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ワンオペママの戦場(夕)

「ありがとうございました!」
16:30。保育園で娘と再会する。先生方に全身全霊で礼を言う。マジ感謝。いつも娘を預かってもらい本当にありがたい。娘も毎日楽しみに保育園へ通う。保育園は、今まで納税しててよかったと思える最高の福祉だ。

「楽しかった?」「うん!」「何したの?」「電車!」おそらくプラレールのことを言っている。最近は毎日この返事。現実に戻りつつの既視感。

子育ての要は、ルーティンだ。ただ同じことを毎日繰り返すことに意義がある。もちろん子どもの成長に応じてルーティンも変化していくのだが、牛歩のようにゆったりとした変化で、仕事のような緩急はない。

既視感で埋もれながら日々消費していると、「もしかして今、タイムトラベルしてる?」と急に錯覚することもある。負荷領域のデジャヴ。マッドサイエンティストな私は、シュタゲの主人公のように中二病をこじらせる二児の母。

「公園行く!」娘が私の手を引っ張る。ハッと我に返り、車や自転車に気を付けながら、手をつないで公園へ向かう。抱っこ紐の中の息子はキョロキョロと外の世界を眺める。途中、娘が自動販売機や歩道の植栽をいじり、公園までの道のりは長い。

16:45。公園に着いた。この時間帯は小学校高学年の男女が遊んでいる。野球やサッカーをする男子。ブランコに集まり、おしゃべりをする女子。

「ブランコのるー!」と駆け寄ったのはいいものの、ブランコを占領しているお姉ちゃんたちに少し怖気づく娘。私を見て助けを求める。「順番だから待っていようね!」とちょっと大きめの声を出して、助け舟をおくる。気が付いたお姉ちゃんたちはスッとブランコを去り、井戸端を滑り台にシフトする。「ごめんね、ありがとう」お礼を言う。

ブランコは幼児用で背もたれとストッパーが付いているので、10か月の息子も乗れる。娘と息子をのせ、間にしゃがみ、両手でブランコを押す。満足そうにブランコを楽しむきょうだい。絵になって、ほほえましい。とりあえずスマホで写真に収める。

ここで、私は退屈タイムに入る。ぼーっと公園のキッズたちを眺める。最近気が付いたのだが、今どきの小学生(高)の女子は、大人顔負けだ。背は高く、胸も出て女性の身体をしている。服も高価ではないがオシャレ。化粧をしたら大学生と間違えるのではないか。最初見たときは「公園に私服JKがたむろしている…」と思った。会話の内容から、小学生だとわかった。

対して、男の子は、昔と変わらない。まだ背が低い子も多く、半パンで元気に走り回っている。ふた言目には「ハ?!キッショw」「シネw」が飛び交う。ボキャブラリーのなさに、変な安心感がある。

私が小学生のときは、中学受験の勉強のため、この時間帯は塾に行っていた。この話を公立育ちの夫にすると、「不憫w」と言われる。あの頃があって、今の私があると言っても過言ではないが、元気に外で遊ばない子どもってどうなの?という意見もある。うちの子たちは、高学年になると、塾行っているのかな…まだ先とは思いつつ、親子で納得した道を歩めるか、もう不安になる。

ブランコに飽きた娘が、滑り台に行こうとする。2人を下す。滑り台に移ろうとするも、野球の球が飛んでこないか、少し不安になる。「みてー!飛行機ー!」「おつきさま!」娘は目に入ったものを母に一生懸命教えようとする。「わぁ☆本当だ!よく見つけたねー!」高い声で私も共鳴する。

バコーン!男子がバットで打った球が、娘の半径1mの平和空間に命中する。場がヒヤッとした。「…危ないから、今日は帰ろうか~」「まだ遊ぶ~!」危機感0の娘は滑り台でごねる。「じゃあ、あと1回滑ったら帰ろう。」渋い顔をしつつ、娘は滑り台をすべり、私のところに駆け寄る。「我慢できて、えらいね。」

17:15。いつもより少し早いが、家路につく。ドアを開けると「ただいまー!」という娘。「おかえり」というと「ママも ただいま でしょ!」と注意される。「そうだね、ただいま。」

手洗いうがいを促した後、ご機嫌取りにグミをあげる。娘の大好きなアンパンマングミ。キレイにキャラクターの形に成形されているが、たった6粒で税抜78円。毎度、強気な値を突き付けてくるアンパンマン。「こんなの狂ってる!」と思いつつも、全国のパパママは、フレーベル館への献金を避けて通れない。

うちは余裕ないので、グミは1日1粒。娘は好きなキャラクターを毎日悩んで選び、食べる。すごく満足げに。アンパンマンって正義なのか悪なのか、わからなくなる。いや、前者だ。

17:30。娘たちと洗濯物を取り込む。我が家には「洗濯物をたたむ」という家事はない。所有者別のBOXに仕分けるだけだ。楽だが、子ども達が「衣類をたたむ」ということを知らずに成長することに不安を感じていた。いつのまにか、保育園で服のたたみ方を娘がマスターしており、杞憂であった。

17:45。夕飯用意のため、アンパンマンを1話見せる。息子はストーリーについていけないので、(ワイはママンの抱っこで我慢したるわ)と私にすり寄ってくる。

夕飯は、朝のおかずの残りに1~2品追加する。今朝はつくねハンバーグと味噌汁を作った。白ねぎがあるので、今晩は焼き鳥を作ろうと思っていた。イオンで88円(100g)の鶏ももを1口大カットして冷凍しておいたのを、昼間に出しておいた。

18:00。Eテレをつける。「おかあさんといっしょ」が始まっている。これには息子もTVにくぎ付けとなる。ポリ袋に入った鶏ももに、味噌・ニンニク・しょうが…などが入っているという味付けチューブをブリブリ入れ、揉みこむ。その間に白ネギを調理ばさみでカット。レタスとアボカドがあったので、サラダも作る。冷凍ストックしている離乳食をチンしたあと、味付けした鶏ももとネギをオートグリルする。

18:20。「みぃつけた!」が始まる。背もたれに顔が描かれた青い椅子が主人公という、トチ狂った幼児向け番組だ。はじめは衝撃だったが、哀愁もある憎めないキャラたちと、自由奔放で素っ頓狂な歌やダンスを交えてくるこの20分間に、興味がそそられない親子はいないだろう。

18:30。♬チントンシャン ト シャントンチン  カーテーン !オープーン!! 今日も怪奇的な歌詞のメロディが流れてきた頃、玄関が開く音がした。「コッシー見てるよ!」(ワイも!)とパパに駆け寄る子ども達。「ただいま。スイちゃん可愛いね~。」「お疲れ様。」今日も早く帰ってくれてありがとう。

さあ、今日の最終ラウンドがはじまる。


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