日本ペイントと関西ペイントの比較分析

日本ペイントと関西ペイントの利益構造

日本ペイントと関西ペイントの総利益率の内訳は以下のようになっています。  
注:売上総利益率=販管費率+営業利益率

日本ペイント売上総利益率内訳
関西ペイント売上総利益率内訳

売上総利益率と販管費率は、日本ペイントの方が高いことから日本ペイントが売上原価を抑制し、それによって得られたマージンを販管費に投入している様子が見て取れます。
ではどのようにして日本ペイントが売上原価を抑制しているのでしょうか。

日本ペイントの売上原価の考察

図表1-1                                                  単位:(回)

有形固定資産回転率

図表1-2                                                   単位:(日)                                                  

仕入債務回転期間

図表1-3                                                  単位:(日)                                                  

棚卸資産回転期間

図表1-1を見てわかる通り、売上高に対する固定資産が関西ペイントよりも少ないことがわかります。
2014年にアジア事業を、2019年DuluxGroupを買収したことによる固定資産の増加によって、回転率は一時的に減少していますが、それでも平均的に見れば 回転率は関西ペイントを上回っています。  

図表1-2の仕入債務回転期間は、日本ペイントが30日〜40日ほど長くなっており、仕入債務の返済猶予が長い、又は外部からの仕入割合が高いことが考えられます。

図表1-3の棚卸資産回転期間は日本ペイントが約10〜20日 ほど短くなっており、棚卸資産が売上原価になるまでの期間が短い、又は棚卸資産自体が少ないことが考えられます。

これらのことを勘案すると、日本ペイントは製造工程のアウトソーシングの 割合が高いと考えることができるのではないでしょうか。
一部の工程を外部に発注することで、それに伴う固定資産を持たずに済むので固定資産回転率が低い。
さらに自社の工場内に滞留する製品や原料、仕掛品の減少によって棚卸資産回転期間が短い。
外部への発注が多いことで、仕入債務が相対的に多くなり仕入債務回転期間が長い。

そしてアウトソーシングの割合を高くすることによって、人件費の変動費化や付加価値の低い単純作業の削減による効率化に繋がり、コストを抑制できていると考えられます。

販管費への投入

ここまで日本ペイントが売上原価を抑制できている理由について考察してきました。しかし、「得られたマージンを販管費のどこに投入しているのか」という疑問が残ります。
日本ペイントの有価証券報告書には、販管費の内訳の記載がありません。
なので詳細な分析は難しいですが、考えられる理由を簡単にまとめます。

  1. 買収企業の管理に伴う人件費への投入。

  2. 小売販売の規模が大きい企業を買収してきたことによるマーケティング費用の増加に対する投入。

  3. アジア、中国地域での販売網拡大に伴う販売員への人件費及びマーケティング費用への投入。

日本ペイントの分析まとめ

  • 日本ペイントは、原材料費の変動を速やかに価格転嫁することで利益を安定させている

  • 安定した利益と金融緩和による低金利によって、レバレッジによる海外企業の買収を加速させてきた。

  • 製造工程の一部をアウトソーシングすることによって原価を抑制し、販管費への投入を増やしている。

  • 巨額ののれんを保有しているが、米国会計基準では償却を行わないため、減損が発生した時のインパクトが大きくなるので注意が必要。





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