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十二月二十一日

高校三年生になってから事あるごとに"最後"という言葉を聞いてきたが、私は『そうなんだ』くらいにしか思っていなかった。きっとみんなと毎日居れることが当たり前であったから、実感が湧かなかったのだろう。何か新しいことをする訳でもなく、ただ時間が過ぎるのを待つだけ。

自分の思いとは裏腹に、ポッと蝋燭に火が灯ったような感覚で、私の高校生活最後の冬休みがスタートした。


大学受験をする高校三年生の最後の冬休みといえば、一日のほとんどを机の前で過ごす。私の周りの子も一月十三日、十四日に共通テスト。二月には一般入試を控えているため、皆勉強に凄まじいエネルギーと集中力を注いでいる。

そんな私は、十二月一日に運良く公募型推薦に受かった。正直言うと沢山対策を練ったから、受かってて欲しいと思っていた。しかし、入試当日に面接で頭が真っ白になりこれは落ちたなと確信したのも事実。

"合格"を見たときには、放送室で嬉しさのあまり泣き崩れてしまった。響く私の声が目の間にいた担任の気を遣わせた。

教室に戻ると、授業が始まっていた。先生の声だけが聞こえる。誰からも結果を聞かれない。でもその方が気持ちが楽だったのかも。私は安堵した。

"合格"というニ文字を見たその日から私の生活は一転した。

今まで勉強に注いできた燃料はもうない。

卒業試験では、今まで見た事が無いほどの点数を叩き出した。一学期のうちに卒業するのに必要な単位は取れていたため、余計に私の気持ちをそうさせたのだろう。

卒業試験が終わったら、登校日が大掃除と終業式の二日間だけ。

最近はよく冷えるからヘッドホンが欠かせない。
くるりを聴きながら電車に揺られ今日も学校へ向かう。明日からは最後の冬休みが始まる。

十二月二十一日。





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