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「ドンゲ」

山の苗木畑で働くようになってから、新しい単語をいくつも覚えた。とは言っても、それには正式名称がちゃんとある。
─雑草の名前である。

この時期、苗木畑や苗床の草取りをしている。
除草剤の種類によって効くもの効かないものがあるらしく、その都度取る雑草取らない雑草を指示される。

例えば「貧乏草(びんぼうぐさ)」。
地域によっては「ハルジオン」や「ヒメジョオン」、「ペンペン草(これも正式名称じゃないけど)」だったりするようだが、この辺では「スズメノカタビラ」のことを言う。写真は……ない。

なぜ「貧乏草」かというと、手入れの行き届かない庭や新しくできない茅葺きの屋根に真っ先に生えるから、だそうだ。
だから色んな種類が「貧乏草」になるのか。
可哀想だから「貧乏ちゃん」と呼んでいる。毎年誰かが「『金持ち草』は無いのか」と言いはじめる。

ここだけの呼び名もある。っていうか「(葉が3枚だから)三枚葉」とか「(根が細くて白い)素麺草」とか、もうここだけでしか通用しない。見たまんま。誰も正式名称なんか使わない。だって見た目で呼ばないと共通認識できないんだもの。
─前置きが長くなった。


北海道の、どの辺りまで通用するのだろうか?

「ドンゲ」

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うちの怪獣が、さりげなく、見ているポーズをとってくれているが、これもよく見る雑草。
─わたしは50年間「イタドリ」と呼んできた。
「ドンゲ」ってナニ?
「ドンゲ」だって、うぷぷ。へんなの。
山の苗木畑で初めて聞いた時「このヒトたちナニ言ってんの?」と思った。

ところが、だ。
今年、娘に「この草なんだっけ?」と聞かれて「ドンゲ!ドンゲ!」と答えてしまった。
なぜ2回も言う?
思いきり笑われた。

問題はそのあとだ。
「正式名称は?」と聞かれ、答えが出なかった。
50年の「イタドリ」が、たった6年の「ドンゲ」に敗北した。…ショックだった。


ようやく思い出したのは次の日。

トシのせいだとは思いたくない。郷に入ったので郷に従ったまでだ。
「ドンゲ」って。そんな強烈な名前つけたヤツ出てこい!…いや、ごめんなさい。


覚えやすい名前つけてくれてありがとう。
もうこのまま「ドンゲ」でいいや。

それにしても……なぜ「ドンゲ」なんだろう。
…うーん。誰か教えて。





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