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コンサルティングの「瞬発力」と「持久力」

中小企業診断士のフクダです。
先日、定期的に参加している中小企業診断士の勉強会で、先輩コンサルタントからこんなことを言われました。
「フクダさんは話を聞きながら、その場で対応策をアドバイスするのに慣れているけれど、経験の少ない方には難しいかもしれませんね」

私は中小企業支援機関で20年近く相談を受けてきたので、その場で話を整理してアドバイスするのは「当たり前」だと思ってきたのですが、考えてみるとコンサルタントの仕事や能力って「瞬発力」と「持久力」の両方が求められるのです。今日はそのお話。


コンサルティングにおける「瞬発力」と「持久力」

経営コンサルティングには、経営者と話しながらその場でアドバイスする「瞬発力」が求められる場面と、課題を一旦持ち帰って深掘りして改善提案を考える「持久力」が必要な場面があります。
私の経験では、主に公的支援では「瞬発力」が、民間のコンサルティングでは「持久力」が求められると感じています。

では、それぞれ、いくつかのパターンでお話しましょう。

瞬発力のコンサルティング「SOS案件」

私は「さいたま市産業創造財団」や「埼玉県よろず支援拠点」といった、いわゆる公的支援機関で永くお仕事をしてきました。
こういった公的機関は、これから企業を成長させたい!という前向きなご相談もありますが、結構な割合で「緊急を要する案件」が飛び込みます。
「新型コロナの影響で売上が激減し、資金がショートした」
「スタッフが急に大量退職してしまい、業務が回らない」

といった、いわゆるSOS案件です。

こういったご相談案件は、
・いきなり持ち込まれて、すぐに対応が必要
・短期的に成果を出す必要がある
・使える費用や人材に限りがある
といった場合が多いです。

企業を人間の体に例えるなら、コンサルタントの役割は救急医です。
まずは会社が生き残る、事業をなんとか続けられる体制を作る。そのためには限られた時間で情報を聞き出し、すぐに取り掛かれる対策を提案しないといけません。
短時間で必要な情報を整理する能力と、事前に「こんな時はこうする」という引き出しをたくさん持っておくこと、トリアージ(やらなければならないことの優先順位付け)が必要になります。

公的機関の相談の場合、1回のご相談に割ける時間は長くても2時間程度ですから、その間に「すぐにできることは何か」「協力が必要な専門家や支援機関はどこか」といった情報を整理して、対策を考えていきます。

特に「よろず支援拠点」は「中小企業の最後の砦」を自認しているところもあり、こういったSOS案件に対応できるコンサルタントが多数在籍していて、いつも凄いなと感じています。

瞬発力のコンサルティング「スタートアップ」

同じく瞬発力が求められるコンサルティングに、スタートアップ支援があります。

スタートアップの特徴的な部分は
・スピード感のあるサポートが必要
・起業家のマネジメント経験が不足していることが多い
・基本「人もお金も信用も、何もかも足りない」

スタートアップが既存の大手に立ち向かうための最大の武器は、すぐに事業をピボット(方向転換)できる柔軟性とスピード感です。
これに合わせ、まず全方位的になんでも受け止めて、一緒に方向性を考えるコンサルティングが必要です。地域によっては先輩起業家がメンターとしてスタートアップに関わり、自身の経験からアドバイスしてくれる「エコシステム」が出来上がっています。

私は支援機関でスタートアップ支援を長く担当していたので、起業家からの相談は年中無休で対応していました。最近はスタートアップ支援に力を入れる自治体や企業が増えてきたので、より瞬発力のあるコンサルティングが求められていくと思います。

持久力のコンサルティング「伴走型」

一方で、公的支援でも民間コンサルティングでも、長期間にわたって定期的に関わる企業に対しては、コンサルティングの「持久力」が求められます。
民間コンサルティングの顧問契約や、公的機関の「伴走型支援」と呼ばれるものです。

特徴としては
・緊急の困りごとは少ないが、長期的に事業を伸ばしたい
・コンサルタントとの信頼関係が出来ている
・前向きな投資が可能

ということが多いです。

企業を人間の体に例えるなら、コンサルタントの役割は「パーソナルトレーナー」でしょうか。健康状態をチェックしつつ、よりパフォーマンスを上げるためのサポートが中心になります。

私の場合、一番深く関わっているのは顧問先企業。こちらは決算書に見える数字で「結果を出す」責任があります。公的支援でも永いところでは10年以上お付き合いが続いている企業もあります。
経営者の性格も、これまでの経緯も知り尽くしているので、より実情に沿ったアドバイスができますし、長期的な挑戦に関わることもできます。

持久力のコンサルティングに必要なのは、論理的思考力と、言うだけでなく「一緒にやりきる、成果を出す」完遂能力ですね。

持久力のコンサルティング「大型案件」

複数のコンサルタントでチームを作り、中堅以上の企業や自治体などから「調査」「分析」「提案」までを手掛けるコンサルティングです。

大手コンサルティングファームが手掛ける数百万~数千万のコンサルティングは、ほとんどがこちらのパターンでしょう。
実はこれが一番「儲かる」のですが、私はあまりやりません。よほど丁寧にやらないと、企業や自治体側の「やった感」を出すだけ(立派な報告書を提出して、その後現場は何も変わらない)となりがちだからです。

とはいえ、少ないながらも「本気でやっている」コンサルティングファームと企業もあり、そういった案件には関わらせていただいています。論文や文献といった2次情報だけでなく、自らヒアリングやアンケートを行って得られる1次情報も使いながら、今まで得られていなかった深い知見や洞察が求められます。

瞬発力と持久力のバランス

今回、あらためてコンサルティングの瞬発力と持久力についてまとめてみて、自らの「バランス」はどうだろうか?と考えました。
現在は「瞬発力7:持久力3」といった感じです。瞬発力はもちろん大事なのですが、長期的に成果を出すためには今後「持久力」を蓄えていきたい。
特に「成果を出す力、完遂能力」を高めていきたいと考えています。




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