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パリと花

最近ずっと風邪をこじらせていてろくにおしゃべりもできないので、黙々と師走の忙しさをこなしていました。元気が出てきたら、我が家の雑然とした本棚をどうにかしよう、、、と見上げたら、埋もれていた本に気づきました。

斎藤由美『ブーケシャンペトル ア・ラ・メゾン』 グラフィック社、2014年。

パリでよく見かける田園風にアレンジしたブーケを、花1本1本のスタートから解説している本です。全ページが写真なので、これならわたくしめにも理解できるかも、と積ん読になって早や○年。
改めてページを開いてみると、花々の色合わせやブーケ全体のシルエットなど、独特のセンスについ思いはフランスへ、、、と現実逃避してしまいます。
あちらの花屋さんではどこでも、種類ごとに分かれている花々がなんだかそれぞれのワールドを主張しているように個性が感じられました。にんげんが選びやすいように整列して見易いわけではなく、「この花はこんなムードね」と店主が演出してその場所に配置しているようです。

p.19

テイストの異なる花屋さんばかりなので、買う側としてはイメージをつかんで注文できるのが楽しいところです。しかし、どんな店でも共通していたのは満開の、絶頂の花々が主役であること。日本では蕾から咲き掛けのものがメインですが、その状態のものはテーブルの下や奥に控えていて、頼んだら売ってくれます。しかし、「いいの?この花はまだまだだよ」という類のことを必ず確認されます。
これについては、フランス人女性の年齢の価値感になぞらえて美意識を説明する話も聞いたことがありますが、ここでは割愛いたします。

絶頂に美しい瞬間を提供する、というこのパリ花屋さんらしいエピソードでは、あるバラ専門店での経験が。
店の入り口にあった手ごろな小さめのバラを、お任せで適当に色を混ぜて包んでもらっている間に、店の奥にあった様々な種類のバラジャムを発見。見入っていると嬉しそうに風味の説明をしてくれました。
よし、友へプレゼントしようと1ついただくことに。「ちょっと待っててね」といそいそと店主が奥に入ってから渡してくれたジャムの入った紙袋には、なんと大きなバラの花びらがたっぷり、一杯にあふれていたのでした。もちろん、生花のはなびら。
店を出て目の前の大きな交差点を渡れば、たくさんのバラの花びらが花吹雪となって信号待ちの車の前を通り過ぎてゆく。一瞬にしか起きない贅沢な演出。店のコマーシャルの片棒をかついだようでもあり、ウインクされたり笑顔を向けられたりしたわたくしめも、何だかイイ気分でした。

お任せで包んでもらった小バラのグラデーションは、いかにも曇り空のパリにぴったりなアンニュイなものでした。一方で、一瞬の風に吹き飛んで行った大きな花びらの深紅のインパクト。
美しいモノを残すことも大切ですが、美しいモノを逃さない大切なことも、こんなパリの花屋さんから知らされました。


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