見出し画像

【コーヒー豆知識💡】焙煎による「味作り」とは

みなさん、こんにちは。今週もウッドベリーコーヒーのnoteをご覧いただきありがとうございます。焙煎事業部の井上です。

焙煎についてを取り上げたコラム。前回は「コーヒーの焙煎度合いと味わい」の関係性についてを書きました。コーヒーの味わいが、焙煎度合いに大きく影響を受けること、また好みのコーヒー探しのヒントにもなることなど紹介させていただきました。今回のコラムでは、そもそも焙煎ってどんなことが起こっているのか?そしてロースターは焙煎を通じてどのように味作りをしているのか? について、実際の仕事でも気を付けている・考えているポイントなどを交えて紹介していけたらと思います。




コーヒーの焙煎とは?

コーヒーの焙煎とは、コーヒーの種子である「生豆」を浅煎りでは200℃前後、深煎りでは250℃前後になるまで熱を加える工程になります。同じ焙煎を用いる食品としてほうじ茶やカカオなどもありますが、ともに150℃前後で仕上がることを考えると、コーヒーの焙煎は非常に温度が高いことが分かると思います。この加熱の結果、青緑色をしたコーヒーの生豆(英語ではGreen Beanと呼ばれます)が茶褐色に色づき、おなじみの香ばしい香りや多様な味わいが作り出されます。

焙煎前の珈琲生豆(Green Bean)。少し青緑がかった色をしています。


焙煎の3つのフェーズ

この焙煎により風味が作られる過程は、大きく3つのフェーズに分けて考えられます。この3つのフェーズはそれぞれ、ドライフェーズ, メイラードフェーズ、 ディベロップメント(発達)フェーズと呼ばれ、各フェーズでは、その呼び方の元になった化学現象がコーヒー豆の内部で生じます。焙煎における理論やメソッドは様々に存在しますが、ウッドベリーコーヒーの焙煎では、この3つのフェーズに基づき、各フェーズでのカロリーの与え方や比率をコントロールすることで風味作りを行っています。

最初のドライフェーズとは、緑色の生豆が褐色に色づく手前までの段階。コーヒーの生豆は8-13%程度の水分を含みますが、焙煎の初期から、これら水分の蒸発やコーヒーの成分(分子)内で脱水反応が起こるとされます。ゆえにドライフェーズでは、これらの反応を調整し、水分をどれくらい残して焙煎を進めるかを決定する段階となります。とりわけ、水分が多く残った状態で焙煎が進むと、クロロゲン酸と呼ばれる分子の加水分解(水を介した分解)が起こりやすくなり、強い渋味の元となるカフェ酸とシャープな酸味のキナ酸が生成され、不快な飲み心地を与えるとされます。最初にして味作りの重要な関門であるドライフェーズでは、焙煎機の余熱や初期の火力、ドライフェーズにかける時間など、多くの変素を調整し適切な水抜きを目指します。

続くメイラードフェーズでは、メイラード反応と呼ばれるアミノ酸とショ糖の反応、およびカラメル化と呼ばれるショ糖同士の反応が起こります。メラノイジンもカラメルも褐色~黒褐色の色素であり、このフェーズからコーヒーが茶色に色づきはじめます。また反応の過程でコーヒーの香り成分や酢酸など有機酸が形成され、実際にコーヒーの香味を担う成分が作られ始めるのもこの段階です。メイラードフェーズにおいて、これらの香味成分が作られる量やバランスを想像しながら、与えるカロリーの強度と時間を組み合わせを調整します。

最後のディベロップメントフェーズとは、文字通り風味の発達段階。コーヒー豆の温度も200℃ほどに達し、これまでの焙煎の過程で作られた分子同士が急速に反応し、さまざまな香味が形成されます。焙煎の度合いにもよりますが、時間にしてわずか1-2分(焙煎全体の10-25%程度)の短いフェーズでありながら、数秒の違いで味わいの印象が大きく変わる非常にデリケートな局面です。実際の焙煎でも、豆の温度、温度の上昇率、ディベロップメントフェーズの経過時間と比率などを複合的に判断しながら、煎り止めのタイミングを調整します。
焙煎とは、この3つのフェーズで生じる化学反応のリレーを繋ぎ、目標とするコーヒーの風味を作り出す工程と言えます。

焙煎中のコーヒーの「香り」も焼き方を調整する判断材料のひとつです。


ロースターの、私たちの味作り

では、ロースターが目標とするコーヒーの味わいとはどのようなものでしょうか?これについては、一つの正解はないように思います。(渋味や汚れ感など、ネガティブ要素を出さない点では共通すると思いますが。。)
明るい酸と軽やかな質感のコーヒーに仕上げるのか、はたまた心地の良い苦味とリッチなボディ感のコーヒーに仕上げるのか。お店ごとのコンセプトや提供したい味、一種の哲学に基づき、各ロースターが趣向を凝らし日々この焙煎に取り組んでいます。
私たちウッドベリーコーヒーも同じく目標とする風味を持っています。それは余韻の「甘さ」をしっかりと感じられるコーヒーを提供することです。コーヒーの三味(酸味・甘味・苦味)において、過度な酸味と苦味の形成は抑えつつ、甘味のボリュームがしっかり取れた味わい。ナチュラルプロセスのコーヒーではベリーやアプリコット、ウォッシュドプロセスのコーヒーではオレンジやストーンフルーツの甘さをしっかりと見つけられるようなコーヒーを買い付け、焙煎し、お届けしていきたいと思っています。ぜひ私たちのコーヒーの「甘さ」をカップから感じていただけると嬉しいです。



さいごに

公式noteをご覧いただきありがとうございました。
SNSでも様々な情報発信をしていますのでぜひチェックしてみてください。

公式Youtubeチャンネルでもコーヒーに関わるさまざまな情報をアップしています

毎月3種類のコーヒーがポストに届く、便利でお得な定期便はこちらから

カフェやレストラン、オフィスコーヒー向けのホールセールも承っています


この記事が参加している募集

仕事について話そう