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ワンオペママの戦場(夜)

「お風呂入るよー」
20:00。炊飯器の予約ボタンを押す。食器も片づけ、シンクは空。食卓は夫が拭いた。床に散らばるおもちゃはスルーする。ヨシ。娘をトイレに行かせる。

20:10。子どもの服を脱がせ、自分たちも脱ぐ。「さ、入るか。」サザエさんのエンディングのように1列で風呂場へ入っていく。家族って感じがする。全員全裸なのでシルエットのみで放送したい。

大人はかけ湯をすると、子ども達の身体をまず洗う。夫は息子、私は娘を洗う。洗い終わると、子どもと私は浴槽へ。夫は自分の身体を洗う。その間、息子はつかまり立ちをして、まじまじと父を見守る。

娘は、お風呂のおもちゃで遊んだり、歌ったりする。最近はブギウギの「ラッパと娘」にハマっている。私もノリノリで熱唱する。歌詞は覚えていないので、ほぼ替え歌である。

夫が身体を洗い終えると、私と交代。そろそろ子ども達が、浴槽の中で飽きてくるので、急いで洗う。本当は頭皮マッサージしながら丁寧にシャンプーしたい。じっくりトリートメントもしたい…。

乙女心と、年に抗いたい気持ちは、子育てを前にすると無力だ。浮ついた気持ちをかき消すようにバシャーン!と頭からお湯を叩きつける。子育ては、ただ粛々と、効率的に。

私の身体が洗い終わると、娘と一緒に風呂を出る。タオルドライした後、私は急いで化粧水・乳液を塗る。これだけはやらせてくれ。乾燥はお肌の大敵だ。

娘は素っ裸で からだんだだんだん を踊ろうとし、母に歌うように命じる。私は(パジャマを着ながら、)歌い、娘は踊り狂う。娘は裸なので、体を温めるのにちょうどいい。自家発電の要領だ。

次は、息子を風呂場へ迎えに行く。息子がのぼせないよう、ここまでの行程は巻いた。夫からパスされた息子をタオルでくるむ。ポカポカで温かい。(ええ湯でしたわ~)と息子は満足げに私を見上げる。

しっかりタオルドライして、ベビークリームを塗る。オムツとパジャマを着せる。その間に風呂から出てきた夫は、パジャマを着ると、娘にもパジャマを着せる。

20:30。ドライヤーで髪を乾かす。息子と娘の髪を乾かし終わると、自分の髪に向ける。よく乾かさないと、寝ぐせがつきやすいのだが、腕が疲れてしまい、いつも半乾きで終えてしまう。

歯ブラシを3本とり、配る。歯ブラシをくわえたまま、歩こうとする娘に注意する。「危ないから、ぺったんして磨いてね!」応じる娘。夫も自分の歯ブラシをとり、歯ブラシをくわえて椅子まで歩く。「危ないから、ぺったんして磨いてね!」今度は娘が夫に注意する。

「ごめんごめん~」夫は椅子にどっかり座り、いつもスマホを見ながら歯磨きする。Xをひたすら見ている。ながら歯磨きで、ちゃんと磨けているのか?と思うが、夫を気にかけている暇はない。私もゆっくり歯磨きしたいのだが、息子が私にしがみつきながら乳児用歯ブラシをくわえ、娘も私に膝枕して寝転んでいる。

落ち着かないまま歯磨きを終え、フロスに移りたいところをぐっと抑え、息子の仕上げ磨きをする。抵抗するので仰向けにさせ、両腕を私の足で固定する。(ヤメロー!)と抵抗されるが、心を無にして6本の歯を磨く。

次は娘の仕上げ磨き。寝転がらせて磨く。2歳11か月にもなると拘束は不要。「お口の中にムシバラスがいて、アンパンマン達が歯ブラシでやっつける」という設定は必要。「あ!ここにもいたか!ムシバラス!アーンパーンチ!」と演じながら、磨く。息子が邪魔してくるのを避けながら。

途中、夫が歯磨きを終え、立ち上がりフロスを取る。手伝ってくれ…と思うが、「夫は1日お仕事頑張ったんだし」と気持ちを抑える。自分が戦っているときに、ゆったりと夫が自分のことしていると、無条件にモヤっとするこの現象に名前を付けたい。

娘の歯ブラシも終え、ようやく自分のフロスタイム。丁寧にやりたいところだが、息子に抱っこをせがまれるので、高速フロス。歯茎がいかれそうだ。「読んでー」と絵本を持ってくる娘。「パパにお願いしよっか」さすがに言う。

「パパー読んでー!」「いいよー」夫もフロスを終え、スマホを手放し、絵本を開く。疲れてるところ、ありがとね。

私もフロスを終え、軽くうがいをすると、「お待たせ~」と息子を抱く。眠くて機嫌が悪い息子。抱っこされると安心した顔をする。

20:50。寝室に向かう。娘も絵本を切り上げ、やってくる。3人で布団に川の字になる。両手に花だが、スペースは狭いので私の下半身は床。息子に添い寝しながら授乳する。息子が寝落ちしたタイミングで「しー!」と言いながら、娘とベッドに移る。

「ママすきー!」「ママも大好きよ!」とぎゅっとしながらイチャつく。安心したように目を閉じる娘。可愛い。今日も1日終わりか…。半乾きの髪が寝ぐせにならないよう、髪型を整えながら寝転ぶ。

中学時代、「生きる意味がわかりません」という中二病をこじらせた誰かの質問対して、国語の先生が「生物として生まれた以上、生きる意味とは子孫を残すことだ」と言っていたのを思い出す。なるほどと思ったのを覚えている。確かにどの生物も、自分たちの子孫を絶やさないよう必死に繁殖する。

人間は、社会という仕組みを作ったので、生きる意味も多様化した。いいことであるが、たくさんの「意味」に埋もれてしまいがちになり、自分を見失うことがある。

でも、繁殖の一環である子育ては、見失われないよう本能的に力が入るようシステム化されている。情熱を持ちながら、身を削って、真剣に取り組む。困難や障害に直面しながら、自分の時間やエネルギーを犠牲にする。でも、涙ぐましいのに、評価はされにくい。

人間社会の中で、様々な葛藤と戦いながら、全国のパパやママは、子育てを通じて、次の世代に必死でバトンパスしようとしている。わが子のためならと、歯を食いしばってエンヤコラする。

本当にお疲れ様です。これからも一緒に頑張りましょう。

そんなことを考えていると、いつの間にか眠りに落ちていた。

最終回です。ありがとうございました!1日のこと書こうとしたら、こんなに長くなってしまった…w さあ、今日も前を向いていきましょう!

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