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【妄想企画】美人OLが召し上がっていそうな原木しいたけパスタ

『めんどく星人がイメージだけで作る美人OLメシ特集』とかやってみたい



美人OLから銀河の彼方ほど遠き存在かつ鉈が似合うことで定評のある女が、自分勝手極まりないイメージだけで突き進む妄想企画第四弾。

今週ははからずも、「月曜から金曜まで同じ弁当」のみならず、「月曜から金曜まで毎晩パスタ」という金字塔も打ち立ててしまいそうで、オラなんだかわくわくすっぞ!

ということで今回もパスタです。



職場で私の手のひらくらいの大きさはありそうな、立派な原木しいたけをいただいた。


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同僚の青年が現場に出た際、打ち合わせの相手は軽トラでお越しになったのだけれど、その軽トラの荷台からなぜか原木しいたけが登場し、「ほれ、もってきな!」と手渡されたらしい。

両手にしいたけを載せてハニワ顔で帰ってきた青年が、「あの、ワカナさんよかったらひとつどうスか」と申し出てくれたので、ありがたくおすそ分けにあずかった。


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暴れん坊将軍によるスメル・チェックの儀


あらためて見ると、やや育ちすぎかな?と思える大きさだけれど、ふっくらとやわらかな傘部分といい、がっしりと堅牢な石突きといい、普段見慣れたスーパーのパック品と同じきのことは思えないほどの鮮度&品質。とりわけ傘の裏側部分ときたら、驚くほどにみずみずしく、きめ細やかな肌だ。これはもう「貴族のしいたけ」とお呼びするに相応しい逸品であろう。否応なしに期待値が上がる。

ヨッシャヨッシャ、今夜はこいつを使って妄想企画第四弾としゃれこもう!


そう思いながら、へっぴり腰で貴族のしいたけをつまみあげる。


なぜへっぴり腰か?

聡明な紳士淑女の皆さまならば、もうお分かりになりましょうや。そりゃあそうだよねー、「貴族のしいたけ」だけれど、ご出身はバリバリの野外ですもの……。


まばゆいばかりに白いひだひだの裏側には、ざっと肉眼で確認できる範囲でも相当数の虫さんがうごめいていたのであります……。



ということで、今夜はまず原木しいたけの下処理からスタート。

大きめのボウルに塩水をたっぷりと張り、ここに原木しいたけを漬け込む。虫さんたちは主に傘の裏側をオフトウンとして利活用なさっていたので、その部分がしっかり塩水に浸るようにぶちこんだ。そのまま20~30分程度放置しておくと、塩水責めに負けた虫さんたちがしいたけの奥から姿を見せはじめ、やがてボウルの底に沈没していくので、「君たちの分まで必ずやこのしいたけをおいしくいただきます……」と最敬礼でお見送りする。

しいたけの表面に虫さんの姿が見えなくなったら、ボウルの水を捨てて新しい水と交換。塩気を洗い流しつつ、残党兵がいないか念入りにチェックする。ここで大切なのは、傘の裏側のひだひだの1本ずつを掻き分けるぐらいの心意気でもって、じっくりとねっとりと執拗に確認することだ。この作業には虫さんと第一種接近遭遇を果たしてしまうリスクがつきまとうけれど、うっかりさわるハメになっても決して泣かないこと。さわるのと、食べるのと、どちらがいい?……そう、それでいい。あなたの選択は正解だ。


貴族のしいたけが清められたら、今度はパスタの準備だ。

フライパンにオリーブ油とおろしにんにくを入れて超弱火にかけ、にんにくの香りが立つまでじっくり加熱する。ここにお清めしたしいたけを一口サイズにカットして投入。全部入れるにはあまりに大きすぎたので、半分はグリル焼きに回しました。

加熱された原木しいたけが「キュ……キュウッ」「キュウーン……」等のあざとい悲鳴を挙げ始めたら、木べらかなんかでフライパンにぐいぐい押しつけるようにして、表面がちょっとカリッとするくらいまで炒めつつ、缶詰のベビーほたてをジルごとぶちこむ。さらに白ワインも追加して、フライパンの中のオイルとジルが混ざりあい絡み合いめくるめく官能の亜空間を形成するまで加熱する。

フライパンの中に圧倒的官能が爆誕したところで、アルデンテ半歩手前まで茹でたパスタを投入。さらにバターをがつーん!とぶちこむ。全体を手早くあおって馴染ませたら火から下ろしてお皿にホイ。てっぺんに大葉の千切りを載せてできあがり。


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原木しいたけのグリル焼きにはレモンを添えて、紫キャベツの梅酢漬けと共にワンプレート盛り。最近いただいたアドバイスに従ってパスタに高さを出すように盛りつけ……ようとしたのだけれど、二投目くらいで菜箸と自分の限界を自覚したので潔くあきらめた。美人OLならば例え不幸なアクシデントに見舞われたとしても、軽やかに気持ちを切り替えてその時々の最適解をすみやかに導きだすに違いないので、このふるまいはまっこと美人OL道に相応しいと言えよう。


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お供はきりっと冷やした白ワイン。


私の中のうすらぼんやりしたイメージでは、美人OLならば予定外に自分の元へと舞い降りた大自然の恵みは余すことなくジルの一滴に至るまで有効利活用するだろうし(パスタ)、その恵みがたとえ虫さんまみれであろうと果敢に立ち向かう気高い精神を秘めている(清めの儀)と信じている。また素材の味をそのまま生かす調理法を無意識のうちに選び取り(グリル焼き)、それを引き立てる彩りと爽やかさ(レモン)を添えて召し上がるであろう。ということでこんな感じになりました。


ちなみに今夜のパスタは、OLかどうかは分からないけれど全方位どう見ても間違いなく美人さんなあの御方から教わった、あのパスタを意識して作ってみた。



あいにく冷凍ほたてのストックがなかったので、台所に転がっていたベビーほたての缶詰で代用している。炒めている間にベビーほたてが粉々に粉砕されていったので危うく自我が崩壊しかけたけれど、まあよい。食べれば味は同じだ。


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それにしても、なんという堂々たる体躯。さすが野外出身は違うな。


まずはグリル焼きから。焼きたてのアチアチにレモンを絞りかけ、ここにしょうゆもちょっと落とす……つもりだったのだけれど、あんまりにええ匂いをプンップンさせていらっしゃるもんだから、がまんできずにレモン汁だけでかぶりついたところ、目の前がパアア……!と淡い黄色の光に包まれ、たちまち全身が震え始めた。


なにこのこの世のものとは思えぬうまさ!!



肉厚のボディも、そこから惜しげもなく飛び出してくるアチアチのジルも、めちゃくちゃ濃厚なうまみ!芳醇な野生の香りにレモンの爽やかさがこのお上なくマッチしていて、どちゃくそめちゃんこおーいしーい!あの、マジでしょうゆとか塩とか全然要らないの。レモンの酸味だけでこのしいたけがコンテナ一杯はヨユーヨユーで食べられちゃう、そのくらいおいしい!こ……これが野生児のチカラって奴か……ぷりっぷりでモキュモキュの食感も最高すぎる。

一方パスタの方に入れたしいたけも、ベビーほたて&がっつりバター&にんにくといううまみ三銃士に取り囲まれてなお、まったく引けを取らない圧倒的存在感!どちゃくそめちゃんこおーいしーい!いや、引けを取るどころか、この空間を支配している。君臨していらっしゃる。ベビーほたての濃厚な海の香りと塩っけ、バターのこってりさと甘やかさ、にんにくのパンチ力、その全てを完全に統率しながらも、自らが放つ山の芳香と味わいの深さを存分に発揮し、なおかつ寄り添うかのように絶妙な一体感を演出していらっしゃる。


これはもはや貴族の領域を凌駕した立ち振る舞い……

皇帝だ……

皇帝のしいたけとお呼び地面に額をこすりつけて平伏しその御威光をたたえる御神酒を捧げる事案…………ッ!!!!!!


ということでまだ週の半ばだのに、白ワインがぐいぐい進んでしまいました。またねー、きりっと冷やした辛口の白に、グリルもパスタも合うんだわこれが。あーおいしかった!ごちそうさまでした。


なお、皇帝のしいたけの下処理については恋人に教わった。スキップしながら持ち帰ったものの、傘の裏側のひだひだにウゴウゴしている虫さんに気づいて精神に大恐慌をきたし、「原木しいたけもらったんだけど虫ィイイイイ!!!!!!」というLINE(原文ママ)を送り付けた私に、「あさりみたいに塩水につければ勝手に落ちてくるからへーきへーき」「さわれないなら俺やろうか?」という返信をくれた彼には感謝しかない。もしまた皇帝のしいたけにお目見えを許される機会に恵まれたら、ぜひ恋人にも一皿をふるまいたいものだ。


その際は清めの儀式をおまかせしたいと思います。

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