部屋にとどまれない」という状態を生み、
片づけようとしてもっと散らかるという状況をもたらす。


家の片づけだけでなく、悩みの解決にも同じことが言える。
たくさんの課題を抱え続けている人は、
解決すべき問題に優先順位をつけることも、
ひとつの問題についてキリのいいところまで考え尽くすことが苦手だ。

子どもの進学についての悩みを話していたと思うと、
まだ何の結論も出ていないのに、嫁姑問題について語りだし、
そうかと思うと、老後の資金の不安を吐露する。
けれど、それらの問題について、同時に解決策を考えることはできない。
それぞれ別の問題だからだ。
今日は子どもの進学について考えよう、
今日は嫁姑問題のことを…と順番にやっていくことで、
建設的に考え、現実的な対策を立てることができる。
そうでなければ、愚痴を吐露して、表面的にすっきりはするが、
根本的な問題は何も解決できず、ただやり過ごしただけになる。

でも、やっぱりひとつところにとどまることは難しく、
どこか別のところへ行きたくなる。
問題に対して根本的な対策をしようとすると、
どうしたって自分の中にあるネガティブなものを直視せざるを得ないから。
ひとつの問題から目をそらしたくなる誘惑にあらがい、
そこに踏みとどまれるかが、
その人が問題にカタをつけられるかどうかを決める。


家も、心も、人生も。
片づけて、シンプルにするには、
「もやもやする嫌な気持ちと共にとどまる力」が必要なのだろう。
でも、それは力技とか、我慢とかではなく、
そうせざるを得なかった自分を許し、寄り添うことで
できるようになることなのだろうとも思う。



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