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2021年の振り返りと展示の告知

2021年12月12日まで北杜市のHOKUTO ART PROGRAM Ed.1にて
私たちのHUMAN AWESOME ERRORの作品が展示されています。

HUMAN AWESOME ERRORとしては、新作の「Super Cell」と「工藝族車」を展示しています。私たちの基本的な考え方として、活動そのものが作品であり、展示は活動渦中のスナップショットのようなものですが、これを節目として、取り分け「工藝族車」をどのように進めてきたか、折々で私が影響を受けたり知見を得たりしした本を紹介しながら、言葉で残していくことにしました。
*「Super Cell」についても膨大に伝えたいことがありますが、別の機会に。

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旧い友人や面識のない人へ構想を伝えながら、少しずつ仲間を集めて作ったチームも、早くも3年目に突入することになり、その間CBXの車検も切れたりしながら、時の流れの速さを実感します。
これだけチームの強い連携と様々な方の協力で作品がアップデートしていくものかと自分でも驚いており、力を発揮している仲間への尊敬も年々強くなるばかりです。

さて当初は夏休みの自由研究のようだったいわゆる「族車」の研究も、これまでの間に様々な経験や、プロジェクトを気にしてくださる方から教わる文献から、一つの民俗学や文化史として重厚なものになってきたので、私なりの仮説と検証を合わせながら残しておこうと考えました。

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作ることのワクワクが先行してしまい、初めは無意識のうちに気づかなかった私の衝動は、現代工芸の意義を問い直す中で、「伝統」という言葉のどこか疑わしく、また異論を許さない高圧的な響きに、体が強張るような緊張を自覚するところから「工藝族車」は始まったように思います。
例えば「数百年続く伝統工芸」という言葉があったとして、工芸という言葉そのものが明治以降に作られた概念なので、このワンフレーズに含まれる矛盾を踏まえて物事を判断しなければいけません。
私のこの性格の悪い挙げ足取りが、さらに慎重になるのが、容易に日本人固有の伝統としてナショナリズムに容易に絡め取られる瞬間なのでした。
まさに去年、今年と、開催も含めて議論された東京オリンピック・パラリンピックが終了するまで、「日本とは」「日本人」とはという議論がそこかしこで噴出し、パンデミックが引き起こした不安も手伝って、ハッとするような決めつけや誤謬も大量に撒き散らされた時期でもありました。その狭間で押し付けられた「日本人観」によって悲痛な叫びを見るたびに胸を痛めたものです。

そんな大会期間中、族車を取り巻く概況は、通常以上に取り締まりが強化し、私に見えている風景からでも、これまで問題なかった旧車會の面々が連日のように検挙され、見る見る活動が縮小していました。
多くに人にとって、「暴走族」と「旧車會」は変わらないように見えるかもしれませんが、界隈ではなんとなしに線引きがあり、簡単に言えば、ノーヘル、無免許、盗難車、暴力など、いわゆる法律の外側が暴走族であり、それに対してコルク半を被って、免許を持って、法とうまく付き合っていくのが旧車會のコンセプトです。ツーリング主催者の中には、ルートを下見したり、休憩場所を去る時にゴミ拾いをしたり、マナーに人一倍気を配っている方も多くいます。

元々は人の家に勝手に入ったり、街の公共物を荒らす迷惑行為だったスケートボードがオリンピックを賑わせていた頃、普段からもグレーゾーンにスタンスを取っていた旧車乗りがどんどんパクられていったのです。
議論の渦巻いた開会式から、ふと思い出してリオ大会のアーカイブを見ていたところ、開会式では様々な人種の構成によって成り立つブラジルという国や、ビルの隙間のストリートで営まれる文化がパルクールとして表現されていました。族車の置かれている状況を見る限り、このアンダーグラウンドカルチャーの存在が東京大会の一環で認められることはまず無いのでしょう。
2021年の関東地方では警察の計画が奏功し、数万人の選手やメディアが来日している間、未だ謎の多い日本のストリートバイクカルチャーと訪日客との接点は概ね封じられました。
それでも「共同危険行為」ではない単独走行で、遠くからGS400のコールが聞こえてくると、はや半世紀の「伝統」を持つ日本らしい文化をリプレゼントする雄叫びのように感じたものです。
パラリンピックが終わり、首都高の通行料も普段通りに戻った9月半ばから、今までの反動、もしくは人気アニメの影響なのか、全国各地で暴走族が検挙され始めました。驚いたのは、多くが若年層のいわゆる「暴走」行為だったことです。
去年の警察白書によれば、減少傾向だった暴走族が嘘のようで、アンダーグラウンドなりの秩序を保ってきた世代にも悩みの種となっていました。

今年は去年に引き続き、全国規模の旧車會イベントが中止になり、合法的に発露する機会も失われ、溜まったストレスは向こう見ずに散発され、モヤモヤとした閉塞感を感じながら、工藝族車は、アップデートが進められていました。
やっていたことは、進行中の細部の強化と、EV化する世界情勢下での文化遺産の抽出です。
次回以降、プロジェクトに影響を受けた著作を紹介しながら、これまでの活動を振り返っていきたいと思います。

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その1へ続く

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