レンゴーの財務分析

レンゴーの概要

  • 包装資材を製造する企業で、製紙業界3位。板紙、ダンボールの製造では最大手。

  • 日本で初めてダンボールを事業化した会社である。

  • 板紙・紙加工関連事業、重包装関連事業、軟包装関連事業、海外事業の4つのセグメントで構成されている。

  • 海外売上高比率は約20%。

レンゴーの財務数値

図表1-1
単位:(百万円)

売上高、営業利益、ROAの推移

図表1-2

売上高当期純利益率指数と総資産回転率指数の推移
ROA=売上高当期純利益率×総資産回転率
※2013年を基準値1として指数化

図表1-1のROAの推移を見ると、2014年から2022年にかけて、大幅な改善傾向を示しています。
図表1-2は、ROAを総資産回転率と売上高当期純利益率に分解して、10年間の動きを表したものです。
回転率が横ばいなのに対して、利益率が大きく上昇しており、ROAの改善傾向は利益率の上昇によるものだということがわかります。

次に、単体の財務数値と業界の構造を分析することで、利益率の上昇要因について深掘りしていきます。

単体の財務数値の分析

図表2-1
単位:(百万円)

減価償却費及び投資支出に関する金額

図表2-1は減価償却費と有形固定資産、関係会社株式への投資支出の推移を示したものです。
2015年までは有形固定資産に対する投資が、減価償却費を大幅に上回っていますが、2015年以降は減価償却費と同程度に投資額が抑えられています。
関係会社株式への支出は2017年と2020年に大規模な投資を行っています。
投資が一巡した成熟産業が、業界再編のために企業買収を活発に行なっている姿が見て取れます。

図表2-2

単体の総資産に占める関係会社株式及び投資有価証券の割合の推移

図表2-3

roicの構成要素の内訳と推移

図表2-2は単体の総資産に占める投資有価証券と関係会社株式の割合を示しています。
業界再編のために企業買収を積極的に行った結果、10年間で約24%だった保有割合が約38%にまで上昇しています。

図表2-3はRoic(営業利益+受取配当金)×(1-実効税率)÷投下資本と定義し、税引き後営業利益÷投下資本税引き後受取配当金÷投下資本に分解して、推移を追ったものです。
つまり、Roicを受取配当金による部分と本体事業からの利益による部分に分けて、それぞれの影響を観察したいわけです。

先ほど示した通り、有価証券の保有割合は増加していますが、受取配当金によるRoicへの影響は限定的です。
それに対して、本体の営業利益がRoicへ与える影響は大きく増加しており、企業買収が本体事業の利益増加を狙ったものだったと考えていいでしょう。

本体の事業は段ボール、板紙の製造がメインですので、段ボール業界について考察し、さらに深掘りしていきます。

段ボール業界の構造

段ボール業界は、一貫製造業者個別製造業者に分かれています。
レンゴーは一貫製造業者にあたり、紙を作る工程から加工、販売までを一貫して行なっています。
個別製造業者は特定の工程だけを担う製造会社で、小規模な企業であることが多いです。

また、商流は3段階に分かれており、一番川上側に位置しているのが原紙メーカー(王子製紙、大王製紙など)です。
真ん中に位置するのが、仕入れたロール紙から段ボールシートを製造するシートメーカーで、準大手級の企業が全国に存在します。
最も川下に位置するのが、ボックスメーカーで、シートメーカーから仕入れた段ボールシートに商品名を印刷したり、組み立てを行なっています。

レンゴーは一貫製造業者ですので、商流の全てをカバーしていますが、近年は川下側に位置するボックスメーカーの買収に力を入れてきました。

ボックスメーカーは地元の青果店やスーパーなどの顧客が多く、地域性が強いため、地方に複数の小規模業者が点在しているのが特徴で、リーダーを担うような大手企業がいません。  
ですので、同じような規模の企業が多く、どこかが値上げを行なったとしても業界全体が追随してくるとは考えにくく、なかなか値上げに踏み切れない状況だったと考えられます。

そこに業界最大手のレンゴーが資本参加し、リーダーシップをとることで、業界全体の製品単価の引き上げを計り、レンゴー自体の製品価格も引き上げることが可能になったと考えられます。
そして、生産量の増加による製品単位当たりのコスト削減効果と相まって、利益率上昇に繋がっていった考えられるでしょう。





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