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ちぐはぐ

それでは、私はこれで失礼を
あとはお若いおふたりで

あの~お綺麗ですね
私は永久脱毛しないんです

あの~ご趣味は
私はおじいちゃん子だったんです

あの~好きな食べ物は
いちごって高いですよね

あの~休みの日なにしているんですか
最近指がぱんぱんで。あっ湿布匂います?

あの~海外にご興味ありますか
音姫って必要だと思います?

あの~動物はお好きですか
東山動物園で知らない人に久しぶりって声かけられたんですよ

あの~好きな男性の好みは
大将です

あの~結婚したらお仕事続けられたいですか
私、熟睡が特技なんです

あの~子どもとかって
学校の先生って完璧じゃないですよね

あっそうだ!ボクばっかり尋ねてすみません
あなたのお話も聞かせてください

ボクは読書が好きでして
どんな本を読まれるのですか

はい、落合陽一さんの本が好きなんです
お料理されます?

はい、実は料理が趣味なんです
お好きな動物は?

ご存じないかも知れませんがウォンバットです
結婚しましょう

インスタントフィクションとは自由な発想と気軽なノリで書かれた文章、読書しない人でも遊び感覚で挑戦する。原稿用紙1枚=400字の中で表現、自分の思う「面白い」を入れるのがルール。

youtubeピース又吉直樹「渦」より

最近、自分の過去のことを振り返って記事にしてみている。

私は単純な質問に答えるのに、とても時間がかかる。
なぜ?なぜ?なぜ?
私は自分がこういう人間だということを深く知ってもらいたいわけじゃない。
でも、ビックリ箱に質問の玉を一つ入れて、出てくる答えがもしかしたら質問者の想定しているものと全然違うものだったりするかもしれないのが怖い。

そんな言葉を聞きたいと思って質問していないのに。
あなたともっと分かり合いたいのに。
相手はきっとそう思っていることだろう。

「綺麗ですね」と言われて嬉しくないはずがない。
まずは「ありがとう」というべきだ。
しかし、私は「ありがとう」を言う前に、たったの数秒で約50年の歴史を振り返り、あー小学校の時にはブスブスって言われてたなぁ、中学校の時なんてあだ名はヒトラーだったよ、高校は5番の女を演じたこともあった。美に全然縁がなかったのに美容クリニックに行き、わき毛の処理に挑戦しようともしたな~
なーんて走馬灯のようにぐるぐるといろんな思い出が駆け巡り、出てきた言葉が「永久脱毛」
そんな会話しかできていないのかもしれない。

相手が質問してくれるということは、私に興味を持っているということだ。
それであれば、私はその相手の言葉に対して私の50年間を語りたくなってしまうのだ。
なぜあなたは私に「綺麗」だと言ったのか?
「綺麗」に見えているのはなぜなのか?
私は本当に綺麗なのか?
もしかして、昔はそうじゃなかったけど、あの出来事や、もしかしたらあの出来事が私を綺麗に見せてくれるようになったんじゃないか?
などとついつい思いを巡らせてしまうのである。

相手を知るのにはちょっとでいい。
私がいいなと思っているものに、1つでもマッチするものがあれば、それはもう感動だ。
だってその答えが出てくるのに、どれだけその人の歴史が詰まっていることだろう。
その答えを導くのに、たくさんの出来事と感情がきっとあるはずだ。

相手を好きになるのは一瞬だ。ほんの一言、二言。それで十分。
それから少しずつ知っていけばいい。理解が深まっていくだけだ。

だが、しかし、自分のこととなると、自信がない。
私はうまく自分を出せているだろうか。
果てしない50年のものがたりを相手は辛抱強く聞いてくれるだろうか。

私は「優しい方ですね」と言われることがたまにある。
私自身は決して「優しい人間」だとは思っていない。
ただ、自分がたくさんのことを経験して、いろんな感情を味わい、いろんな人と接して、いろんな人に喜怒哀楽を教わった。
自分がめちゃくちゃ感情が入り乱れている人間だから、他の人も同じなのかもしれないなーと思って、ふんふんと言うだけだ。
「あなたの気持ちわかります」という言葉は「あなた」が中心ではなく、いつでもそこには「過去の自分」がいて、自分中心に考えた時にたまたま理解ができるというだけなのだ。私はこれを決して「優しさ」だとは思っていない。

私は他人に興味があるのかないのか、それさえもよく分からない。
一人で平気って時もあるし、孤独の渦にぐるぐるにされて辛くて辛くて仕方がない時もある。
そして「そもそも私はなぜ今生きているんだろう」と生きていることにフォーカスし、また思考の旅にでる。

まぁ、そんな日々の繰り返しだなぁ
(悩んでないで仕事しろって?はい、すんませーん)


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