ホクトの財務分析

ホクトの概要

  • 長野県長野市に本社を構える、食用キノコの製造企業。

  • 食用キノコの他に化成品(キノコ栽培用資材、食品包装材)、キノコ関連の加工食品の製造も手がけている。

  • 米国、台湾、マレーシアでの製造販売を行っており、海外売上高比率は8.9%(2022年時点)

  • 新品種の研究開発も積極的に行なっている。

10年間の財務数値

図表1-1                                                           
単位:百万円


10年間の売上高の内訳及び推移

図表1-2                            

有形固定資産回転率及び営業利益率

図表1-3

キノコの1t当たり単価と1㎡当たり生産量の推移
※2012年を基準値100として各年を相対値で表示
※1t当たり単価はキノコの売上高を生産量で除したもの
※1㎡当たり生産量はキノコの生産量を主要生産設備の土地面積で除したもの

図表1-2の有形固定資産回転率と営業利益率の推移を見ると、回転率が高い時には利益率が上昇し、低い時には減少しており、回転率と利益率が同じように推移していることがわかります。
有形固定資産回転率は売上高÷有形固定資産額で計算され、生産性を測る指標になっています。
なので一見すると生産能力の効率性が利益に影響を与えているように思えますが、分子の売上高は生産量だけでなく、単価の影響も受けることに注意が必要です。
つまり有形固定資産回転率を生産数量/有形固定資産×単価に分解して見ていく必要があるということです。

図表1-3の1㎡当たり生産数量指数は生産量÷生産設備の土地面積によって計算したものです。分母を有形固定資産額ではなく土地面積にしたのは、金額当たりのキノコの生産量よりも面積当たりの生産量の方が直感的にイメージしやすいからです。
1t当たり単価は売上高÷生産数量で計算を行いました。

1㎡当たりの生産量は10年間で右肩下がりに推移しており、生産効率に大きな変化は見られません。
しかし1t当たり単価は上昇傾向にあり、特に2013年から2014年には機能性食品としての認識の高まりや菌活ブームなどの影響、2020年には巣篭もり需要によって上昇幅が大きくなっています。

そして有形固定資産回転率が1t当たり単価と同じように推移していることから営業利益率の変動は生産効率の変化によるものではなく、単価の変動によるものだと考えられます。

ホクトの戦略

図表2-1

生産量成長率の推移と内訳
※2013年を基準として各年の増加率の推移を表示
※折れ線は全体生産量の推移、棒グラフが内訳となっています

図表2-2                                                            
単位:(万t)  

国内キノコ生産量推移


図表2-1の生産量の成長率の内訳を見ると、その他の項目が全体の生産量の成長率に大きく貢献していることがわかります。
その他の項目は、高級路線のホクトプレミアム(霜降りヒラタケ、生どんこ)と呼ばれるキノコです。
このことから高価格帯製品を市場へ積極的に投入する戦略をとっていると考えられ、先ほど示したキノコ単価が上昇傾向にある理由の一つと考えられます。

図表2-2の国内のきのこ生産量は、2010年をピークに成長が鈍化しています。
国内での消費量が低迷している時期に生産効率を高め、生産量を増やしても意味はありません。
また、農作物は価格弾力性(価格変化が需要に及ぼす影響)が低いと言われており、生産効率を高め、価格を下げることに成功しても販売数量が増えにくいと考えられます。
これらの事情から効率化によるコスト抑制ではなく、利益率の高い製品の開発、生産に力を入れているのではないでしょうか。

株式会社グローバルインフォメーション(調査会社)によれば、世界のキノコ市場は年平均9パーセント程度で成長し、2027年までに750億ドル規模に達すると見込まれています。(2020年時点では400億ドル)
日本の市場が低迷していることから、今後は海外展開の拡大に力を入れていくことも予想されます。









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