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値段ってどうやって決めればいいの? 価格の決め方には3つの方式がある

リッカ・コンサルティングのフクダです。
今回は「価格」のお話。

先日、とある食品会社の社長さんから経営相談を受けました。材料の仕入価格も人件費も上がっていて、利益が出ない。どうしたらよいでしょうか?というご相談でした。

商品のラインナップを見ると、どれも量が多くて価格が安い。少人数の家族ではとても食べきれないような量だったので「この量と価格って、どうやって決めたんですか?」と伺いました。すると「先代の頃からこの価格と量です。まわりの会社も大体それぐらいなので、合わせなきゃと思っていました」というお返事でした。

先日、こんな記事も書きましたが、原料価格等の高騰から、価格設定に関するご相談が増えています。

「そもそも、価格の付け方が分からない」というお声も多いので、今日は価格決定の基本についてお話しましょう。


価格決定の3つのパターン

価格決定方式には、おおまかに3つのパターンがあります。

  1. 競合の状況から決める

  2. コストから決める

  3. 戦略的に決める

利益を出しやすいのは1<2<3の順です。
実際にはどれか1つを採用するのではなく、3つの決め方のバランスを取りながら決めることが多いです。
では、それぞれについて具体的に説明していきましょう。

競合の状況から決める

自社商品と同じような商品に価格を合わせる方法です。細かく分けると3つあります。
市場価格追随法
自分が売りたい市場(リアルのお店やネットショップ)で、お客さんが比較するようなグレードの競合商品に価格を合わせる方法です。一般的にお店で売られている商品の多くは、この価格決定方法です。

プライスリーダー追随法
業界内でいちばん大きなシェアを持つ「リーダー企業」に価格決定権があり、他社はそれに並べざるを得ない、という状態の価格設定です。大手メーカーの缶ビールなどが代表的です。
中小メーカーがプライスリーダーの大企業と価格を合わせようとすると、規模が小さい分利益が出にくくなってしまいます。それを回避する方法はあとで書きますね。

慣習価格法
消費者が「大体このぐらい」と意識している相場価格が決まっている商品に使います。もやし1袋40円とか、自動販売機のペットボトル150円前後とか、ラーメン1杯1000円位までといったものですね。慣習価格の場合、「安くしてもそんなに売れないが、高くすると極端に売れにくくなる」特徴があります。

この慣習価格は本当に厄介で、特にくり返し買う食品などは「経営的にやっていけないけれど、横並びにせざるを得ない」ことがよくあります。飲食店だと「ラーメンが1000円を超えると、なかなか買ってもらえない」といった話をよく聞きます。

コストから決める(コストプラス法)

工業製品や、オーダーメイドの商品・サービスによく使う方法です。
原材料や人件費、家賃、光熱費などのコストに加えて、必要な利益を足して値段を決める方法です。
基本料金が◯円、オプションで◯円というように、根拠がはっきりしていればお客さんの理解を得られやすい反面、お客さんが感じる「値ごろ感」と離れていると、買ってもらえないこともあります。

戦略的に決める

市場やお客様の心理を考えながら価格を決める方法です。
具体的にはこんな方法があります。
名声価格(プレミアム価格)
わざと高めの価格をつけて、お客様に「こんなに高いのだから、きっと良いものだろう」と思わせる方法です。希少品や高級ワイン・ギフトなど「買うことがステータスとなる商品に使います。
売れないのを承知でわざと高い値段の「最高級品」を少量売って、その普及版を沢山売ることで利益を出していく方法も、よくとられています。
段階価格
いわゆる「松・竹・梅」ですね。日本人は「真ん中」を選びたがるので、例えば10,000円と13,000円のコースがあって、13,000円をもっと売りたい、というときには、15,000円のコースを新たに作ったりします。
ダイナミックプライシング
ホテルの宿泊料金のように、人気の高い土日や年末年始は高く、平日は安く、と需要に応じて価格を変えます。供給量に限界のあるサービス業でよくとられる価格戦略ですが、最近は飲食店でも採用され始めています。

価格競争を避けるには?

「価格で比べさせない」「価格以外の要素で買わせる」これに尽きます。
いちばん分かりやすいのが、アイドルでもコミックでも「推し」ですね。推しのグッズなら高くても買う。仮に、隣で推し以外のグッズが半額で売られていたとしても「推し」のグッズを選びますよね。

あなたが何かを売りたければ、あなたの商品、もしくはあなた自身に「他とは明確に違って、このひとの商品を買いたい!」と思う理由をできるだけ沢山作ることです。商品そのものの良さであったり、応援したくなるストーリーであったり。理由となるフックは色々あります。

テクニック的にはこんなものがあります
他のものと売り方を変える
販売する場所や方法を変えることで、他の類似品と価格で比較されないようにする方法です。代表的なものはサブスクですね。1つ1つの商品として売るのではなく、月額制のサービスとして売る方法です。食品や雑貨などは、セレクトショップなど店主が商品を厳選したお店で扱ってもらうことで、価格競争を避ける方法もあります。

販売する単位を変える
他の一般的な商品と販売単位を変えて、価格を比較しにくくする方法です。
たとえば緑茶は100g単位の袋売りで売られることが多いですが、高級なお茶を1煎分ずつパック詰めして販売したり、ティーバッグにして◯個入りという表記にすれば、単純にグラム単価で比較されにくくなります。
特に食品は、メーカー側が量を多くしすぎることが多いので、販売単位の量の見直しをおすすめしています。

商品や顧客層を細かく絞る
中小事業者は価格競争力や販売力で大手に勝てませんから、大手が入ってこられないような「専門的で小さな市場」に絞って、商品やサービスを提供する方法(ニッチ戦略といいます)をとることが多いです。
この場合、爆発的な成長は望めませんが、価格競争は避けることができます。ただし、あまりに小さな市場の場合、ちょっとした環境変化で市場自体がなくなってしまうことがあるので注意が必要です。

おまけの話

話はそれますが、ニッチ戦略で特に凄いなあと思うのは雑誌の世界ですね。
私は前職で雑誌のバイヤーをやっていたことがあるので、マニアックな雑誌はひととおり目を通してきました。
たとえば、デコトラ専門雑誌「カミオン」

https://geibunsha.co.jp/car/camion/

筋トレ専門雑誌「アイアンマンジャパン」

石の専門雑誌「月刊 愛石」

世界は広い。

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