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コロナウイルスと同調圧力

コロナウイルスをはじめとする感染症は目に見えず、実体を掴みにくい。
本性がわからない何かが「死」という現象をもたらし自分の近くに迫ってくるという点が、私たちの恐怖をあおる。

現代において人々は家族や学校、会社など、さまざまな「社会」の中で生活しており、影響を与えあって生きている。
社会心理学の視点に立つと、コロナウイルスは同調圧力を顕在化させた社会現象と捉えることができるのではないだろうか。

同調圧力が生み出した自粛警察

感染拡大を防ぐために始まった自粛要請。本来は強制力を伴わないために「自粛」という言葉なのだが、自粛要請を守っていない人や店に対して、ときには暴力などの過剰な手段を用いて自粛をせまる「自粛警察」に注目が高まった。
非難の電話・張り紙、行政への通報行為、県外ナンバー狩り、帰省警察、マスク警察など、形態は様々。

このような自粛警察が出現してしまう背景の一つには「同調」という心理がある。これは、同じ集団に属する他者の行動に合わせて、自分の行動を変化させることで、「他者と合わせなければならない」と感じることを同調圧力という。

コロナ禍を経て、未知の感染症に対する恐怖観念と相まって同調圧力が高まり「自粛警察」のような過剰な行為が顕在化したと思われる。この同調圧力は、本来日本に限った話ではないが昔から忖度文化が根付いている日本では欧米諸国と比べると「同調圧力」が強い傾向にあり、このような問題が起こったのかもしれない。

本当の地獄

Netflixで一時期話題になった「地獄が呼んでいる」という韓国ドラマは、コロナウイルス禍における人々の同調心理を風刺する作品として見ることができ、本当の地獄とは何なのかを考えさせられた。
この作品は厭世的で社会風刺的な世界観で有名なヨン・サンホ監督が、自作のウェブマンガを原作に実写化した計6話のドラマで、あらすじを紹介すると次のようになる。
「ある日突然、地獄から来た使者たちが人間に次々と地獄行きを宣告し、実際に彼らが残酷な死を迎える超自然的な現象が起こる。社会が途方もない混乱に陥っていく中で、新興宗教の「新真理会」は この超自然的な現象を「神の意思」とし人間の恐怖心を刺激して勢力を伸ばす。一方、罪のない被害者を保護し事件の実体を明らかにしようとする人たちが登場し、新真理会と対立することになる…」

一見するとオカルトチックな内容だが「未知の恐怖に対する人間の反応や社会の動き」を俯瞰して見ることができ、コロナウイルスという社会現象がもたらした人々の善悪観念の異常性に気づきを与えてくれる作品だった。

死や自分の損失という恐怖にあおられた人間はときに何をするかわからない。そのように考えると人の心理を軽視することはできない。

今日読んだ本
別冊Newton 心理学実践編
暮らしや生活にいかす、心と行動の科学





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