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「言う」と「書く」の違い:労働契約で見逃せないポイント~口頭と書面契約の落とし穴~

ウッドエイト社会保険労務士事務所/株式会社HCP代表の八木香苗です。
企業を運営するうえで、従業員との契約は欠かせないプロセスとなります。
契約の方法として、口頭での合意も一つの手段ですが、その裏には予期せぬリスクが潜んでいます。

1. 口頭契約のリスク
口頭での契約は素早く、手軽に行うことができるメリットがあります。
しかし、内容を正確に覚えているか、本当に同じ理解を共有しているかは非常に確認が難しいものです。
細かな条件や約束事について互いに主張が異なる可能性があり、双方にとって争いの種になることも。

2. 書面契約の必要性
書面による契約は、全ての条件と期待を明確かつ具体的に定める手段です。
これにより、後々の誤解やトラブルを防ぎます。
また、法的なトラブルが発生した際にも、書面があることで証拠として活用することができます。

3. 法律が要求する書面契約
労働契約においても、労働基準法第15条第1項には、「使用者は、労働契約の締結に際し、労働者に対して賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」と規定されています。
具体的には以下の項目になります。
 (1)労働契約の期間に関する事項
 (2)期間の定めのある労働契約を更新する場合の基準に関する事項
 (3)就業の場所及び従業すべき業務に関する事項
 (4)始業及び終業の時刻、所定労働時間を超える労働の有無、休憩時間、
  休日、休暇並びに労働者を二組以上に分けて就業させる場合における
  就業時点転換に関する事項
 (5)賃金(退職手当及び臨時に支払われる賃金等を除く。)の決定、計算及び
  支払いの方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給に関する事項
 (6)退職に関する事項(解雇の事由を含む。)
 (7)退職手当の定めが適用される労働者の範囲、退職手当の決定、計算及び
  支払いの方法並びに退職手当の支払いの時期に関する事項
 (8)臨時に支払われる賃金(退職手当を除く。)、賞与及びこれらに準ずる
  賃金並びに最低賃金額に関する事項
 (9)労働者に負担させるべき食費、作業用品その他に関する事項
 (10)安全及び衛生に関する事項
 (11)職業訓練に関する事項
 (12)災害補償及び業務外の傷病扶助に関する事項
 (13)表彰及び制裁に関する事項
 (14)休職に関する事項
こうした法的要件をしっかりと守ることで、企業は法的なリスクを低減することが可能となります。

4. 緊急時の対応について
たとえば、急遽プロジェクトが立ち上がり、新しいスタッフを雇いたい・・・
そんな時、すぐに正式な契約を結ぶことが難しい場合もあります。
そうした緊急時においては、初期の合意を口頭やメールで行いつつ、後日しっかりとした書面契約を結ぶ流れを作ることも一つの方法です。

まとめ
すべてを書面にすることは手間がかかりますが、その労力は未来のリスクを大きく減らしてくれる投資となります。
企業のスムーズな運営と従業員との信頼関係を築くためにも、正しい知識と手続きを理解し、実践していきましょう。

お問い合わせはウッドエイト社会保険労務士事務所まで。
https://www.woodeight.com/

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