ヲノサトル

作編曲家。音楽家。多摩美術大学教授。 http://www.wonosatoru.com

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作編曲家。音楽家。多摩美術大学教授。 http://www.wonosatoru.com

マガジン

  • 映画の半分はサウンドである

    映画監督のアン・リーは「映画は映像と音の2つでできている」と断言しました。この言葉の通り、サウンド(音楽や音響)が重要な役割を果たす映画を、不定期に紹介していきます。

  • 週刊ヲノサトル

    このマガジンは、ヲノサトルのツイッター(現・X)発言を中心に、画像やリンクや長文、プライベートな写真や公の場に書きにくい事などを追加編集して (可能な限り) 毎週日曜日に発行する、日記のような記録のような雑多な誌面の「雑誌」です。

  • 渋東ジャーナル REBOOT

    音楽家ヲノサトルが、ちょっとした思いつきなどの雑感や、過去のブログからの編集記事を不定期掲載する無料マガジンです。

  • 2023年に劇場で観た映画

    ヲノサトルが2023年に劇場で観た映画の備忘録です。ここ数年、サブスクリプションで観る作品の比率が多くなってきたけど、そこまで挙げたらキリがないので、劇場封切りのタイミングで観に行った作品だけを、観た順に紹介。 2024年1月の段階で、すでにオンラインやDVD、BDなどで公開されている作品も多いようです。ご鑑賞の一助となれば幸いです

  • 恐縮ですが育児中!

    未就学の男児を抱え、シングルファザーとしてワンオペ育児に奮闘していた時期に書いた、育児コラム。

最近の記事

  • 固定された記事

STEP NEVER STOP - SPECIAL

ヲノサトル 2年ぶりのシングル曲『STEP NEVER STOP』が配信サービスにてリリースされました。 そこでスペシャル企画。このnote限定で、楽曲ファイルを先行発売いたします。特典として楽曲フルサイズの公式動画、ゲストに明和電機の社長を迎えたトーク動画もご覧になれます。(トーク動画1の視聴は無料) とにかく新曲をいち早くお聴きになりたい方。制作や創作にまつわるわちゃわちゃした裏話に関心をお持ちの方。そしてnoteやSNSを通じてヲノサトル本人にチラッとでも興味をお持

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    • 映画の半分はサウンドである - 『バックコーラスの歌姫(ディーバ)たち』

      これは、スターの後ろでサポートとして歌い続ける「バックシンガー」という職業を描いた、ドキュメンタリー映画だ。 原題の "20 Feet from Stardom" は、そんな彼らと、ステージ前方でスポットライトを浴びる「スター」を隔てる、20フィート(約6m)という、遠くはないが越える事のできない距離を表している。 往年の大ヒット・ミュージカル『コーラスライン』も、このバックシンガーと同じ立場の「バックダンサー」に選ばれようと夢みて、熾烈なオーディションに臨む若者たちを描

      • 週刊ヲノサトル season5 - vol.3 (2024.4.15-4.20)

        / Mac vs. Win - 起動音対決 / 明和電機の寸劇 /「大学」の存在意義 / 京都のいけず / 教室を爆音空間に変える / 話のプロと音のプロ /『ローマの休日』と英雄神話 / 渋谷地下街のクラフトビール / 京都のいけず2 / 年長者を敬うな / 明和電機事業報告ショー 4月16日 (火) ■ Mac vs. Win - 起動音対決新学期、今日からたのきゃん(多摩美大 上野毛キャンパスの略)の授業が始まった。サンデザ(当方の担当する『サウンドデザイン論』の略

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        • 週刊ヲノサトル season5 - vol.2 (2024.4.7-4.13)

          [目次] / AI / 業務連絡 / 『オッペンハイマー』のサウンド / 詩と歌 / 豚コマ+セロリ+ザーサイ / 明和電機リハーサル / 多摩美に出勤 / センスの哲学 / 映像論 / 酒場の名言 / ギャンブル /チャコールクッキング / 楽器は、出しておけ

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        STEP NEVER STOP - SPECIAL

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        • 映画の半分はサウンドである
          3本
        • 週刊ヲノサトル
          126本
        • 渋東ジャーナル REBOOT
          49本
        • 2023年に劇場で観た映画
          22本
        • 恐縮ですが育児中!
          19本
        • いささかシニカルな息子氏
          9本

        記事

          映画の半分はサウンドである - 『オッペンハイマー』

          ※ この文章には映画の描写や内容に触れる記述が含まれます。ご理解のうえ読み進めてください 物語や内容に関してはすでに多くの人が書いているので、ここではサウンドトラックに関してのみ評しておきたい。 なにしろオーケストラや電子音の音楽、そして様々な音響を駆使した、サウンドデザイン全体の設計が実に緻密だ。 オッペンハイマーが事情聴取で責められ、心が折れそうになった時「ドカドカドカ」と荒々しいリズムが聞こえてくる。画面の中で実際に鳴っているわけではなく、あくまでも彼の心理描写と

          映画の半分はサウンドである - 『オッペンハイマー』

          週刊ヲノサトル season5 - vol.1 (2024.3.30-4.6)

          唐突ですが、2年ぶりに再開してみます。 / 人生はかきむしり / 人間としての浅み / 神楽坂のピアノ / 切れ味のいい包丁 / ゆで時間を見せろ / オッペンハイマー / 【居酒屋さと吉】 とり大根 / コロナ禍と教育 / 蒲田温泉ライヴ / 多摩美の新学期 / 【居酒屋さと吉】 アボカドサラダ 3月30日 (土) ■ 人生はかきむしり同様に、布団の中で「あの時なんであんなバカなこと言っちゃったんだろう!」と思い出してガーッと頭をかきむしる事も多いのだが、思い出しても

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          週刊ヲノサトル season5 - vol.1 (2024.3.30-4.6)

          ボールペンの墓場

          これまで生きてきて、何本のボールペンを消費しただろう。 上着の胸ポケットに差したつもりが見当たらず、全身のポケットを引っくり返したあげく、数日後なぜかカバンの中で見つける。仕事場のデスクに置いておいたつもりが、どこを探しても見つからず不審のまま帰宅すると、なぜか自宅の洗面所にポツンと置かれてある。 そんなふうに、場所はちがっても発見できれば良い方で、ほとんどの場合は行方不明のまま迷宮入りとなる。 元来、物を失くす人間ではあるのだ。 何か一つの事に気をとられると他の事が

          ボールペンの墓場

          映画の半分はサウンドである - 『セッション』

          ※ この文章には映画の内容に触れる記述が含まれます。ご理解のうえ読み進めてください 音楽映画でもジャズ映画でもなく、これは「スポ根マンガ」だ。 この映画の登場人物は全員が最初から最後まで、音楽がもたらす感情の深みとか、表現の芸術的な幅といった「音楽の本質」には、まったく関心がない。ここで追求されるのは、速さ、正確さ、パワーといったフィジカルな面だけ。この映画が描く「演奏」とは要するに、音を使った「競技スポーツ」なのだ。 主人公である音楽大学生の専門が、トランペットやサッ

          映画の半分はサウンドである - 『セッション』

          2023年に観た舞台 - 下半期

          2023年に観た舞台作品の備忘録、【上半期】の続きです。敬称略。コメントは批評ではなく個人の感想です 余人会 『恋が落ちる』作:小西耕一 演出:河西裕介 備え付けの冷蔵庫や台所もあって生活感たっぷりの狭小空間が会場なので、すぐ目の前で男女がわちゃわちゃしているのを覗き見る感覚。コメディタッチで始まるが次第にシリアスな展開に…… としんみりしてたら、クライマックスのどんでん返しにまんまと一杯食わされて後味良し。小西耕一演じる「細かい事をぐちぐち言い続けるめんどくさい男」の"め

          2023年に観た舞台 - 下半期

          2023年に観た舞台 - 上半期

          ヲノサトルが2023年に観た舞台作品の備忘録です。 舞台は「消えモノ」。映画とちがって後から見直すことができない。最近は舞台を収録した動画配信も増えたけど、リアルタイムに劇場空間で観る体験とは全く別のコンテンツ。だから再演がない限り、もういちど観ることはできない。 ただし、いちど面白いと思ったカンパニーや役者や作演出家をおぼえておけば、また面白い作品に会える確率は上がるのではないだろうか。 なにしろ新作舞台の告知って、なんかふわっとした主宰者の散文みたいなものが載ってい

          2023年に観た舞台 - 上半期

          枯れ葉

          泣いた。 年の瀬にふさわしく「人生はたいへんだしうまくいかないし、世の中は戦争とかひどいことだらけだけど、生きてれば良いこともあるよ…」と夢を見せてくれる作品だった。 本作 アキ・カウリスマキ監督のインタビューによれば、ウクライナ戦争をきっかけに引退宣言をひるがえして5年ぶりにメガホンをとったという。じっさい作中には何度も何度もウクライナの戦況を伝えるラジオニュースが流れ、登場人物は常にそれを意識している様子が描かれる。 また、突然クビを言い渡されても何も言えない低学

          ザ・クリエイター/創造者

          ざっくり言えば『アバター』と『マトリックス』と『スターシップ・トゥルーパーズ』とを足して3で割ったような話。ざっくりすぎるか。 圧倒的な武力と頭数を誇る「AI」陣営 vs. それに反抗する少数者=「人間」陣営の戦い ── という本作の図式は、どうしても「ソ連 vs. ウクライナ」や「イスラエル vs. パレスチナ」といった、現在進行形の戦争を連想させる。 のみならず「人間とAIに感情は通じるのか?」「人間とAIのちがいは?」といった哲学的な問いを掲げる作品…… ……だ

          ザ・クリエイター/創造者

          ヒッチコックの映画術

          「サスペンスの神様」アルフレッド・ヒッチコックの作品を様々な角度から分類・分析し、そのテクニックを振り返ろうとするドキュメンタリー。 ヒッチ映画の特徴を「逃避」「欲望」「孤独」「時間」「充実」「高さ」という6つのキーワードに基づいて分析していく。 「映画術」と言うならば、ヒッチファンなら間違いなく読んでいるであろう『映画術 ヒッチコック・トリュフォー』という分厚い本がありまして。 この本でヒッチ先生が聞き手のトリュフォー監督に語っているような様々なテクニックやアイデアの

          ヒッチコックの映画術

          アステロイド・シティ

          ウェス・アンダーソンは、独特な画面センス(構図と色彩)で知られる監督。語り口としては、『グランド・ブダペスト・ホテル』(2014)では「ホテル」、『フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ』では「新聞」のように、物語の「外枠」を設定して、その中に「愛すべきイカれた人々」の群像劇を詰め込むのが得意な監督だ。 本作は、トリッキーにも「『50年代アメリカ西部の町』を舞台にした演劇作品」という二重の物語構造。 『50年代アメリカ西部の町』部分はカラー、「それを演じている演劇」部分は

          アステロイド・シティ

          バービー

          とにかくキラッキラした世界観が映画! インテリアや衣装の細部まで小ネタ満載。画面の細部に至るまで情報量が多すぎて、あちこちに皮肉が効いていて、読みきれなかったのでもう1回観たい。 女子の世界「バービーランド」を乗っ取った男子の国が「ケンダム」("kingdom=王国"のもじり)なのも笑えた。 バービーたちが逆転のため男たちの気を惹いて時間稼ぎする策略として、「photoshopの使い方を訊くと延々としゃべって止まらなくなる」とか「映画"ゴッドファーザー"について質問すると

          インディ・ジョーンズと運命のダイヤル

          このシリーズを1作目からリアルタイムに観てきた世代としては、本作がハリソン・フォード演じるインディの見納めかと思うと感無量。 個人的には、父親(ショーン・コネリー)との掛け合い芝居が最高だった3作目『インディ・ジョーンズ/最後の聖戦』(1989) でスパッと終わりにしていても良かったと思うが。 もう一つ個人的な見どころは、全篇にわたって登場しインディの邪魔をするナチスの科学者(マッツ・ミケルセン)。マッツ様、ホントはすごい優しいイイ人らしいけど、映画では悪役を演じると断然

          インディ・ジョーンズと運命のダイヤル